■ 『アウトブレイク 感染』ロビン・クック(ハヤカワ文庫1988)は390ページもある長編だが、再読を終えた。海外の長編を読むことはもう無理だろうと前から思っていた。登場人物の名前すらきちんと覚えられないのだから・・・。だが、この作品を読み終えて「なんだ、まだ海外の長編読めるじゃないか」と思った。もっとも、この作品の登場人物は少ないが。 この作品の作者、ロビン・クックはアメリカの医師。
エボラ出血熱という過去にアフリカで流行した致死率が極めて高い伝染病のウイルスを意図的に感染させるという医学界の凶悪な組織的犯罪の顛末を描いた作品。サスペンス小説だから、ストーリーや結末は書かないでおく。
例によって、本文を引用する。
**(前略)流行が故意に引き起こされたのではないかという考えをどうしても棄てきれないでいた。また、どうでなくとも、どこかの医者が研究をしていてコントロールできなくなったのかもしれない、とも思う。**(190頁)
**「(前略)エボラの脅威を控え目に思わせるのはかえって逆効果だ、と考えます。エボラの流行はこれで終わりだ、と信じる科学的な根拠は何もありません。もう一度起こらないうちに原因を探りたい、とわたしはそれに最善を尽くしているつもりです」(196頁)
これは事件の真相を追う、主人公のマリッサ(嫉病管理センターのウイルス学部の女性医師)の台詞。
**恐ろしいウイルスの取扱いにしか使われない精巧な設備を備えた研究所で、超保守派の医師の集団がいったい何を企んでいるのだろう?**(277頁)
**震える手で注射銃をこちらへ向け、その丸い先端をよく見て、この中に入っているのはエボラ・ウイルスだと察し、(後略)**(285頁)
読みながら恐怖を感じ、先が気になって読み進んだ長編。
新型コロナウイルスの感染拡大が続く今、カミュの『ペスト』を読むのもいいけれど、この作品もいいだろう。