透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

火の見櫓 新聞掲載記録

2023-12-27 | A あれこれ

 12月24日付 中日新聞に火の見櫓に関する記事がかなり紙面を割いて掲載された。何日か前、記者の取材を受けていた。新聞掲載の記録をリストにしたが、火の見櫓に関する記事は11回目。他にマンホールや仕事についても取材を受けて記事になっているが、それらは省略している。

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取材を受けると、私の発言を記者がどう捉え、それをどう記事に書くのか、またどんな見出しにするのかなど興味がわく。今回の記事の見出しはリストに示した通り。

記事は**平林さんは「火の見櫓はその地域の歴史の生き証人。文化財として代表的なものだけでも保存することを考えて欲しい」と願っているよ。**と結ばれている。

防災行政無線が整備された現在、火の見櫓は見出しの通り役目を終えている。見出しは無用の長物の後に?を付けている(写真)。本当に無用の長物なんだろうかと思う私の気持ちを汲んでいただいたとも思うし、おそらくそう思っているであろう一般読者の関心を惹くための?でもあると思う。記事の結びは私の気持ちをストレートに表現していただいている。取材していただいた記者に感謝したい。

① 2012年  9月18日 タウン情報(現MGプレス):魅せられた2人の建築士が紹介  火の見やぐら
② 2014年  4月18日 信濃毎日新聞:われら「火の見ヤグラー」
③ 2019年  5月26日 中日新聞:奥深い魅力のとりこに 県内外の火の見やぐら巡り ブログで紹介
④ 2019年10月21日 MGプレス:「火の見ヤグラー」魅力まとめて本に
⑤ 2019年11月 * 旬 Syun! :魅せられた“火の見ヤグラー” の本刊行      (* 月1回発行)
⑥ 2019年11月16日 市民タイムス :火の見櫓の魅力1冊に
⑦ 2020年  8月13日 市民タイムス:スケッチ「火の見櫓のある風景」(市民の広場 私の作品)
⑧ 2020年  8月23日 中日新聞:合理性追求 構造美しく 
⑨ 2022年  4月21日 日本経済新聞:火の見櫓  孤高の姿撮る(文化面)
⑩ 2022年  8月10日 たつの新聞:地域の「火の見」の魅力学ぶ
⑪ 2023年12月24日 中日新聞:しなのQ&A 火の見櫓 役目終え無用の長物? 地域史の生き証人 保存、活用の事例も


 


「はぐれんぼう」を読む

2023-12-27 | A 読書日記

■  図書館で北 杜夫の『巴里茫々』と一緒に借りてきていた青山七恵の『はぐれんぼう』を読んだ。青山七恵の小説を読むのは芥川賞受賞作の『ひとり日和』(河出書房新社)を2007年3月に読んで以来16年ぶりだ(過去ログ)。『ひとり日和』は芥川賞の選考会で石原慎太郎と村上 龍がそろって褒めたという(『芥川賞の謎を解く』鵜飼哲夫(文春新書))。

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『はぐれんぼう』青山七恵(講談社2022年)

『はぐれんぼう』というひらがな表記の書名、それから見返しに貼られている帯の**誰もが生き難さを抱えたこの世界の片隅にまるで光が溢れでるように紡がれた言葉たち。不可思議で切なく瑞々しい救済と癒しの物語。**という紹介文から心温まるハートフルな物語なのかな、と思って借りた。そうならばこの時季に読むのにふさわしい作品だ。だが、違っていた。これはホラーといってもいい作品だった。そう、ちょっとSF的な雰囲気のホラー。

主人公はクリーニング店でパートで働く優子。書名の「はぐれんぼう」とは持ち主が受け取りに来ない預かりものの衣類のこと。一か月以上経っても持ち主が現れない「はぐれんぼう」は箱詰めにされて倉庫に送られる。優子はクリーニング工場も倉庫もどこにあるのか、はっきりした所在地は知らない。

ある日、優子は箱詰めのはぐれんぼちゃんを自宅に持ち帰る。翌朝、優子が目覚めると持ち帰ったはぐれちゃんのブラウスやジャケット、スラックス、スカート、マフラー、ネクタイを身に着けていた・・・。 何これ、カフカ?

この日勤めを休んだ優子はそのままの格好で外に出て歩き始める。見慣れない住宅街を歩いて行くと、「諸」という表札の家の前に出た。クリーニング店で目にしたことがある一文字「諸」。優子は考える。**このネクタイが家に帰ろうとして、クリーニング屋の体を使ってここまで歩いて来たのではないか。**(39頁)そこはやはりネクタイの持ち主の家だったが、受け取りを拒否される。スカート、マフラー。他の家でも同様の対応だった。心温まるハートフルな物語ではなかった・・・。

この小説は「出発」と「倉庫」の二つの章でできているが、「出発」では優子と同じチェーン店のクリーニング店で働いていて、同じような経験をした人が一緒に「倉庫」を探し求めて歩いていき、「倉庫」に着くまでが描かれる。

「倉庫」に着いた優子たちが大きな倉庫の内に入っていくと、そこはスーパー銭湯のようなところだった。天国かと思わせるようなところで、何人かの人たちが自分に合った仕事をしながら自分のペースで暮らしていた。

読み進むと状況が一変する。天国から地獄へ。そして物語はホラーな展開に。

**(前略)床下からゴオオオと低い音が鳴り響く。わたしは反射的にアンヌさんを抱きしめてその場にしゃがみこんだ。次の瞬間、床ぜんたいが奥に向かってゆっくり傾斜しはじめて、わたしたちは床に散らばる服と共に、ずるずる下の方に滑りはじめた。**(313頁)

ここでは運び込まれた「はぐれんぼう」を大きな焼却炉で燃やして風呂の熱源や電源にしていて、はぐれんぼうを置いた部屋の床を傾斜させて焼却炉に落とし込んでいたのだ。落とし込んでいたのは衣類だけではなかった・・・。ひぇ~、ホラー。

ラストを書いてしまっていいのかどうか、「倉庫」から外に出てきた人たちは**煙突は先の方からひび割れていき、根本まで達した次の瞬間、屋根もろとも轟音を立てて爆発した。**(342頁)ところを見る。この先は省略する。

このシュールな作品で作者は一体何を描きたかったんだろう・・・。「はぐれんぼう」は何かのメタファーなのか? そうだとすればそれは何? 読み終えてあれこれ考える。忘れてしまいたい、でも完全には忘れたくないこと? そうだとすればそれを焼かれてしまうことってどうなんだろう。完全なる記憶喪失・・・。このことってどんな意味を持つ? ん~、分からない。

この作家の作品を何作か読めば、それらに共通するメッセージが分かるかもしれない。もう1作くらい読んでみてもいいがその機会があるかどうか。