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【一口紹介】
大人になったあなたは、何かを忘れてしまっていませんか?大阪の路地裏を舞台に、新進気鋭の著者が描く六篇の不思議な世界。(帯封より)
【読んだ理由】
平成17年上半期(第133回)の直木三十五賞の受賞作。
【コメント】
表題作の「花まんま」は兄の視点から、妹の誕生と成長が語られる。幼い妹はやがて見ず知らずの土地や名前の話をするようになり、自分は彦根に住んでいた女性の生まれかわりだと告げる。半信半疑のまま、兄と妹は親に内緒で彦根へと旅立つ。そこで二人を迎えたものは? 親と娘の絆の強さ、亡くなってもいまだに忘れることのできない死者への思いを切々と訴えて、激しく胸をうつ。
その他、子供の時に買ったクラゲのような生き物を掌に乗せた時の甘美な感覚が忘れられない「妖精生物」、人の耳元で囁くと必ず死に至る呪文を操る「送りん婆」など。いずれも関西を舞台に、今は失われてしまった大切なものを思い出させてくれる作品集。
【印象に残った一行】
すべての人間が幸せになれることなど、この世には、きっとありはしないのだ。誰かに幸せの陰には、必ず誰かの不幸せがある。幸せというものの多くは、たいていどこか歪んでいる。
