575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

一月許可のほとけをのせて紙飛行機   摂津幸彦

2012年07月16日 | Weblog
第一句集の冒頭の句です。
作者の俳句宣言のような句と言っても良いでしょうか。
でも、なんなんだ!この句は・・・
摂津さんの句はほとんどが分かりません。
たまに句集を広げるのですが、ホトンドがチンプンカンプン。

どう読んだら良いのか?参考書を見つけました。
12の現代俳人論(下)のなかの仁平勝さんの摂津幸彦論。

ヒント①
摂津俳句は写生ではなく「言葉から出発」。
この句、まず、分からないのが一月許可。
古文書のなかに「○○月許可」というフレーズがあるそうです。
このフレーズに触発されて出来た句。
一月許可のほとけ、とは、一月の埋葬許可のでたほとけ(死者)の意。

ヒント②
少年時代の原風景。
紙飛行機は、子供のころに良く遊んだ心の原風景のひとつ。

かくして、一月に埋葬許可のおりた死者を乗せて、
紙飛行機が飛んでいく、という幻想の一句が誕生、という解説です。
なるほど。

難解な句のなかでも、ほんの少々はなんとか理解できる句も。
そうしたなかでも、私の好きな句。

  鬼あざみ鬼のみ風に吹かれをり

この鬼は鬼あざみから抜け出たもの。
この鬼はかくれんぼの鬼であり、鬼になった子が原っぱで一人
風にふかれているという句。これなら分かりやすい。

こうした作り方は成功より失敗が多い。仁平さんが失敗の例とした句。

  愛ちゃんはお嫁に辺り鵙日和

これは「愛ちゃんはお嫁に」という、流行した歌謡曲の一節を
面白く感じて使ったが、成功しているとは思えないとのこと。同感です。

ヒント③
語呂合わせ。

 蛇口にて水束ねらる寂光土

蛇口によって束ねられた水から寂光土へと飛躍している。
この飛躍を支えているのが「じゃ」という語呂合わせ。
これは良い句だと思います。

                    遅足



コメント
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