
7月28日 愛知県津島市の津島神社に伝わる 津島天王祭の朝祭りを見物に
行ってきました 。午前9時半頃 、愛西市佐屋地区の市江車 ( いちえくるま )を
先頭に津島の5艘が次々と漕ぎ渡りました 。どの楽車船 ( だんじりぶね )も
能人形を飾り きらびやか 。

先頭の市江車に乗った10人の若者が白い布鉾を背負って次々と水に飛び込み
お旅所へ向かいます 。この場面が屏風絵でも見所の一つになっています 。
「 綴プロジェクト 」の高精細複製品を見て、すっかり魅了され、色々、勉強させて
もらいました 。
そんなもの複製品だと言うなかれ これも本物 クローン文化財
なかなか奥深くまだまだ不十分ですが、私なりに判明したこともありました 。
アメリカの美術史家 ロバート シンガー氏が確認した 「 津島祭礼図屏風 」8点の中の
大英博物館蔵と同じタイプとして 、アメリカ ボストンの 個人蔵 を挙げています が、
「 宵祭り 」( 八曲一隻 )だけで、「朝祭り 」 ( 八曲一隻 )は所蔵していません。
今回、私が調べてみたところ、このボストンの個人蔵はその後、シンガー氏がいる
ロサンゼルスのカウンティ美術館の所蔵となったようです。
それでは、「 朝祭り 」の方はどこにあるのか 。
名古屋市博物館が平成26年に開催した 「 三英傑 と名古屋 」展の時の図録にありました 。
早速、名古屋市博物館の学芸員の電話で聞いてみたところ入手経路など詳しくことは
教えてもらえませでしたが、平成11 年に所蔵したとのことです。
時々、公開されるそうですが、私はまだ見てしません。しかし、図録で見ても、その
構図は殆どといってよいほど 、大英博物館蔵と同じです 。
ロバート シンガー氏が「津島祭礼図屏風 」8点を分類したA、B、CタイプのC類
( 江戸時代後期 )に徳川美術館蔵 ( 六曲一双 )があります 。
平成24年、徳川美術館 ( 名古屋市 )で開催された「豪商のたしなみ 〜 岡谷コレクション〜 」
展の図録を見ていますが、江戸時代も後期になると、絵葉書的な要素が加わり、
例えば 川波の表現も模様のように類型化しています 。
この徳川美術館蔵の屏風は最初、津島市の伴家が持っていたものを、その後、名古屋
の豪商 岡谷家の所蔵 に 。昭和40年 ( 1965 )に徳川美術館に寄贈されています 。
今回の取材で「津島祭礼図屏風 」に影響を与えたと思われる「 日吉山王祭礼図屏風 」
を所有する京都 南禅寺の金地院( こんちいん )に行ってみました 。
残念ながら、今は大阪市立博物館にあるとのことでしたが、ここには優れた文化財が
あり、見学することができました 。
まず、方丈の前に広がる枯山水の庭園 。江戸時代初期、寛永年間 、小堀遠州作 。
「小堀遠州と伝えられる庭は多いが、資料に残る唯一の例 」( ウイキペディア調べ )
狩野派の襖絵など見どころ満載ですが、私が感心したのは長谷川等伯 ( 桃山時代の
画家 )の襖絵 。猿が手を伸ばして月を捉えようとしている図と老い松を描いた作品 です。
この寺にもう20年もガイドをしているという中年女性が電気を消して、自然光にすると、
庭園の背後に広がる木々の緑色が照り映えて微妙に方丈の間に入り込み、襖絵を
浮かび上がらせました 。
墨で描いた猿の毛はべったり黒一色に見えまたのが、自然光ではより立体的にその毛の
一本一本がまるで生きているように見えました 。
また、この猿猴図の隣の老い松も人工的な光の中では存在感がありませんでしたが、
くっきり浮かび上がってきました 。
この光の効果を発見したのは、多分、長年、朝に夕にこれらの襖絵を見てきたガイドの
女性の方の閃めきにあったのでしょう 。 終わり