575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

目には青葉 山ほととぎす 初鰹 <素堂>

2020年08月09日 | Weblog


山口素堂。江戸時代の俳諧師。本名は信章<しんしょ
う>。通称は勘兵衛。俳号は素仙堂、来雪など。サン
トリーのCMで有名な山梨県白州町の生まれ。家業は
甲府の魚町で酒造業。しかし、家業を弟に譲り20歳
で江戸へ向かいます。

江戸では、林春斎<はやししゅんさい>より漢学や算用
を学び仕官の道へと進みます。しかし、職を辞し京都
に居を移し、茶、書、能、歌、詩など、当時のあらゆ
る芸術を習得していきます。

素堂は松尾芭蕉が親友。そのため、江戸に帰った素堂
は深川の芭蕉庵に近い上野の不忍池に居を構えます。
芭蕉も幅広い知識を待つ素堂と接し、俳句作りにおい
て多大な影響を受けたといわれています。そして、隠
遁生活と称しながらも「葛飾風」という排風を確立。
「江戸三吟」は芭蕉との合作です。

ところで、帰郷した素堂。甲府代官の櫻井政能より川
の開削工事を依頼され、山口堤という堤防を築いたと
いう逸話があります。しかし、素堂は俳諧師。もし実
話なら、素堂は土木建築家といった顔を持ち合わせて
いたことになります。

山梨の歴史文化館に、弟子たちが素堂の性格について
記した「素堂句集」が所蔵されています。「素堂は記
憶力に優れ、相手の身分によって分け隔てることなく
応接する。そして内容について他言しない」社交的で
マルチな芸術家ともいえる素堂。しかし、その俳句は
現世の否定や自己疑視を核とした隠者文学というカテ
ゴリーに括られます。やや不思議な印象。山口素堂。
享年75歳。下記は辞世の句。

「初夢や 通天のうきはし 地主の花」

写真と文<殿>
コメント
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