『近代日本一五〇年』山本義隆/岩波新書
■ 帯の文字は上半分しか写っていないが、「黒船から福島まで」。弥生3月はこの本からスタート。
ダイコンの切り方には輪切り・いちょう切り・短冊切り・細切りなど何種類もある。ダイコンには料理にふさわしい切り方があるように、日本の近代史にも見せたい断面というか相(そう)に相応しい切り方がある。本書の内容は「科学技術総力戦体制の破綻」というサブタイトルが示している。
**「殖産興業・富国強兵」に始まり「総力戦体制による高度国防国家の建設」をへて「経済成長・国際競争」と語られてきた物語、すなわち大国主義ナショナリズムと結合した科学技術の進歩にもとづく生産力の増強と経済成長の追求という、これまでの近代日本一五〇年の歩みから最終的に決別すべき時がきたのである。つまるところ経済成長を持続しなければならないという命題そのものが問われているのである。**(290頁)
読む前からあとがきを引用するのも気が引けるが、本書はこのような認識から論じられている。「経済成長を持続しなければならないという命題」そのものに対する疑問に基づいて書かれたこの論考を今読む意義は大きいだろう・・・。