今日の節分は、奈良散策の日だった。春日大社参道の石灯籠には、明かりが入るように、願主の名の書いた新しい紙がはってある。こうして家の灯りの下でPCに向かっている今、奈良春日大社では、全ての電燈の明かりを落として、灯籠の灯りだけの夜を迎えているだろうと、幽玄の世界を想像している。
今日のお昼に撮った画像が暗闇の中に灯籠だけが浮かび上がっているのを思って、この回廊を通り、水谷茶屋から若草山の麓へ。そこから手向山八幡宮へと古都散策は思いがけない節分会を参観することができた。
豊作を祈願して節分の日に行なわれる御田植祭は室町時代にまで遡る奈良で最も古いお田植祭りのひとつ。翁の田主と地方の掛け合いで謡物能楽の形式で進められる格調高いお田植の祭事の進行中に、私はこの舞台の隅から興味深く見ることができる幸なことだった。
宮司さんが演じる翁面の田主は、先ず本殿下で水口を浄める水口祭を行った後、拝殿を苗代田に見立てて田作りの所作を行う。牛頭をつけた牛童(うしわらべ)が「モー」と鳴きながら唐鋤を曳き、田主は「福桶」を持って種籾を播きまく。少女が扮する早乙女は稲苗に見立てた松苗を神前に供え、最後は田主が扇子を片手に格調高い口上を謡い儀式を締めくくる。
その神事の後、舞台から宮司さんをはじめ、牛童、早乙女、神社のお世話の方たちの多くの人たちが、一斉に福豆を見物人に撒いてくれた。 カメラを構えていた私の方にも飛んできたので、慌ててしっかりとキャッチしたのが、これである。