昭和4年(1929) 大阪の北にある梅田の地に阪急百貨店を開業した。駅と百貨店を直結した始まりだった。そのビルの中に直営の食堂を開業した。昭和の恐慌で百貨店の中に入って見るだけの客も多かった。その様な客の楽しみは食堂でソ-ライスと言う洋食を食べることが爆発的人気だった。ソ-ライスとは5銭で山盛りのご飯と福神漬が出て、これにソ-スをかけ放題にして食べるものだった。大阪人の言葉の略し方でこれをソ-ライスと呼んだ。タクワンでなく、福神漬だったということは福神漬が缶詰入りで始まったため、高価というイメ-ジがあって、百貨店で商品を見るだけの客も食堂でソ-ライスを食しさらに福神漬を追加し満足した。
阪急社長の小林一三は、逆にこれを歓迎する姿勢を打ち出し、「ライスだけのお客様を歓迎します」
という貼り紙まで出させた。小林は「確かに彼らは今は貧乏だ。しかしやがて結婚して子どもを産む。そのときここで楽しく食事をしたことを思い出し、家族を連れてまた来てくれるだろう」と言って諭したという。
百貨店は将来の夢を見るところだった。