今日は3回目の立ち稽古。
立ち稽古には手に持たずにやろうと意気込んで、、あれだけ台本を読んでいたのに、
いざ始まってみれば、ちょっとした事で芝居の進行が滞った途端に台詞がすっ飛ぶ。
毎年、こんな事の繰り返しです。
それでも、台詞の言い回しや、間の取り方を少しずつ変えて臨んでは演出の顔色を伺う。
今回の役どころは、決して難しい役じゃない。
ただ、僕にとってはとても厄介な芝居を求められて悩んでいます。
今回はとある歴史ある会員制クラブの副理事長役。
理事長の椅子を狙って、偉そうにしている男の役です。
若い衆には威圧的な態度で、恐れられているけれど
いざ娘や、恋人の前では威厳も無くなってしまうほど
とにかく、尻に敷かれているような男。
まぁ、ここまでは素でやっても問題ないでしょう。
ところが、偉そうな態度・・・・これが出来ないんです。
座長が稽古での、僕の所作を見て
『君は、偉そうにする事したことないなぁ?』
って、笑いながら言う。
それで、こういう風に動くんだよ・・・・と、お手本を見せてくれた。
確かにその所作は、偉い人や地位の高い人に見える。
そういう事を見せられて、僕は穴が有ったら入りたいほど恥ずかしかった。
と言うのも、僕自身がそう言った偉そうな態度を取ったことが無い。
周りにもそう言った人物が居ない。
最近の社長は『威厳』は見せても作り物。
体に染みついている威厳や、帝王学みたいなものを感じる人が居ない。
そう言う意味では劇団にはごろごろ居るんですよ。
座長は日本最大手ビールメーカーの取締役だったし、
怪物オペラおじさんは三菱倉庫の元社長、
そして去年『新人』として加わった〇さんは元日本銀行発券局長。
この方たちは、とてもじゃないが経歴が凄すぎる。
それに、前から感じていたのだけれど、普段からそのオーラみたいなものを放っている。
いくら胸を張って偉そうに演技しても、所詮は演技。
この御仁たちの自然の雰囲気にはとてもじゃないが敵わない。
一つ違いのM谷さんも、僕と同じようにそのオーラに敗北感を感じているという。
自然に身についている御三方を見るたびに、僕がM谷さんに
『所詮、俺は下僕なのさ・・・・』
と言って、ごまかしているんだけど・・・・
何とも言えない悔しさですねぇ。
そんな御仁たちと、対等にお付き合いできると言うのがせめてもの慰めです。