透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

奈良井宿の徳利屋

2006-07-08 | A あれこれ


徳利屋の吹き抜け空間 0607  

 中山道六十七宿、奈良井宿はそのうちの一つ。この宿場の旅籠だった徳利屋を見学してきた。

この建物の見所である吹き抜けは、3間×4間半、27畳の大きさ。なかなか大きな空間だ。屋根面2箇所に設けられた天窓から入る光で室内は十分明るい。この吹き抜け空間をコの字型に二層の部屋が囲んでいる。

写真に写っている棟の直下の壁の中央(正確にはこの部屋の右側の壁から2間目のところ)に棟持ち柱が立っている。この柱に大きな丸太梁がぶつかっているのが写真でも分かる。この吹き抜けには2ヶ所階段がつけられているが、どちらも梁から下げられた2本の吊束によって支えられている。この階段、なかなかいい!

梁の上から立ち上げられた8本の小屋束が1間ピッチの母屋を支えている。束を繋ぐ数段の貫が空間に変化を与えている。ダイナミックな空間構成だ。ここを宿にしたかつての旅人達も、この空間に魅了されたに違いない。

現在は手打ち蕎麦などを提供する食堂になっている。名物だという五平餅を食べながら、私は上ばかり見ていた。


 


共生の思想

2006-07-08 | A 読書日記

 国立新美術館が完成した。一般公開は来年になるらしい。設計は黒川紀章と日本設計の共同。

以前、乃木坂のギャラリー間に行くつもりが、地下鉄の出口を間違えてこの美術館の近くに出てしまったことがあった。そのとき工事中だった美術館が完成したのだ。外観上の特徴はなんと言っても大波のようにうねるカーテンウォール。延床面積が約48,000m2 と規模の大きい国立新美術館。

黒川紀章、以前ここに書いたが、氏の著書『情報列島日本の将来』(1972年発行)を高校生の時に読んで感銘を受けた。 今ではごく普通に使われている「共生」は40年以上も前に氏が提唱した考え方、思想だ。この東洋的な世界観、哲学に根差す(と私は思うのだが)共生の思想は海外にも広く紹介されているようだ。

先の著書の「二元論からの脱出」という章にもこんな記述がある。**これからの社会がもっている重要な問題点は、いままでまったく相反すると考えられていた、科学、技術という一つのシステム、系と精神、人間性あるいは宗教といった形で呼ばれてきた人間自身の生命の系と、その二つを、別々のまったく独自の系と考えないで、一つの系と考え直してみたらどうか、と大きな反省になるわけだ。**

氏はここで技術のシステムと生命のシステムの統合、共生を唱えている。 このくらいで引用は止めておくが、ここ以外のところにも共生の思想が綴られている。二項対立的思考ではなくて二項共生的思考。氏はこの思想を建築や都市の計画で具現化してきた。

この美術館のHPでも黒川紀章は**周囲の森と共生する建築である**とコンセプトを紹介している。来春、オープンしたら見学に行こう。


 


なぜ、美しいと思うのだろう

2006-07-08 | B 繰り返しの美学

路上観察 ねこがいっぱい(0606) 

■ ヨーロッパ、例えばイタリアの古いまち。まち全体の俯瞰。美しい、と思う。赤茶色の瓦でまちが覆い尽くされている。建物の形はそれぞれ異なるのだが、どの屋根も同じだ。

ラベンダーの大地や一面の菜の花。やはり美しい。 なぜ、美しいと思うのだろう・・・。「何」が美しいのだろう・・・。分析的に捉えることは難しい。どうやら「繰り返しの美学」と無関係ではなさそうだ。これまで注目してきた「繰り返しの美学」は一方向への直線的な繰り返しだったが、今回の対象は平面的な繰り返しと捉えることが出来そうだ。

ものの形や色などが平面的に繰り返されても、美しいと知覚することを経験的に知っている。 先日出かけた鎌倉で見かけたねこ達。店先にいっぱい並んでいた。この写真はそのごく一部。見かけたとき、美しい!と思った。それは、見渡すかぎりの花畑の美やヨーロッパの古いまちの俯瞰の美と同根だ、と思う。