カスタマーレビュー
阿智胡地亭 辛好
5つ星のうち5.0
ホモサピエンスが作り上げた人間社会の全体像がようやくこの本でわかった。
2019年4月15日
形式: 単行本
中学生のころ、歴史の授業では縄文や平安や江戸時代までは時間をかけて教えてくれたが、何故か近現代史のページの頃になると三学期の授業時間が足らず、家でそれぞれが読んでくださいとなった。そして高校では大学受験のアイテムに世界史を選ばなかったので、結局まもなく喜寿を迎える年まで「この2500年の間にホモサピエンスが全世界で作ってきた社会像」を包括的に自分の内部で持つことなくきてしまった。もう仕事に効かなくても(笑)いいのでこの本の書名は自分には向かないが三つの理由で手に取って読んでみた。
①著者が学者ではなく、私と同じ会社員であったこと。
②著者があちこちで書いたものやテレビでの発言が受け売りではなく、
ご自分自身の体験や思考から出ていると思ってきたこと。
③翻訳書ではなく日本人が書いた世界史であること。
読んだ結果は裏切られなかった。
自国の近現代史を知らない人間はやはり子供だ。子供には今なぜ自分がここに存在するかを知る必要は一般的にはない。そして自国の近現代史はそのまま世界の近現代史の中にある。日本と米国が戦い日本が負けたことを知らない高校生がいるとあるメディアに出ていたが本当だろうか?確かに米国との1945年からの関係の中で、日本人は近現代史をあえて学ばないようになってしまった(された?)のではと思ってしまう。
何故世界の歴史が西洋中心の歴史になってしまったのか、抽象的な論述ではなく、生産量や人口などの数字を示して述べていく手法のおかげで内容の理解は胸に落ちる。そしてアメリカ、フランス、英国と中国の国としての本質に迫る記述が要を得ている。そして内容は最後に2000年代に生きる世界の中の日本人につながっていく。
読み終えてわかったが、この本は著者の何十回にもわたる講話をある人がまとめたものだった。
だから読みやすい。またそういう意味でいわゆる専門家からは多少の異論やキズの指摘があるかもしれない。
しかし細部に小分けされてしまった日本の歴史専門家と称する人たちに、この全体世界史が書けるだろうか?
教科書ではない、現代に生きる日本人が書いた「世界史」として、私は面白く最後まで読み進んだ。
Amazonのカスタマーレビューに4月17日掲載。