映画とライフデザイン

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映画「花束みたいな恋をした」菅田将暉&有村架純

2021-02-03 21:01:43 | 映画(日本 2019年以降主演男性)
映画「花束みたいな恋をした」を映画館で観てきました。


映画館に行き、観る作品を突然別のものにするなんてことは滅多にない。「ヤクザと家族」を観るつもりだったが、暗くギスギスしたのはこの気分にはどうかな?とふと感じてしまう。一連の出演作はつい観てしまう菅田将暉も出ているし、あっさり「花束みたいな恋をした」に変更する。「東京ラブストーリー」の坂元裕二の脚本というのも気になるところだ。

終電に乗り損なったときに知り合った大学生の恋人同士が2015年から2020年までの歩む道のりを映し出す。2人の恋の軌跡はビックリする様なものではない。妙に社会性があったり、アピールする部分が強い訳ではない。普通にありがちな話とも言える。そんなオーソドックスな若者の恋の物語を観るのはたまにはいいものだ。

2015年、明大前駅で京王線の最終電車にギリギリ乗ろうとしていた大学生の麦(菅田将暉)と絹(有村架純)は同じように乗り損なった男女と4人で居酒屋に行ってしまう。話しているうちにお互いの音楽や本の趣味が似ていることに気づく。そのまま帰ろうとしたときに絹が声をかけて、そのまま飲み明かすことになる。これをきっかけに2人は博物館や美術館にデートをするようになり、恋に落ちて行く。就活を一生懸命頑張ったけど、結局2人ともフリーターになってしまう。


麦はスケッチの才能があり、それを活かしてデザインの道を歩もうとしたが報酬が安くてこれでは生活できない。絹はアイスクリーム屋のバイトをしながら、簿記を勉強している。絹は麦のアパートに入り浸りだったが、いっそ一緒に住んだほうがいいじゃないかと同棲をはじめる。やがて、絹は医療事務の職を得た。麦も懸命に就職活動してネット通販関係の営業マンに職を得る。


定時で帰れる仕事と勤めはじめた麦だったが、何かと雑用もあり早く帰れない。約束していたデートも流れることもある。忙しさが募り、恋のはじめのようなときめきもなくなりつつあったのであるが。。。

⒈プロフィール
麦(菅田将暉)は普通の大学生で調布のアパートで一人住まいしている。何でもスケッチしてしまう才能があり、デザインの道に進みたい希望がある。プロカメラマンの事務所にも出入りしている。ガス会社のガスタンクに興味があり、それを映像にしてしまう。Googleストリートビューに写ったと大学でおちゃらけて自慢してまわる。ジャンケンのルールに疑問を感じている。


絹(有村架純)は広告会社に勤める父母と姉と暮らしている。グルメブログで大量のアクセスがあったことが自慢で、ラーメン屋をまわっている。本が好きである。その趣味は麦と偶然一致する。ジャンケンについても同じこと考えている。終電に乗り損なって麦の家に行くと、自分の本棚と同じような本揃いに驚く。気がつくと、同じ白いスニーカーを履いている。


この2人の恋に劇的な物語があるわけではない。殺人や傷害の事件が絡むというわけでもない。第三者が恋の邪魔をする訳でもない。菅田将暉の前作「糸」が盛り沢山な時事題材を用意して焦点が定まらずちょっと凡長な気がした。就活に苦労するなんて話はあれど、アベノミクスが定着した2015年スタートのお話ではドツボにハマる訳ではない。すごく身近で、自分の恋に照らし合わせて何かを感じるというタイプの作品だと思う。恋の抑揚がウソっぽくなくて、そこに親しみを感じる。

同棲して住むのが、調布駅徒歩30分だという多摩川べりの賃貸マンションだ。これはロケハンの勝利だ。よくぞ探してきたという眺望の良い部屋は、それ自体で一つのキャラクターだ。そこで2人は愛を育む。

それもいいけど、最後に向けての横浜の場面も好きだな。ちょっとわざとらしいけど、2人の恋愛当初と同じような別の恋が芽生えつつある2人を登場させる今回の設定は悪くない。でも、この続編があってもおかしくないような気もする。

⒉固有名詞にこだわるセリフ
こういう脚本は男性特有かなと感じる。オタクぽく妙に固有名詞にこだわる。好きな作家の名前が2人から会話で具体的に次から次へと出てくる。あそこにいる2人はカンブリア宮殿の村上龍と小池栄子みたいだとか、菊地成孔の名前も出てきたり、ここまで固有名詞にこだわる映画は最近少ない。坂元裕二は自分の好みを探ったのか、それともオタクの気があるのかなあ?

これって若者が観る映画だと思うけど、映画の宣伝で「東京ラブストーリー」の脚本家作品と言っても、あのTVを放映したのは生まれる前の若者の方が多いかもしれない。


映画の中の映画の手法で、二人が見る映画がアキ・カウリスマキ監督作品であった。きっと誰かが好きなのかな?「希望のかなた」はそんなに好きじゃなくてブログアップしていないんだよな。

⒊2人が知り合うきっかけとなった大物
これには驚いた。終電に乗り遅れた時、同じように乗り遅れた男女とともに飲み屋に入る。そこで、菅田将暉演じる麦が、飲んでいる有名人を見つける。「ここには神がいる」とみんなに同意を求める。他の男女は映画に関わる人だと分かると別の映画の話になる。そこはそれで終わって、お店を出て別れた後に、有村架純演じる絹が押井守の名前を出して、わたしもびっくりしたと麦に声をかける。気がつくと、もう一軒飲みに行っている。これが恋のきっかけだ。

なんと!実際に押井守氏が出てくる。おいおい、つい最近押井守氏の映画本を読んだばかりである。「押井守の映画50年50本」という本は実にためになった。

自分の出身高校の大先輩には山田洋次監督なんて映画界の大物がいるが、ここでいう神の押井守氏は高校の部活の大先輩である。かなり身近だ。押井氏と同じ代の先輩によれば、OBの集まりには来たことないとのこと。有名人が他に2人いるわれわれの部(班)のOB会名簿にはある。

まさに純粋の先輩だけに今日は得した気分だ。恋のキューピットになったとなれば先輩もうれしいだろう。世の中何があるかわからない。
コメント
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