33年の時を経て刊行された
小松左京の『SF魂』新潮新書が書店に平積みにされていた。帯には**私が日本を沈没させました。**とある。勿論、現在公開中の映画「日本沈没」を意識したコピーだろう。早速、一読。日本沈没の第二部についてこんな記述があった。
**結局それからどんどん忙しくなっていって、第二部はそのままになってしまった。(中略)全部自分でやる必要もないかなと思い始めたところだ。(中略)チームとして第二部の構想を練り上げ、執筆も任せる、というプロジェクト方式で完成させようと思い始めた。(後略)**
小松氏のこの柔軟な考え方によって「第二部」が完成、先日刊行されたという。
小松氏が「日本沈没」で書きたかったことは「国土なき後の日本人」のことだ。国土を失って日本人というアイデンティティはどうなるのか・・・。
そもそも国家とはなにか、民族とはなにか、日本人とはなにか。
日本を沈めてしまうという卓越した着想の小説。
第一部は前段で終っている。
『日本沈没 第二部』読みたいと思う。
○ブックレビュー(0607)
以前読書記録をつける代わりに読了本を書棚に並べて写真に撮っておくことをしばらくやっていたことがありました。
まだデジカメではありませんでしたから、プリントしてダイアリーの余白に貼り付けていました。それを復活しました。
ブログに記した本をパソコンの脇に積み上げておいて20冊になったら、写真を撮って載せておきます。いつまで続くか分かりませんが・・・。
建築家の篠原一男さんが亡くなった。享年81歳。
篠原さんといえば私はふたつの住宅作品を思い出す。
「から傘の家」と「白の家」。どちらも1960年代初期の作品、雑誌で写真と図面を見ただけだが美しい作品だった。
から傘の家
『新建築詳細図集―住宅編―』 新建築社によると 7,440×7,440(7.4m角)の正方形のプラン、方形の屋根。 「から傘」のように垂木が屋根の頂部から四方の軒桁に放射状に架けられている。全体で立体的な合掌梁の効果を発揮しているのであろう。普通なら垂木を支える母屋を渡し、小屋束を立てるところだがこの構造にはそれらが無い。シンプルで美しい構成だ。
白の家
10,000×10,000(10m角)と、から傘の家より一回り大きい正方形。
広間とコンパクトな水まわり、あとは上下に重なる寝室だけのシンプルなプラン。広間の天井は約3,700と高い。 床はフローリング、壁と天井は白く塗られている。平面の中心に棟まで丸太柱が立てられていて、シンプルな空間を引き締めている。
共に日本の伝統的な民家のような雰囲気を保ちつつ、モダンな空間に仕上げている。篠原さんは住宅を芸術の対象と見ていたようだ。美しい空間を創出するために心血を注いだ方だった、と思う。
松本・島立の「日本浮世絵博物館」も篠原さんの作品。
ご冥福をお祈りします。