(アフガン南部のカンダハルで「地方復興チーム」(PRT)の活動に従事するカナダ軍 地元長老との会議(shura)で復興や治安に関する重要事項を話し合います。“flickr”より By afrancevi)
北大西洋条約機構(NATO)は24日、オランダで国防相会議を開き、アフガニスタンへの今後の展開などを話し合いました。
これに先立ち、アメリカのゲーツ国防長官は、「現在アフガニスタンに派兵している同盟国の各国兵力は合計で200万人以上に上るにもかかわらず、アフガニスタンに対してはわずかな追加支援も見出されないことに不満を抱いている」と現状に不満足の見解を明らかにしていました。【10月23日 AFP】
アフガンにはNATO主体の国際治安支援部隊(ISAF)約4万人が展開していますが、当初計画に比べ3000~4000人不足していると言われています。
現在、アフガニスタン東部・南部の治安悪化地域でのタリバンとの戦闘の大半は米英、カナダ、オランダが引き受けており、ドイツ・フランスは比較的治安の安定した北部地域で復興作業に当たっています。
会議でアメリカは部隊の増派・南部戦闘地域への派兵を求めましたが、北部で約3000人を復興作業に展開するドイツは、訓練要員の若干の増派は認めたものの、「我々は十分な貢献をしている」として南部戦闘地域への展開を拒否。
南部に派兵し、すでに10人の戦死者を出しているオランダも期限延長を明言しませんでした。
また、NATOのデホープスヘッフェル事務総長は、アフガニスタン東部・南部の駐留部隊を持ち回り制にする輪番制を提示しましたが、各国の同意は得られませんでした。
こうして、全体的には欧州各国は消極姿勢に終始し、加盟国間の不協和音が浮き彫りになりました。
【10月25日 毎日】
ゲーツ長官は、「派遣部隊の任務、行動の制限は、この同盟を相当不利な立場に置いている。各国の交戦規定には微妙な違いがあるだろうが、一つの国の部隊に条件が付けば、他の国の部隊に不公平な負担をかける。アフガンでは実害が出ている」と指摘。
名指しこそしなかったものの、ドイツに向けられたものと言われています。
ドイツのユング国防相は復興作業について、“反政府勢力と戦うのと同じくらい重要だ”と述べています。【10月26日 時事】
ドイツのアフガニスタンにおける国際治安支援部隊(ISAF)の活動、その一環としての軍人と文民が協力してアフガン再建を支援する「地方復興チーム」(PRT)については、毎日新聞にここ数日ルポが掲載されています。
http://mainichi.jp/select/world/news/20071021k0000m030134000c.html
アフガン:ISAFの独軍同行ルポ 「気がめいる日常」
http://mainichi.jp/select/world/news/20071021ddm007030106000c.html
アフガン:ISAF独軍同行ルポ 「安全」か「貢献」か苦悩
http://mainichi.jp/select/world/news/20071023ddm001030004000c.html
アフガン:独軍、検問指導 緊張続く、支援の現場
http://mainichi.jp/select/world/news/20071025dde007030034000c.html
アフガン:独軍参加の民生支援 市民感情配慮、軍活動と分離--NGO側懸念
ドイツ軍の活動は、民主党小沢党首の提起する「日本のISAF参加」の参考実例ともされています。
北部地域は南部に比べれば平穏ですが、決して安全と言うわけではなく、02年以来ドイツ軍の兵士の死者は事故を含めて26名、そのうちテロ・地雷による戦死者は11名にのぼっています。
パトロール中の部隊が砲撃を受ける、基地にロケット砲弾が打ち込まれるといったこともあり、5月には自爆攻撃で兵士3名が死亡しています。
学校を造ったり、井戸を掘る支援が主任務の「地方復興チーム」(PRT)の兵士も武装勢力の攻撃の標的にされています。
軍人と文民が協力して行うPRTについては、地元の期待は大きいものの、非政府組織(NGO)の間では「(軍人が参加することで)これまで築いてきた市民の信頼を壊す」との批判も根強くあるそうです。
軍人が参加するPRTと、非武装のNGOなどが武装勢力に同一視され、NGOの四輪駆動車も武装勢力の標的になっているとか。
実際、NGO関係者数人が犠牲になっており、ドイツ国内では有力NGOから「軍は治安維持に専念すべきだ」との声が上がっているそうです。