■「建築トランプ」今回は原広司さん。
充分シャッフルして、エイ!と引いたら原広司さんだった。建築家原広司さんの代表作を挙げるとすると大阪の梅田スカイビル、京都駅そして札幌ドーム。いずれもビッグプロジェクトだ。これらの建築について書いてもいいが、今回はこの本を取り上げる。
『揺れ動く 燃えあがる緑の木 第二部』大江健三郎/新潮社。この本は大江さんがノーベル文学賞を受賞した直後に出版されて、よく売れたのではないかと思う。第三部の帯には**ノーベル賞作家の最後の小説、完結!**とある。
よく知られているように原さんと大江さんとは友人関係。大江さんの出身中学校を原さんが設計している。建築雑誌に当然掲載されたが残念ながら手元にその雑誌はない。
大江さんはこの小説に荒先生として原さんをモデルにした建築家を登場させている。「あら」と「はら」、よく似ている。
**荒さんは、その独創的な構想を、粘り強くあらゆる細部にわたって実現する建築家だった。** 小説から引用したこの文章は原さんの評価そのものだ。
こんなくだりもある**教会のために建設しようとしている礼拝堂は、直径十六メートルの真円が基本形です。** これは原さんが設計した大江さんの出身中学校の音楽室ではないか。直径が同じかどうか資料があれば調べてみたい。
円形は音響的には好ましくない。そこで**荒さんは、かれの建築事務所の費用で、生産技術研究所の同僚の専門家に実験を依頼されました。二十分の一の縮尺模型を作って、実験が行なわれたわけです。** この先もまだ続く。こうなれば、この中学校の設計の解説文だ。
作家はこのように実話を小説のなかに取り込む。それが時に問題になったりすることもあるが、この小説を読んだであろう原さんはどんな感想だったんだろう・・・。
カードの原さんが手に持っているのは梅田スカイビルのエレベーターとエスカレーター。頭に載せているのは確か自邸。名前は調べないと分からない。原さんも磯崎さんと同じ襟の服を着ている。この部分は作品を表現しているのではないのかもしれない。
磯崎さんの場合、一時期盛んに設計したヴォールト屋根ではないかと友人から指摘があったが・・・。
良かったらご覧下さい。
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