575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

蚊遣火の 烟にそるゝ ほたるかな <許六>

2020年08月16日 | Weblog


ご紹介してきた芭蕉の弟子たち。最も異色と
いえるのは「森川許六」<もりかわきょりく>
でしょう。許六は歴とした彦根藩の武士。剣
術や馬術に加え宝蔵院流の槍の名手です。さ
らに、絵画や漢詩にも優れ文武両道の好例と
いっても過言ではないでしょう。

35歳で江戸に下向。宝井其角、服部嵐雪より
俳句を学びます。そして、松尾芭蕉に入門。
芭蕉から六芸<りくげい>槍術、剣術、馬術、
書道、絵画、俳諧に優れる逸材という意から
「許六」という俳号を授けられました。

面白いのは、芭蕉が許六の弟子だったことで
しょう。芭蕉は許六より狩野派の絵画の指導
を受けています。そのため、芭蕉は許六が江
戸を去る際「紫門之辞」といわれる俳句の秘
伝を与えています。芭蕉と許六は、互いが師
弟であるという特殊な関係だったようです。

彦根に戻った許六は「韻塞」<いんふたぎ>
「篇突」<へんつき>など数多な俳句の選集
や作法書などを著し精力的な活動を始めます。
円熟期の許六には、諧謔的で人生をやや諦観
したような句が多い気がします。

彦根藩の藩主は井伊家。菩提寺である龍潭寺
に残る許六の描いた襖絵は必見でしょう。許
六は、小ぶりな俳画が多く、大作はきわめて
珍しいといわれています。許六の絵画で最も
有名なのは「奥の細道行脚之図」笠を手にし
た芭蕉と曾良。みちのくへの旅立ちの景。記
憶にある方も多いのではないでしょうか。

ここで話題を変えます。いま、1日に100種の
生物が地球上から絶滅しているといわれてい
ます。ある霊長類学者は生態系のバランスが
崩れると未知のウイルスが生まれ、絶滅の連
鎖が始まると警告を発しています。俳句にお
いても絶滅した季語があります。蛍を季語と
できる未来。切に望む夏となりました。


写真と文<殿>

コメント
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