透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

目撃者

2011-03-29 | A あれこれ

 作家・小松左京が『日本沈没』を書きはじめたのは1964(昭和39)年、東京オリンピックが開催された年だった。このSF小説は完成までに長い年月を要し、出版されたのは1973(昭和48)年だった。小説はベストセラーになり、映画化もされた。

小松左京はこの小説で何を書きたかったのだろう・・・。小松左京は『日本沈没 第二部』小学館・発行2006年のあとがきに**(戦争で)「国」を失ったかもしれない日本人を、「フィクション」の中でそのような危機にもう一度直面させてみよう、そして、日本人とは何か、日本とはどんな国なのかを、じっくり考えてみよう、という思いで、『日本沈没』を書き始めたのである。**と書いている。

小松左京がフィクションで問うたことが、現実に起こっている。今まさにこの国のありかたが問われているのだ・・・。

トラブルの連鎖で終息に向かう気配のない原発事故。それに対して、専門家といわれる人たちの事実を過小評価しているとしか思えないような楽観的なコメントもあれば、一方では過剰としか思えない市民の反応もある。

寺田虎彦は正しくおそれることはむずかしいという言葉を残している。正しくおそれる・・・。 

正しくおそれるためは知識と冷静な判断力必要だ。 

・クリティカルな状況を一体どのような手順で終息させるのだろう・・・。
・放射性物質の飛散は風の作用が大きい。原発から、同心円状に20km、30km・・・という危険エリアの捉え方は実情に本当に合致しているのだろうか・・・。

今回の原発事故に無関心でいてはならない。