575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

父よチチよと秋に泣く   鳥野

2012年11月06日 | Weblog
公園の木立ちの間を歩いても、このところ蓑虫を見かけなくなりました。
外来種のヤドリバエの寄生によって、その数が激減。自治体では絶滅危惧種に指定していると聞きます。

蓑虫の命の継承は極めて厳しい。
微少なフェロモンをたよりに交わり、オスはそこで死。メスは独りで1000コ以上の卵を産み、
孵化させて懸命に育て続けます。
やがて蓑の底にアナを開けて、メスはそこから地上に落ちて死。

幼虫はアナから這い出し、風に乗って四散し、場を求めて蓑を作りはじめます。

蓑虫はその姿から鬼の子と蔑まれ、父親にも捨てられて哀れ、と書いたのは清少納言。
秋には迎えにくるから、の言葉を信じて、蓑虫は「父よ、チチよ」と泣いているそうな。

か細い糸の先の蓑の中、父を待つ風情は秋にこそ。 
ゆっくりと、今一度捜しに出かけましょうか。

 ・ 父よと泣き母よとは泣かぬ蓑の虫

 ・ 枯れ葉綴りの蓑着て密かな蓑の虫 あえかな銀糸を縁(えにし)と頼み

                        鳥野
コメント (1)
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