今夜、しばしのあいだ楽しむのは、フォルテピアノ奏者、伊藤深雪の「モーツァルトの旅路」(TRITON OVCT-00038)です。なぜ唐突に伊藤深雪かというと、手すきのときに書棚のファイル整理をしていたら、伊藤の演奏会のチラシとプログラムを目にしたため。奥の方にしまっていたため、ひさびさに目にしたのですが、演奏会はケルンからの帰国直後(1991年)におこなわれたもので、前記アルバムの録音でももちいている、ヨハン・アンドレアス・シュタインのフォルテピアノ(ミヒャエル・ヴァルカーの1989年製)を弾いてのものでした。
そのときの演奏会はまだ伊藤の知名度の低かったこと、当時としてはフォルテピアノがあまりなじみのない楽器だったこともあり、お世辞にも盛況とはいえないものでした。また、聴衆の多くをしめていたのが、どうやら伊藤の家族縁戚、学友らしきかただったようで、なんだかひとり、場違いな感じもありました。が、プログラムの構成(解説も伊藤)、演奏ともにとてもすばらしく、興奮したことを憶えています。ここできくアルバムは2006年の録音。ピアノ・ソナタ第11番(K.331)とピアノ・ソナタ第8番(K.310)の2曲を選び楽しむことにします。