ドキュメンタリー映画「ヴィヴィアン・マイヤーを探して」は2015年公開のアメリカ映画だ。
「ビル・カニンガム&ニューヨーク」と「セバスチャン・サルガド 地球へのラブレター」という2つの写真家を題材にしたドキュメンタリーは映画館で見ていずれもよかった。それなので女性写真家をフューチャーした「ヴィヴィアン・マイヤーを探して」も気になって仕方なかった。上映映画館が少なく、残念ながらスケジュールに合わなかった。結局DVDスル―となってしまったが、なかなか良くできたドキュメンタリーである。
ヴィヴィアン・マイヤーを女性写真家と言ったが、実際には1人の写真好きの独身ベビーシッターにすぎない。生前、彼女は写真として15万枚以上の作品を残しながら、一般に公表していなかった。シカゴ在住の青年ジョンマルーフが彼女のネガをたまたまオークションで得てブログにアップすると、その出来の良さにプロのカメラマンからも賛辞が寄せられる。そこで彼女の半生を追うことが製作者ジョンマルーフのライフワークになったのだ。
(製作者ジョンマルーフの言葉 作品情報より引用)
2007年、地元シカゴの歴史の本を執筆しているときに、その本に掲載する古いシカゴの街並みの写真を 探して、地元のガラクタや中古家具などを扱っているオークション・ハウスに出かけた。そこで、写真のネガでいっぱいの箱をひとつ競り落としたが、それらの写真が本に使われることはなかった。。。「僕には見る目がある。時間があるときにゆっくり見よう」そう思ったのだ。2年後、そのとき買った写真が20世紀最高のストリート・フォトグラフの発掘の始まりとなったのだった。僕はこの素晴らしい写真を撮った人物を探す旅を記録して、映画にすることを決めた。
そのネガは、ヴィヴィアン・マイヤーという女性のものだった。僕は彼女の遺品と大量の奇妙な所有物を手に入れて、彼女のことをもっと詳しく調べ始めた。僕は、マイヤーがどういう人物なのかを解き明かしていく過程を映画にしたいと思ったのだ。彼女の残した証拠物件は僕を、彼女を知る人物から人物へ導いていった。しかし、さらなる事実を発見すればするほど、疑問が湧いてくるのだった。彼女は僕がやっていることをどう思うだろうか? なぜ彼女は自分の写真と私生活を、他人の目に触れないように したのか? 一体全体、どういう女性なのだろう?。。。
すっかり取り憑かれた僕が集めたインタビューと、世界中に散らばった彼女にまつわる奇妙な物語のライブラリーができた。僕たちはおよそ100人程度の、ヴィヴィアン・マイヤーと接触のあった人々を見 つけ出した。映画の中では、彼らの好きなように話してもらった。(一部略)
1.インタビューを通じて半生を追う手法
ミュージシャンのスライ・ストーンの周辺をインタビューをすることにより、彼の実像を追うドキュメンタリー映画「スライストーン」も同じ手法であった。人気の出ていた70年代前半から不可思議な奴と評された彼の実像をインタビューだけで浮き彫りにしようとする。映画の最終展開で彼本人へのインタビューを成功させることで締めに持っていくのである。しかし、ヴィヴィアンはもうすでにあの世の人である。インタビューはできない。それでも彼女は自分の生きてきた軌跡を大量の写真だけでなく、8mmや16mmの動画にも残すと同時にカセットテープに自分の思いを吹き込んだりもしている。それを製作者ジョンマルーフが丹念に整理している。しかも、フランスの人里離れた村に2回行ったことがあることに注目して、自ら取材してしまう。この作業はなかなか凄い。
2.ヴィヴィアン・マイヤーの性格
過去の雇い主のインタビューをきくと、若干変わりもので孤独を愛していたということがうかがわれるようだ。その雇い主自体リッチな人たちが多いが考えが偏り、むしろそっちの方が偏屈なような気もする。
もともと母親と2人で暮らしていて、その他の親戚もいない。独身で子どももいない。過去に男性にいたぶられたことがあるような言動があったと聞くと、孤独を愛するようになる気持ちはわからなくもない。その方が気が楽なんだろう。
隣人の家でペンキを塗る作業があった時に、家主が古新聞をあげてしまいヴィヴィアンが憤慨したことがあったそうだ。私が想像するに、新聞に載っている報道写真をみながら次にこういう構図で写真をとってみようと参考にしていたのであろう。それができなくて雇い主に珍しく反発したなんて話を聞くと、諸外国で活躍する報道写真家のような気分になって2眼レフのシャッターを押す瞬間が一番幸せだったのであろう。
3.監督の手法
雇い主や面倒をみた子どもたちからの評価は悪くはないが、彼女のパフォーマンスに対して酷評をする人もいる。また、ヴィヴィアンが話すフランス語に対して、フランス訛りの英語という人もいれば、それは絶対に違うと言い切る言語学者だった雇い主もいる。そういう両方の評価を対比してどっちが正しいと言い切るわけでない。ヴィヴィアンをクローズアップするわけなので、ジョンマルーフ監督はヴィヴィアン寄りなはずである。それでも強く評価を下すわけでなく客観的にそのインタビューを並列で構成する監督の手法がいい感じだ。
(参考作品)
「ビル・カニンガム&ニューヨーク」と「セバスチャン・サルガド 地球へのラブレター」という2つの写真家を題材にしたドキュメンタリーは映画館で見ていずれもよかった。それなので女性写真家をフューチャーした「ヴィヴィアン・マイヤーを探して」も気になって仕方なかった。上映映画館が少なく、残念ながらスケジュールに合わなかった。結局DVDスル―となってしまったが、なかなか良くできたドキュメンタリーである。
ヴィヴィアン・マイヤーを女性写真家と言ったが、実際には1人の写真好きの独身ベビーシッターにすぎない。生前、彼女は写真として15万枚以上の作品を残しながら、一般に公表していなかった。シカゴ在住の青年ジョンマルーフが彼女のネガをたまたまオークションで得てブログにアップすると、その出来の良さにプロのカメラマンからも賛辞が寄せられる。そこで彼女の半生を追うことが製作者ジョンマルーフのライフワークになったのだ。
(製作者ジョンマルーフの言葉 作品情報より引用)
2007年、地元シカゴの歴史の本を執筆しているときに、その本に掲載する古いシカゴの街並みの写真を 探して、地元のガラクタや中古家具などを扱っているオークション・ハウスに出かけた。そこで、写真のネガでいっぱいの箱をひとつ競り落としたが、それらの写真が本に使われることはなかった。。。「僕には見る目がある。時間があるときにゆっくり見よう」そう思ったのだ。2年後、そのとき買った写真が20世紀最高のストリート・フォトグラフの発掘の始まりとなったのだった。僕はこの素晴らしい写真を撮った人物を探す旅を記録して、映画にすることを決めた。
そのネガは、ヴィヴィアン・マイヤーという女性のものだった。僕は彼女の遺品と大量の奇妙な所有物を手に入れて、彼女のことをもっと詳しく調べ始めた。僕は、マイヤーがどういう人物なのかを解き明かしていく過程を映画にしたいと思ったのだ。彼女の残した証拠物件は僕を、彼女を知る人物から人物へ導いていった。しかし、さらなる事実を発見すればするほど、疑問が湧いてくるのだった。彼女は僕がやっていることをどう思うだろうか? なぜ彼女は自分の写真と私生活を、他人の目に触れないように したのか? 一体全体、どういう女性なのだろう?。。。
すっかり取り憑かれた僕が集めたインタビューと、世界中に散らばった彼女にまつわる奇妙な物語のライブラリーができた。僕たちはおよそ100人程度の、ヴィヴィアン・マイヤーと接触のあった人々を見 つけ出した。映画の中では、彼らの好きなように話してもらった。(一部略)
1.インタビューを通じて半生を追う手法
ミュージシャンのスライ・ストーンの周辺をインタビューをすることにより、彼の実像を追うドキュメンタリー映画「スライストーン」も同じ手法であった。人気の出ていた70年代前半から不可思議な奴と評された彼の実像をインタビューだけで浮き彫りにしようとする。映画の最終展開で彼本人へのインタビューを成功させることで締めに持っていくのである。しかし、ヴィヴィアンはもうすでにあの世の人である。インタビューはできない。それでも彼女は自分の生きてきた軌跡を大量の写真だけでなく、8mmや16mmの動画にも残すと同時にカセットテープに自分の思いを吹き込んだりもしている。それを製作者ジョンマルーフが丹念に整理している。しかも、フランスの人里離れた村に2回行ったことがあることに注目して、自ら取材してしまう。この作業はなかなか凄い。
2.ヴィヴィアン・マイヤーの性格
過去の雇い主のインタビューをきくと、若干変わりもので孤独を愛していたということがうかがわれるようだ。その雇い主自体リッチな人たちが多いが考えが偏り、むしろそっちの方が偏屈なような気もする。
もともと母親と2人で暮らしていて、その他の親戚もいない。独身で子どももいない。過去に男性にいたぶられたことがあるような言動があったと聞くと、孤独を愛するようになる気持ちはわからなくもない。その方が気が楽なんだろう。
隣人の家でペンキを塗る作業があった時に、家主が古新聞をあげてしまいヴィヴィアンが憤慨したことがあったそうだ。私が想像するに、新聞に載っている報道写真をみながら次にこういう構図で写真をとってみようと参考にしていたのであろう。それができなくて雇い主に珍しく反発したなんて話を聞くと、諸外国で活躍する報道写真家のような気分になって2眼レフのシャッターを押す瞬間が一番幸せだったのであろう。
3.監督の手法
雇い主や面倒をみた子どもたちからの評価は悪くはないが、彼女のパフォーマンスに対して酷評をする人もいる。また、ヴィヴィアンが話すフランス語に対して、フランス訛りの英語という人もいれば、それは絶対に違うと言い切る言語学者だった雇い主もいる。そういう両方の評価を対比してどっちが正しいと言い切るわけでない。ヴィヴィアンをクローズアップするわけなので、ジョンマルーフ監督はヴィヴィアン寄りなはずである。それでも強く評価を下すわけでなく客観的にそのインタビューを並列で構成する監督の手法がいい感じだ。
(参考作品)
ビル・カニンガム&ニューヨーク | |
NYタイムスの写真家のドキュメンタリー | |
セバスチャン・サルガド 地球へのラブレター | |
全世界を駆けめくる写真家のドキュメンタリー | |
ヴィヴィアン・マイヤーを探して | |
生前に日の目をみなかった孤独な写真家 | |
Vivian Maier: Street Photographer | |
ヴィヴィアンマイヤーの作品 | |