【まくら】
金馬の代表作。元々は「ずっこけ」の前半で、それを金馬が一席に独立させたといわれている。
酔っ払いが、店の小僧をからかっているだけの噺だが、それを面白おかしくしたのは金馬の腕である。
【あらすじ】
縄のれんに醬油樽、切り回しているのは番頭と十二、三の小僧だけという、うらぶれた居酒屋に、湯の帰りなのか濡れ手拭いを肩に掛け、ドテラに三尺帯という酔っぱらいがふらふらと入ってくる。
無理やり小僧に酌をさせ、おめえの指は太くて肉がいっぱい詰まってそうだが、
月夜にでも取れたのかと、人を蟹扱いにしたりして、からかい始める。
肴は何ができると聞かれて、小僧が早口で、
「へえい、できますものは、けんちん、おしたし、鱈昆布、あんこうのようなの、
鰤(ぶり)にお芋に酢蛸でございます、へえーい」
と答えるのが面白いと言って、
「今言ったのは何でもできるか?」
「そうです」
「それじゃ『ようなもの』ってのを一人前持ってこい」
その次は、壁に貼ってある品書きを見て
「口上てえのを一人前熱くしてこい」
と言ったりして、小僧をいたぶる。
そうかと思えば、とせうけてえのは何だと聞くから、小僧が
「あれは『どぜう汁』と読むので、濁点が打ってあります。イロハは、濁点を打つとみな音が違います」
と言うと、それじゃあ、イに濁点が付けば何と読む、ロはどうだ、マは? と、点が打てない字ばかりを選ってからかう。
今度は
「向こうの方に真っ赤になってぶら下がっているのはなんだ」と聞くので、あれはゆで蛸ですと答えると、
ゆでた物は何でも赤くなるのか、じゃ猿のお尻やお稲荷さんの鳥居はゆでたかと、ますますからむ。
しまいに、
「その隣で腹が裂けて、裸になって逆さまになっているのはなんだ?」
「あんこうです。鍋にします」
「それじゃ、その隣に鉢巻をして算盤を持っているのは?」
「あれは番頭さん」
「あれを一人前持ってこい」
「そんなものできません」
「番公(=あんこう)鍋てえのができるだろう」
出典:落語のあらすじ 千字寄席
【オチ・サゲ】
ぶっつけ落ち(意味の取り違えがオチになるもの )
【噺の中の川柳・譬(たとえ)】
『酒飲みは奴豆腐にさも似たり、はじめ四角であとがぐずぐず』
『下戸の薬知らず上戸の毒知らず』
『酒のない国に行きたい二日酔い、また三日目に帰りたくなる』
『酒飲みは奴豆腐にさも似たり、はじめ四角であとがぐずぐず』
『生(なま)酔い本性違わず』
(日頃酒をたしなむ人は、中途半端に酒を飲んで酔っていても、本来の気性や考え方を失わない)
『居酒屋も一ト刷毛塗ればバーとなり』
『酒は燗、魚は気取、酌はたぼ』
(「気取」は建築用語の「木取り」に由来し、優れた素材を無駄なく調理すること、たぼ=髱は、日本髪の後ろに突き出た部分のことで、若い女性の喩え。つまり、酒を飲むときには、ほどよいお燗と、肴は気の利いた刺身、それに若い女のお酌があればこの上ないということ)
【語句豆辞典】
【居酒屋】
江戸時代の中期には既にあったと思われる。初めは、酒屋が味を見てもらうために、店先で、枡・湯呑みで飲ましたのが、江戸独特の居酒屋になり男手だけで営業していた。居酒屋を俗に縄のれんというのは、店頭に掛けてあった縄の暖簾に由来する。
【上戸】
下戸の対語で。好き・癖なの意。単に上戸と言えば酒好きのこと。
【月夜の蟹】
月夜にとれた渡り蟹(ぎざみ)は身が少ないといわれるが根拠はない。但し、産卵直後の蟹は身が少ない。
【元方現金】
仕入れが現金。
【この噺を得意とした落語家】
・三代目 三遊亭金馬
【落語豆知識】
【擽り(くすぐり)】噺の中に折り込むギャグ。
金馬の代表作。元々は「ずっこけ」の前半で、それを金馬が一席に独立させたといわれている。
酔っ払いが、店の小僧をからかっているだけの噺だが、それを面白おかしくしたのは金馬の腕である。
【あらすじ】
縄のれんに醬油樽、切り回しているのは番頭と十二、三の小僧だけという、うらぶれた居酒屋に、湯の帰りなのか濡れ手拭いを肩に掛け、ドテラに三尺帯という酔っぱらいがふらふらと入ってくる。
無理やり小僧に酌をさせ、おめえの指は太くて肉がいっぱい詰まってそうだが、
月夜にでも取れたのかと、人を蟹扱いにしたりして、からかい始める。
肴は何ができると聞かれて、小僧が早口で、
「へえい、できますものは、けんちん、おしたし、鱈昆布、あんこうのようなの、
鰤(ぶり)にお芋に酢蛸でございます、へえーい」
と答えるのが面白いと言って、
「今言ったのは何でもできるか?」
「そうです」
「それじゃ『ようなもの』ってのを一人前持ってこい」
その次は、壁に貼ってある品書きを見て
「口上てえのを一人前熱くしてこい」
と言ったりして、小僧をいたぶる。
そうかと思えば、とせうけてえのは何だと聞くから、小僧が
「あれは『どぜう汁』と読むので、濁点が打ってあります。イロハは、濁点を打つとみな音が違います」
と言うと、それじゃあ、イに濁点が付けば何と読む、ロはどうだ、マは? と、点が打てない字ばかりを選ってからかう。
今度は
「向こうの方に真っ赤になってぶら下がっているのはなんだ」と聞くので、あれはゆで蛸ですと答えると、
ゆでた物は何でも赤くなるのか、じゃ猿のお尻やお稲荷さんの鳥居はゆでたかと、ますますからむ。
しまいに、
「その隣で腹が裂けて、裸になって逆さまになっているのはなんだ?」
「あんこうです。鍋にします」
「それじゃ、その隣に鉢巻をして算盤を持っているのは?」
「あれは番頭さん」
「あれを一人前持ってこい」
「そんなものできません」
「番公(=あんこう)鍋てえのができるだろう」
出典:落語のあらすじ 千字寄席
【オチ・サゲ】
ぶっつけ落ち(意味の取り違えがオチになるもの )
【噺の中の川柳・譬(たとえ)】
『酒飲みは奴豆腐にさも似たり、はじめ四角であとがぐずぐず』
『下戸の薬知らず上戸の毒知らず』
『酒のない国に行きたい二日酔い、また三日目に帰りたくなる』
『酒飲みは奴豆腐にさも似たり、はじめ四角であとがぐずぐず』
『生(なま)酔い本性違わず』
(日頃酒をたしなむ人は、中途半端に酒を飲んで酔っていても、本来の気性や考え方を失わない)
『居酒屋も一ト刷毛塗ればバーとなり』
『酒は燗、魚は気取、酌はたぼ』
(「気取」は建築用語の「木取り」に由来し、優れた素材を無駄なく調理すること、たぼ=髱は、日本髪の後ろに突き出た部分のことで、若い女性の喩え。つまり、酒を飲むときには、ほどよいお燗と、肴は気の利いた刺身、それに若い女のお酌があればこの上ないということ)
【語句豆辞典】
【居酒屋】
江戸時代の中期には既にあったと思われる。初めは、酒屋が味を見てもらうために、店先で、枡・湯呑みで飲ましたのが、江戸独特の居酒屋になり男手だけで営業していた。居酒屋を俗に縄のれんというのは、店頭に掛けてあった縄の暖簾に由来する。
【上戸】
下戸の対語で。好き・癖なの意。単に上戸と言えば酒好きのこと。
【月夜の蟹】
月夜にとれた渡り蟹(ぎざみ)は身が少ないといわれるが根拠はない。但し、産卵直後の蟹は身が少ない。
【元方現金】
仕入れが現金。
【この噺を得意とした落語家】
・三代目 三遊亭金馬
【落語豆知識】
【擽り(くすぐり)】噺の中に折り込むギャグ。