透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「近代日本一五〇年」

2018-03-04 | A 読書日記


『近代日本一五〇年』山本義隆/岩波新書 

 帯の文字は上半分しか写っていないが、「黒船から福島まで」。弥生3月はこの本からスタート。

ダイコンの切り方には輪切り・いちょう切り・短冊切り・細切りなど何種類もある。ダイコンには料理にふさわしい切り方があるように、日本の近代史にも見せたい断面というか相(そう)に相応しい切り方がある。本書の内容は「科学技術総力戦体制の破綻」というサブタイトルが示している。

**「殖産興業・富国強兵」に始まり「総力戦体制による高度国防国家の建設」をへて「経済成長・国際競争」と語られてきた物語、すなわち大国主義ナショナリズムと結合した科学技術の進歩にもとづく生産力の増強と経済成長の追求という、これまでの近代日本一五〇年の歩みから最終的に決別すべき時がきたのである。つまるところ経済成長を持続しなければならないという命題そのものが問われているのである。**(290頁)

読む前からあとがきを引用するのも気が引けるが、本書はこのような認識から論じられている。「経済成長を持続しなければならないという命題」そのものに対する疑問に基づいて書かれたこの論考を今読む意義は大きいだろう・・・。


 


ブックレビュー 1802

2018-03-04 | A ブックレビュー



 本を読まない生活なんて考えられない。2月に読んだ本は5冊。

『古代史講義 邪馬台国から平安時代まで』佐藤 信/ちくま新書
『やりなおし高校日本史』野澤道/ちくま新書

いつもなんでも読んでやれ、と思ってはいるが、書店で本を探すときにはどうしても興味のあるテーマを扱ったものにしか手にしない。
日本史に疎いことを自覚しているから、もう何年も前から、読んでいる。通史として古代から現代までまんべんなく読むことはしない。関心のある古代史や近現代史についてはこれからも読みたい。

『松本清張の「遺言」 「昭和史発掘」「神々の乱心」を読み解く』原 武史-文春文庫

松本清張の長編「神々の乱心」は未読。戦前の宮中で実際にあった動きを踏まえて描いた作品、とのこと。戦前にこのような(ってどのような? このことについては書かないでおきたい)動きが実際にあったことを知り、驚いた。
**『昭和史発掘』で十分解明できなかった天皇制の問題を、誰もが思いつく天皇の側からではなく、皇后(皇太后)や女官の側から迫ろうとしたところに、『神々の乱心』の斬新さがありました。**(11頁)

『空海に学ぶ仏教入門』吉村 均/ちくま新書

天才・空海には関心があるが、仏教そのもに関心があるわけではない。空海の十住心(じゅうじゅうしん)は仏教の様々な教えを十の心のあり方に対応するものとして、その総体を体系的に示したもの。この十住心を読み解き、解説することを通じて仏教の全体像を示すという試み、と括ってはみたが、私には難しく、理解の及ぶ内容ではなかった。

『脳の誕生 発生・発達・進化の謎を解く』大隈典子/ちくま新書

著者が「はじめに」でこの本の内容を簡潔に紹介している。その部分を引用しする。

**第Ⅰ部は、たった1個の細胞である受精卵からどのように神経組織が作られ、脳の枠組みが出来上がるか、神経機能の担い手であるニューロンがどのようにして作られるかについて扱います(「発生」ステージ)。第Ⅱ部は、さらにニューロンがどのように突起を伸ばし、つなぎ合わされて神経回路が作られて大人の脳になっていくか、その際、ニューロン以外の脳の細胞がどのように関わるかについて紹介します(「発達」ステージ)。さらに第Ⅲ部では、長い進化の過程においてどのように神経組織が変わってきたか、ヒトの脳へ至る道筋について語ります(「進化」ステージ)。

ヒトの脳の精緻なメカニズムはとにかく凄い! 


 


喪失

2018-03-04 | A あれこれ

 毎週金曜日は残業をしないで松本市梓川のカフェ バロに行き、仕事モードを解く。いつもカウンターの端の席に座り、顔なじみの常連客・カウンター内のふたりと楽しいひと時を過ごす。私にとってバロは週末のくつろぎの場、サード・プレイス。

そのバロが今月18日(日曜日)の営業を最後に閉店するという・・・。

森昌子が歌った「中学三年生」の歌詞を引く。今の心境に合うこの詞は阿久 悠の作品。

別れの季節の悲しみを生まれてはじめて知りました
明日からやさしいあの声もとってもすてきなあの顔も
逢えないなんて思えないそこまで春が来てるのに

表現力の乏しい私、柏原芳恵が歌った「春なのに」からも引く。作詞は中島みゆき。

春なのにお別れですか
春なのに涙がこぼれます

そしてこの歌も。ザ・フォーク・クルセダーズ「悲しくてやりきれない」、作詞はサトウハチロウ。

悲しくて 悲しくて
とてもやりきれない
この限りない むなしさの
救いはないだろか

バロ ロス、この喪失感に有効な手当てはあるかな・・・。


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