(カイロ最古のイスラム寺院“ガーマ・アムル”で祈る人々)
先週エジプト観光で留守にしていましたが、帰国後ニュースの整理をしていてエジプト関連のものがひとつありました。
・・・・・野党のラマダン祝う集会、政府が阻止 エジプト・・・・・・
エジプト最大の野党勢力ムスリム同胞団が22日に予定していたラマダン(断食月)を祝う集会が、政府によって中止に追いやられた。集会には政府に批判的な政治勢力や人権団体などの代表を含む約1000人以上が招待されていた。同胞団が05年の総選挙で躍進して以降強まる政府による圧力の一環とみられる。
同胞団は非合法だが、05年の選挙で無所属として議会定数の約5分の1を占める88人を当選させた。今後の影響力の拡大を恐れるエジプト政府は今年3月に憲法を改正し、宗教に基づく政党の設立を禁止し、テロ対策として令状なしの市民の拘束などを認めた。【9月23日 朝日】
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イスラム同胞団はイスラム法による社会統治を掲げる組織ですが、同胞団自体は比較的穏健な団体だそうです。
過激派は組織から排除されるため、その排除された過激派がジハード団などいくつかのより過激なイスラム原理主義組織を形成するようになっているとか。
記事の内容は、最近の国際社会で大きな潮流となっているイスラム組織の拡大の問題、そして政治と宗教の関係の問題ということになります。
ただここでは、そこまで大上段に構えた話ではなく、身の丈に合った観光旅行の印象を少し。
記事にもあるように旅行中は丁度ラマダンの時期にあたり、ムスリムは夜明けから日没までは食事も水も一切とらないという生活をしていました。
エジプトには数%のコプト教徒(土着キリスト教)もいますが、ラマダン期間中の飲食はなるべく目立たないようにしているとか。
日没後は盛大に飲み食いしますが、やはり日中の断食は相当に負担で、午後も夕方近くなると一斉に家路を急ぐ人々で道路は大渋滞を起こします。
もちろん信仰へ関与程度は人によって異なりますので、礼拝にしても、数人雑談しているなかで一人だけ抜けて礼拝を行い、他の者は雑談を続けるといった具合にそれぞれのペースでやっているようです。
ただ、ラマダンの断食については相当に一般的に行われているように見えました。
敬虔な人は唾も飲みこまずに吐き出すとか・・・。
このような生活を信徒に1ヶ月間もとらせる宗教の社会規制力というのは、葬式仏教の日本人には想像しがたいものがあります。
宗教政党を禁じるとか、宗教と政治を分離すると言っても、ここまで宗教に深く根ざした社会にあって「それは無理じゃないか・・・」というのが率直な印象でした。
そしてこのような社会では恐らく、政治的な“自由”とか“民主的”とかいった言葉よりは、宗教的な相互扶助、助け合い、公正といった訴えの方が人々の心にスムーズに入っていくだろう・・・とも思えました。
国内の競争的な経済システム・深まる国際的経済関係のなかで、社会腐敗の横行・機会を活用できたひとにぎりの勝者・外国からの影響の増大という現実への失望・無力感は、多くの人々の心を宗教的な価値観、固有の伝統への回帰へ向かわせることが想像できます。
エジプトの政治事情に話をもどすと、05年の選挙でムスリム同胞団メンバーが無所属の形で大量当選し実質的野党第一党になった背景には、上述のような大きな流れとともに、アメリカからの民主的選挙を求める圧力があってムバラク政権が弾圧を弱めたことがあるとか。
パレスチナでも民主選挙を早期に求めるアメリカの圧力で選挙を実施した結果、ハマス政権が誕生するといったことがありました。
アメリカが“民主的”な選挙を求めると、人々はアメリカの意に反して反米・イスラム的な選択を行うというのはいかにも皮肉な話です。
(エジプト・バフレイアの村 ラマダン期間中の日没後、村の男達は集会所みたいなところに集まって一緒に夕食とおしゃべりを楽しみます。
帰りにお金を渡していた人もいますので、各々が事情に応じて負担するような仕組みではないでしょうか。)