今夜これから楽しむのは、井上裕子のフォルテピアノで、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの「エロイカ変奏曲」です。この変奏曲は2018年に録音された秀逸なアルバム、「The Art of Emotion」(SIMAX Classics PSC1372)に収録された1曲。アルバムの副題として「C.Ph.E. Bachs Empfindungen and the successors of his legacy」とあり、カール・フィリップ・エマヌエル・バッハの感情表現という遺産の継承者たち、つまりカール・フィリップ・エマヌエル、フランツ・ヨーゼフ・ハイドン、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト、ベートーヴェンと、4人の音楽家がとりあげられています。
その中からきくのは、はじめに記したとおり、ベートーヴェンの「エロイカ変奏曲」(『プロメテウスの創造物』の主題による15の変奏曲とフーガ)です。フォルテピアノは、エドウィン・バンク・コレクション(Fortepiano)所蔵の1785年ごろに製作されたとみられる楽器(製作者不明)。奏者の井上は、シェティル・ハウグサンに学んだフォルテピアノ、チェンバロ奏者。これがデビュー・アルバムということです。ちなみに、「エロイカ変奏曲」をきくと思い出すのが、三田誠広の『エロイカ変奏曲』。恋愛小説ということなのですが、「エロイカ変奏曲」を素材に芸術論も語られており、ときおり読み返したくなります。