今回のバスツアーのメインは、水仙の群生を見ることだ。
バスから降りると、左手山側を見上げて「うわぁ!すごい!」と思わず声を上げた。 山裾から頂上にかけて、白い点々が斜面を埋め尽くしている。写真では見ていたが、実際のこの光景を目にした時、甘い香りに酔いしれてその中に入っていくことの感動に心踊る思いがした。
灘黒岩水仙郷は、今から約180年前に付近の漁民が海岸に漂着した球根を山に植えたのがだんだん繁殖したとされており、今ではここ淡路島の南部に位置する諭鶴羽山(標高607.9m)から海に続く45度の急斜面の一帯、約7ヘクタールにわたって500万本もの野生の水仙が咲き誇っているとのこと。
左右上下の可憐そのもののような白い花を愛でながら、整備されたコンクリート階段を登る。一方通行なので、降りてくる人がいなくて安心して登れるが、かなり急なところもあり、登山用のストックが大いに役に立って助かった。
登り口には、手作りの杖があって、それを借りて登る人も沢山いた。歩きやすい靴と、ストックは高齢者の必需品で安心安全の備えのようなものである。 若い人は元気にとんとんと登っていくが、ここで転んでは大変だと自分を戒めながら、カメラとストックと階段の手すりを適当に持ち替え、こんな美しい花に囲まれて歩く日の喜びをじっくり味わっていた。
一人遅れて花とじっくり対面する、カメラの女性がいた。どの場所も全て思い出の画像として残したい光景である。
場所によっては、海から吹き上げて来る風に押さえつけられたように、横たわっているのもあるけれど、水仙はもともととても強い花で、風が過ぎるとまた起き上がるに違いない。
右上の木立辺りが、頂上であったが、ここの分岐点が、下りに繋がっていたので、そちらのほうを選んで、下り階段へ向かった。
ここでは、どの花も、みんなこちらに顔を向けて見送ってくれているようで、はしゃいだ気持ちになる。
3枚目の説明文の所に、「45度の急斜面」というのがあったが、このカメラが捉えた斜度は確かに45度の急斜面であることが分かる。不思議なことに、こちら側の斜面にだけ水仙の群生があり、谷を隔てた向こうの山には見られない。
180年前にこの海岸に流れ着いた水仙の球根が、地元の人々の多くの手を経ながら、今は500万本の野生の群生地となり、早春の花を求めて訪れる人々に大きな感動と元気を与えてくれている、貴重な水仙の郷である。