縁の場所、六国亭がどうなっているんであろうか、野次馬根性むき出しで、自然と多摩丘陵の山頂へ足が進んでしまった。
山と言っても高い平山の住宅地、かなりきつい勾配を登って行くと住宅地を越え、眺めの良い尾根伝いの山道に出る。我が家から大凡4、50分でたどり着ける距離である。
その尾根道を進むと、樹木が濃くなり、舗装も途切れ道幅が狭く車での乗り入れも困難になる。
かっては野猿峠ハイキングコースであった、この尾根道も長沼側に繋がっていたが、道は荒れ、途中で行き止まりになっている。
従って、此処に訪れる人も、犬の散歩で僅かに来る程度で人影も少ない。
その尾根道を尚も進んで行くと途中で、プ~ンと焦げた匂いが立ち込めた火災跡に出る。
丸で最前線の戦場の様で焼き尽くされ、骨組みと僅か壁が残された六国亭の無惨な姿があった。
建屋の外れに駐車してあったセダンタイプの乗用車も、ご覧の通りフレームを残し、内装始めタイヤなど炭の様に真っ黒に燃え尽きていた。
火の気の無い所から燃え広がり、火勢の勢いは家屋と周辺に置かれた可燃物を呑み込むように燃え尽き廃墟にしてしまった。
かっての六国亭は窓腰の風情を眺めながら座敷と囲炉裏を囲み、名物の野性味豊かな野鳥焼きで舌鼓をうち、杯を交わした面影が微かに蘇るが、その面影が完璧に廃墟になってしまった。
ただでさえ狭い尾根道、恐らく多数の消防車もこの火災現場に取りつくには大変な障害になったであろう。しかも山の上、急斜面の崖に僅かに取りつく住宅の他は樹木に覆われた場所だけに肝心の消火水をどのように、確保したのであろうか?
ようやくたどり着いた火災現場であったが目の前の火勢に、手だてを加えられず、悔しい思いをしたのではなかろうか。
しかし、こんな火勢の前に、この時期の長雨が幸いしたのであろうか、或いは懸命な消火活動の成果か、鬱蒼とした樹木に燃え移らず大規模な山火事にならなかったのは不幸中の幸いである。
それにしても、この廃墟化した焼け跡を見るにつけ、何故こんな事が行われるのであろうか、この繰り返される蛮行に、改めて怒りと虚しさが、目の前を駆け抜ける。
場所を選ばず、市域全域を狙った放火に関係当局や地域の住民に対する、愚かな挑戦である。
その再発も十分予知されるまま、何処かで、次のターゲットを狙っているかも知れず、この悪行は続いている。威信にかけても、探し出し安心して暮らせる世界に立ち戻って欲しい。