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■ 図書館から借りてきた本を昨日(21日)の午後から読み始め、今日の午前中に読み終えた。敢えて書名も作家名も書かない。この作家の名前は以前から知っていたが作品を読むのは初めてだった。
そもそもこの小説のテーマが何なのか、それさえよく分からなかった。**(前略)結局のところ我々が抱え持つ絶対的な孤独は、どんな相手、どんな出来事、どんな救いによっても決して癒されることはないのだろうという気もするのだった。**(175頁)こんな件を引くまでもなく、「孤独」がテーマだと書けば、違うという指摘はたぶん受けないだろう。読了後のもやっと感はこの本のカバーのようだ(私の撮った写真がピンボケなのではない)。
主人公はじめ登場人物の境遇、ドロドロとした男と女の関係、彼らがすること、この小説が描く全く馴染めない世界に戸惑った。このことに関して本文中に要領よくまとめられている箇所があるので少し長くなるが引用する。
**三十八年前に小学二年生の少女がここで車に撥ねられたことも、その少女が成長し、南の海で死んでしまっただことも、少女を撥ねた車の持ち主が徳本産業の創業者だったことも、その妻が、夫の死後、ここを訪れて少女やその兄の面倒を見るようになったことも、さらにはその兄がその未亡人と関係を結び、挙句、妹に怪我を負わせた男と未亡人との間に生まれた一人娘と結婚したことも、その一人娘が不実を働き、実母の愛人だった夫を奈落の底に突き落としたことも、(後略)**(204頁)
主人公が結婚した相手の実母と婚前深い関係だったというだけで、なんだかなぁって思う。結婚後に今度は奥さんの不倫が明らかになる。で、妊娠、出産という驚きの設定、他にもあるが省略する。物語の展開に戸惑いながらも最後まで読んだ。
「源氏物語」だって同じでしょ、という声もありそうだが、平安の貴族社会と現代社会とでは規範が違うし、「源氏物語」には1,000年という厚い時のフィルターがかかっているから読む者の構えが違う。
物語のラストもなんだかよく分からなかった。結局、恋愛物語なのかなと終盤で思ったが、どうやら違うようだ。物語の流れからして、社員500人という規模の会社社長の座から退いた主人公は、物語のはじめに登場した若い女性と一緒になって自分の母親が営んでいた食堂を復活させ、切り盛りするのかもしれない。そうなれば恋愛小説、としてもよいのかも。
原田マハの『風神雷神』を借りようかとも思ったが、読了後に手元に残しておきたいので文庫本を買い求めて読むことにして、別の作家の作品を探した。川上弘美の作品は何年か前までかなり読んだが、現在東北の街に暮らすYさんにあげてしまった。久しぶりに読んでみようかと思って、書架から読んでいない小説を2,3冊取り出してパラパラページを捲ったがやめた。
で、読んだのはあれこれ迷って借りた長編小説だった。まあ、こんなこともあるだろう・・・。
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さて、今夜は33会の忘年会。集まるのは正月明けに旅行に行くメンバーだ。気の置けない仲間と飲んで語るのは楽しい。
※ 小説との相性は人それぞれでしょう。この小説をおもしろいと思う読者も決して少なくないと思います。言うまでもないことですが上記の感想はあくまでも個人的なものです。