日本男道記

ある日本男子の生き様

恋ひ恋ひて・・・巻四・六六七 大伴坂上郎女

2011年04月08日 | 万葉集
恋ひ恋ひて・・・巻四・六六七 大伴坂上郎女

恋ひ恋ひて・・・巻四・六六七 大伴坂上郎女
「恋ひ恋ひて 逢ひたるものを 月しあれば 夜は隠るらむ しましはあり待て」

校訂原点(漢字)
「戀々而 相有物乎 月四有者 夜波隠良武 須臾羽蟻待」

現代語訳と解説
「長く恋し続けて、やっとお逢いできたのです。まだ月が残っているので夜の闇は深いでしょう。しばらくはこのままいてください」

恋し続け、苦しんできて、やっと逢えたふたりです。だから、帰るのを待ってください。夜はまだたっぷりあるのだから、もう少しそばにいて、と大伴坂上郎女が安倍虫磨に贈った恋歌です。
実はこの恋、架空の恋なのです。
ふたりは恋人でもなく、ふたりの間に恋心が芽生えたわけでもありません。仲間として楽しく語り合い、お酒を呑んでいるときに詠まれました。
万葉集にあるパターンのひとつ、引き止め歌を真似て知的な遊びを言葉の上でしているのです。
日本語には複数という概念がありません。そこで例えば、木なら木木(きぎ)という風に、同じ言葉を重ねて複数を表現していたようです。「恋ひ恋ひて」は、恋し続けるという意味になります。
恋とは、苦しさやせつなさ、そこにないものを求めること。そんな恋を知る大人同士であり、気心の知れた仲だからこそ、この歌は楽しめるのです。

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2 コメント

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恋ひ恋ひて.. (地理佐渡..)
2011-04-08 06:26:43
おはようございます。

日本語には複数を表す概念が..

いやぁ、これにはすっかり驚きました。
日本語の不思議。考えてみますと、
英語などは名詞にsをつけて複数を示す
方法がありましたね。
しかし、恋ひ恋ひて..。技巧を試す
遊びとは言え、うまいものです。

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Re:恋ひ恋ひて..て.. (日本男道記)
2011-04-08 06:58:10
おはようございます。

複数表現が日本語の場合、同じ言葉を重ねる。
木木、花花、人々などふたつ目が濁音になるものと、家々、山々など濁らないものがありますね。何か法則があるのでしょうかね?

また名詞だけでなく、「恋ひ恋ひて..」のように、動詞もありますが、多くは無いようですが。
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