透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「末摘花」

2022-04-26 | G 源氏物語

 **こんな荒れ果てたところにこそ、思いがけないほどうつくしい人が住んでいて、恋が生まれるといった話が物語にはよくあるのだし、何か言葉をかけて近づいてみようか。**(192頁)こんな思い込みが光君にはあるようだが、時には落胆することもあるようで・・・。

「末摘花」

紫式部はこの長編にいろんなタイプの女性を登場させる、ということがここまで読んできただけでも分かる。

光君は宮中に仕える大輔命婦から、亡き常陸宮が可愛がって育てた末摘花という娘、いや姫君と表記すべきか、が琴を友として心細く暮らしていることを耳にする。さっそく訪ねる光君。 この積極性!

いくそたび君がしじまにまけぬらむものな言ひそと言はぬ頼みに(201頁)引っ込み思案な姫君、手紙を出しても返事がない。

ある冬の寒い夜、久しぶりに常陸宮邸を訪ねた光君。翌朝早く**「朝の空が美しいから見てごらん。いつまでも心を許してくれないのはつらいよ」**(208頁)と姫君に声をかけ、雪明りの中で初めて顔を見る。

**(前略)その次に気になったのは、その異様な鼻である。真っ先に目につく。普賢菩薩が乗っている像が思い浮かぶ。あきれえるくらい長い鼻で、咲のほうが垂れて赤く色づいているのがなんとも不細工である。(後略)**(209頁)

登場する女性に落胆することもある。

**もしあの姫君が人並みの平凡な容姿ならば、忘れ去ってしまっただろうが、あの異様な姿をはっきり見てしまってからは、かえって哀れに思え、光君は暮らし向きのことにも終始気を配るようになった。**(212頁)

このあたりが光君の優しさだろう。


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4月25日付信濃毎日新聞朝刊の投稿欄に「源氏物語」の原文を半年以上かけて読み終えたという投稿が掲載されていた。まず原文を読んで、難解な語句を注釈で確認し、それでも意味がはっきりしない場合は現代語訳を参照したとのこと。すばらしい! 本当はこういう読み方が良いのだろうが、私には無理。角田源氏の通読で良しとし、できれば他の作家の現代語訳も。


1桐壺 2帚木 3空蝉 4夕顔 5若紫 6末摘花 7紅葉賀 8花宴 9葵 10賢木 
11花散里 12須磨 13明石 14澪標 15蓬生 16関屋 17絵合 18松風 19薄雲 20朝顔
21少女 22玉鬘 23初音 24胡蝶 25蛍 26常夏 27篝火 28野分 29行幸 30藤袴
31真木柱 32梅枝 33藤裏葉 34若菜上 35若菜下 36柏木 37横笛 38鈴虫 39夕霧 40御法
41幻 42匂宮 43紅梅 44竹河 45橋姫 46椎本 47総角 48早蕨 49宿木 50東屋
51浮舟 52蜻蛉 53手習 54夢浮橋



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