575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

愛日(あいじつ)や林縁に出て終る丘     三橋敏雄

2012年11月17日 | Weblog
昭和の名句集100冊より。
愛日とは、冬のありがたい太陽のこと。
出典は中国の古典「春秋左伝」「冬日愛すべし、夏日畏るべし」。
夏の熱くていやな太陽は、畏日(いじつ)。

僅か17文字の俳句を豊かにする方法の一つは、
使いこなせるコトバの数を増やすことですが、なかなか増えてくれません。
愛日とは、良い表現ですね。

三橋敏雄さんは1920年に生まれ戦争中は海軍に。
戦後は、遺骨収集に従事していました。
戦争を引き起こした日本社会に鋭い批評眼を持ち続けた人。
2001年に亡くなっています。

 当今(とうぎん)の昔赤子や冬霞

当今は現天皇のこと。この句の場合は昭和天皇を指します。
明治憲法では、国民は、みな「天皇の赤子(せきし)」とされました。
「赤子」に「あかご」と「せきし」の両方の意味を込めていると思います。
冬の霞が、厳しい時間の長さを象徴しているようです。

 会社には大小あれど夏終る

こんな句、初めて読みました。
天皇を頂点とした上下関係が世の中を規定していた時代。
戦後もこんなところに同じ構造がありますよ、と。
この夏終るという季語には明るさも感じられます。

                       遅足
コメント
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