tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

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奈良ものろーぐ(1)吉野杉/奈良日日新聞で毎月1回 連載開始!

2016年04月25日 | 奈良ものろーぐ(奈良日日新聞)
奈良日日新聞に「奈良ものろーぐ」というコーナーをいただいた。昨日(4/22)から毎月1回(第4金曜日)の連載だ。奈良のスグレモノ、流行りもの、ゆかりの人物を紹介する、という趣旨である。初回(4/22)のテーマは「吉野杉」で、見出しは「無節・色合いなど高い評価」。以下、全文を紹介する。
※トップは記事中の写真で、キャプションは「吉野杉をふんだんに使ったイムラのモデルハウス」

小欄では、奈良の「スグレモノ」を紹介する。初回の今回、取り上げるのは「吉野杉」だ。古来、吉野は杉や檜など、良質の木材を産出してきた。「吉野山の数々の寺院の建設はもちろん、一五世紀の山科本願寺や大坂本願寺の造営に吉野の木材を使った記録がある。豊臣秀吉の大坂城や伏見城の築城にも、吉野材を供出させたと伝わる」(田中淳夫著『森と近代日本を動かした男』)。

木材を得るために造林を行ったのは、川上村(奈良県吉野郡)が最初である。明治31年に刊行された土倉庄三郎(どぐら・しょうざぶろう)校閲・森庄一郎著『吉野林業全書』には「吉野郡に於て、人工造林を創始した年度」として「川上郷 三百九十八年前(文亀年間)」という記述があり、すでに室町末期に始まっていたことが分かる。大河ドラマ『真田丸』で人気の真田信繁(幸村)の祖父・幸隆の生まれるまだ少し前の時代である。

吉野林業(吉野式の林業施業)では、1ヘクタールに8,000~1万本植えるという超密植が特徴だ。その後間伐を繰り返し、長伐期とする。そのため吉野材は年輪幅が狭く、完満直通、無節、色目の良さなどが高く評価されてきた。無垢材(天然材)としてはもちろん、集成材の化粧(表面)貼りとしても活用されている。美しい吉野杉の森林は「日本三大人工美林」の一つにも数えられる。

奈良市のイムラは「銘木吉野杉で建てる“本物の”木の家」づくりがモットーの住宅会社だ。モデルハウスを見学すると、コテコテの「和」ではなく「和モダン」の洒落た造りで、和室にも洋室にも寝室にも、吉野杉がふんだんに使われている。屋内には杉のいい香りが漂い、リラックス効果も抜群である。川上村にある川上産吉野材販売促進協同組合(川上さぷり)から、直接木材を仕入れて建てるというビジネスモデルは、昨年度のグッドデザイン賞(日本デザイン振興会主催)を受賞した。

昨年度はほかにも、吉野高校の生徒が考案しレーザーで加工した「文様割箸」、「Re:吉野と暮らす会」(石橋輝一会長)が開発した天板に吉野檜を使う「地域産材で作る自分で組み立てるつくえ」が、グッドデザイン賞を受賞している。吉野杉・檜がトリプル受賞した格好だ。

今年は6月19日(日)に「吉野林業中興の祖」と讃えられる土倉庄三郎翁の没後100年記念事業として、100忌法要と記念式典が土倉翁の出身地である川上村で行われる。翁の功績をしのぶとともに、吉野林業の今後の発展を祈りたい。=毎月第4週連載=


いかがだろう。私は実家が材木屋(卸商)なので、吉野杉・檜には慣れ親しんできた。これはヨソにはない、胸を張って言える奈良県の特産品である。その裏には土倉庄三郎など先人たちの血の滲むような努力があった。原稿が翁の100回忌に間に合って、本当に良かった。

そろそろ次回(5/27付)の準備をしているところである。良い題材をご存じの方がいらっしゃれば、ぜひご助言いただきたいと思う。皆さん、これからもぜひご愛読ください!

コメント (2)
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