中島敦の『山月記』
わずか16頁(新潮文庫)の短編。
小説は長短ではない、そう人生と同じように。
この小説は高校の教科書に採用されることが多いらしい。
正直に書く、数年前までこの小説を知らなかった。
最近再読した。人によっていろいろな読み方が出来そうだ。
**獣どもは己の声を聞いて、唯、懼(おそ)れ、ひれ伏すばかり。山も樹も 月も露も、一匹の虎が怒り狂って、哮(たけ)っているとしか考えない。天に踊り地に伏して嘆いても、誰一人己の気持ちを分ってくれる者はない。
ちょうど、人間だった頃、己の傷つき易い内心を誰も理解してくれなかったように。**
ラスト、**虎は、既に白く光を失った月を仰いで、二声三声咆哮したかと思うと、又、元の叢に躍り入って、再びその姿を見なかった。**
なんとも孤独だ。わたしの指向がそう読ませるのかもしれない。
この小説を読むと内省的になる。やはり晩秋の夜更けに読むのに相応しい
小説だ。