エッセイ  - 麗しの磐梯 -

「心豊かな日々」をテーマに、エッセイやスケッチを楽しみ、こころ穏やかに生活したい。

ニイニイゼミ

2007-07-23 | 昆虫
先日、羽化に失敗したニイニイゼミの兄弟を見つけた。やはり羽化したばかりなのか、動きが遅く、近づいても蟹のように横に這う程度だった。近くの桜の木に止めてやった。
 ちいさくてかわいい。わが家の庭では、もう二週間くらい前から鳴いていた。今静かな書斎にいるとニイニイゼミの声が聞こえているような錯覚をする。
 サクラの幹では、保護色のように見え、色がはっきりしない。実際には、背の部分は薄い緑色をしていて、茶色い の字の模様が付いている。定規を当てたら、体長は約26mmほど、羽のまだら模様が灰色で実に地味だった。ヒグラシやアブラゼミはまだのようだ。



松尾芭蕉が山寺の立石寺で詠んだ句「閑さや岩にしみいる蝉の声」のセミは、時期などから本種であるようだ。かつての斎藤茂吉らの大論争(*)は有名だが、その時期に現地に行き、ニイニイゼミを確認したと言う。

しばらく梅雨空が続いたが、明日は晴れて暑くなる予報だ。前に障害を負った兄弟の分まで精一杯鳴いてくれ。精一杯に鳴くセミは切なくも愛おしくも思える。蝉時雨の夏も近い。


(*) 句の蝉は「アブラゼミか、ニイニイゼミか」で、昭和の初め、歌人・斉藤茂吉と文芸評論家・小宮豊隆が論争をした。
 茂吉は、蝉時雨のような力強い鳴き方はアブラゼミであると主張、豊隆は「閑さや」とか「岩にしみ入る」はニイニイゼミの方がふさわしいと。
 茂吉は何度か立石寺を訪ねた。芭蕉が立石寺を訪ねたのは、元禄2年5月下旬、太陽暦では7月の7~8日頃で、その頃はアブラゼミは鳴かないことから、茂吉は負けを認めたのだ。