今宵、本流をはなれて楽しむのは、芸能山城組によるルネサンス音楽で、ジュリアーノ・ブォナグリオの「アヴェ・マリア」です。この曲が収録された「黄金鱗讃揚」は、初出時の1978年にはダイレクトカッティングを売りにした45回転LPとして発売。ここで楽しむのは、1994年に再発売されたCD(ビクター・エンタテインメント VICL-15033)です。ブォナグリオの「アヴェ・マリア」(CDの曲名表記は「アベ・マリア」)は、1976年の東京都合唱コンクールの課題曲で、芸能山城組のメンバーが別名で出演。その歌唱は「審査員の先生たちを混乱に陥れ、審査の結果としては見事に落第点をもらった」ということです(解説書)。
ブォナグリオはジュリアーノ・ティブルティーノとして知られる、16世紀のイタリアの音楽家。その「アヴェ・マリア」をいわゆる地声で歌うわけですから、否定的な意見はとうぜん理解できます。が、同時代の地方の女子修道院ではこうした歌唱もあったのではないか、と思わせてくれるすぐれた歌唱であり、すぐれた挑戦としてもっと評価してもよいのではないでしょうか(すくなくとも、いまなら)。なお、このCDをきいていつもざんねんに思うのは、せっかくのダイレクトカッティングがCDでは活かせないのではないかということ。ぜひハイレゾとして、再々発売をのぞみたいですね。