575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

長谷寺・あじさいの寺へ     遅足        

2012年07月13日 | Weblog
先週、奈良の長谷寺に行ってきました。
目的は、境内にある「ふたもとの杉」です。
この杉は、謡曲の「玉蔓(たまかずら)」に登場します。

玉蔓は、頭の中将と夕顔の間に生まれた娘。
この夕顔のもとに光源氏が通いますが、
夕顔は霊にとりつかれて亡くなってしまいます。
光源氏は、侍女の右近に玉蔓の行方を捜させますが、見つかりません。
それから何年も経って・・・
右近は、日頃から信仰している長谷寺の観音様に。
成人した玉蔓も、母との再会を祈願するために、
これまた大和の長谷寺に・・・・
二人が再会した場所が「ふたもとの杉」です。
平安シンデレラ・ストーリーですね。

長谷寺には、登廊という屋根のついた参道がありますが、
ふたもとの杉は、登廊から離れた急な坂道に立っていました。

   ふたものの杉の立ち処(たちど)を尋ねずは
                 古川野辺に君を見ましや

この二本の杉が立っているところを訪ねなかったら、
初瀬川の古川野辺で、玉蔓に出会うこともなかったでしょう、と
右近が詠んだとされる歌です。
(この二本の杉のお話、源氏物語にはなく、能の創作のようです)

長谷寺は花の寺と呼ばれるだけあって、四季折々に花が咲くそうです。
写真は登廊と雨に濡れる紫陽花です。
ここには芭蕉や虚子などの俳人も訪れて、句を詠んでいます。

  春の夜や籠り人(こもりど)床し堂のすみ  芭蕉

桜の咲いた春の夜でしょうか、願い事を心に堂の隅に
籠ってお祈りをしている人たちを詠んだ句。
昔は夢枕に神様や仏様が現れることがあったようです。

  花の寺末寺一念三千寺   虚子

虚子の句は、花の寺といわれる長谷寺には末寺が三千寺あること。
一念三千。人の心(一念)には、宇宙存在のすべてのありかた(三千)が
含まれている、と言う教えを踏まえた句だと思いますが・・・

随分前に牡丹の頃、一度、訪れただけでしたが、
良いお寺だったので、また行ってみたくなりました。

  登廊の柱千本梅雨じめり      遅足




コメント
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