『アンナ・マグダレーナ・バッハ 資料が語る生涯』(春秋社)は、マリーア・ヒューブナーによるバッハの妻アンナ・マグダレーナの伝記です。伝記といっても、「資料が語る」とあるとおり、出典と文献を示しながら、生涯(娘たちについても)をおったもので、著者の主観的な記述は排されています。例外は、ハンス・ヨアヒム・シュルツェの伝記的エッセイぐらい。年表のようにじつに淡々としているのですが、人生は山あり谷ありで、読んでいて飽きることはありません。
ところで、この本でちょっと気になるのは、本文(説明)中の引用のわかりにくさです。資料からの引用は本文中にくみ込まれていて、太字になっているのが引用文だと思うのですが、これと本文の区別があまり明瞭ではありません。印刷のムラといわれれば、そうなのかと思ってしまうくらいです。ひょっとすると原著がそうなっていたのかもしれませんが、せめて「 」(括弧)でくくるとか、改善の余地がありそうです。太字=引用、という凡例もないようです。