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(チェルノブイリ事故でゴーストタウンとなった都市Pripyatは、自然の力で森に帰っていきつつあります。“flickr”より By rusocer http://www.flickr.com/photos/13174874@N07/2770826291/ )
【G8:日本、当事国としての将来的な原発政策の方向性は示しきれず】
かつては世界の政治・経済の流れを決める会議であったG8首脳会議(サミット)ですが、今はG20の影にかくれて、すっかり影が薄くなりました。
フランス・ドーヴィルで開かれた今回は、「フクシマ」を受けての原発問題が主要議題のひとつとなりました。
****G8各国、ミゾ浮き彫り 脱原発の独伊、仏露は推進派****
主要国(G8)首脳会議では、焦点の原子力政策をめぐり各国が激しい攻防を繰り広げ、原発と再生可能エネルギーに対する姿勢の違いが浮き彫りになった。
脱原発論の先頭に立ったのがドイツだ。メルケル首相は「福島(原発事故)から教訓を学び取れ」(サミット直前の国会演説)と強調。できる限り早く原子力から再生可能エネルギーに乗り換えたいとした。ドイツに追随するかのように、イタリアも原発再開を凍結する法案を可決し、サミットに乗り込んだ。
一方、電力の約8割を原発に依存するフランスのサルコジ大統領は「原発は安全性をどう高めるかだ」と、議長国として脱原発世論の封じ込めに奔走。ロシアも足並みをそろえ、世界最多の原発を抱える米国や英国も原発推進に軸足を置いた。
菅直人首相は再生可能な自然エネルギーの推進を表明したが、事故の当事国としての将来的な原発政策の方向性は示しきれず、他国をがっかりさせた。
福島第1原発事故を経ても、溝は埋まらない主要国。それは原子力とエネルギー政策で最適解をいまだ見いだせない世界の現実を示している。【5月28日 産経】
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採択された首脳宣言は「日本の事故の教訓を踏まえ、最高水準の安全を追求する必要がある」と明記。地震多発地域での原発建設と運転に関する安全指針の検討を国際原子力機関(IAEA)に促しています。
各国対応のうち、イタリアについては“原発再開を凍結する法案を可決し、サミットに乗り込んだ”とのことですが、閉鎖中の原子力発電所の再開の是非を問う国民投票が今月中旬に予定されています。イタリア政府はこの法案成立を理由に国民投票の中止を狙っており、ベルルスコーニ首相の保身の思惑が強いとも報じられているところで、原発論議とは別の政治的側面もあります。
なお、イタリアは自国で原発を運用しないかわりに、不足電力を原発大国フランスから輸入しており、その意味でも注意を要します。
【「ドイツにとって大きな挑戦だが、未来への巨大なチャンスでもある」】
ドイツは本気で脱原発に取り組む姿勢です。
****ドイツ:原発22年までに全廃 連立与党が目標合意****
ドイツのメルケル首相率いる与党・キリスト教民主同盟、姉妹政党のキリスト教社会同盟、連立パートナーの自由民主党の与党3党は30日未明、国内の原発の全廃時期について協議し、「遅くとも2022年まで」を目標とすることで合意した。DPA通信が伝えた。大半は21年までに止めるが、原子力に代わる太陽光や風力などのエネルギー源の普及が間に合わないケースも想定し、1年程度の延長もあり得る選択肢を残した。
ドイツは現在、電力供給量の約24%を原子力に頼っている。今回の与党協議を踏まえ、政府は6月6日に原発全廃の時期などを盛り込んだ新政策を閣議決定する方針だ。(後略)【5月30日 毎日】
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もともと脱原発路線をとってきたドイツですが、メルケル政権は昨年9月、太陽光や風力など代替エネルギーの普及が進むまで原発を最長14年間延長する、原発容認の方針に変更しました。
しかし、「フクシマ」を受けて、稼働開始が古い発電所の運転を停止するなど原発政策の急転換を図かりましたが、地方選挙で有権者に「選挙戦術」と見透かされ惨敗しました。
一方、反原発を掲げる「緑の党」が躍進し、バーデン・ビュルテンベルク州では首相の座を獲得するまでになっています。
****ドイツ:連立与党「脱原発」で実績示す…背景に支持率低下****
ドイツのメルケル政権の連立与党が30日、22年までに原発を全廃することで合意した背景には、連立与党の支持率低下がある。経済危機に陥った昨年のギリシャに対する財政支援などが国民の不評を買い人気が低迷するなか、国民的関心の高い「脱原発」で実績を示したい狙いもあった。
09年の第2次メルケル政権発足直後、35%あったキリスト教民主同盟の支持率は一時、30%台を切るまで低下。自由民主党も14%から、現在は4%にまで落ち込んでいる。
こうした状況下で福島第1原発の事故が起きた。反原発を党是とする緑の党が州議会選で躍進。現在、連邦議会に議席を持つ5会派もすべて、同原発事故後に「早期の脱原発」で一致したため、首相は具体的な時期を示す必要に迫られた。
「拙速な判断は避けるべきだ」(ドイツ産業連盟幹部)という経済界からの懸念もあったが、政治の側が押し切った格好だ。(後略)【5月31日 朝日】
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脱原発方針を決めたメルケル首相は30日、「ドイツにとって大きな挑戦だが、未来への巨大なチャンスでもある」と述べ、効率的で環境にも優しい新エネルギー分野での先駆者を目指し、脱原発へ取り組む決意を改めて表明しています。
今後は、再生可能エネルギーへの投資を強化するとともに、新たな火力発電所や高圧送電線などの建設が必要になると見られています。【5月31日 朝日より】
近場では台湾も、脱原発の姿勢を見せています。
****台湾:稼働中原発の運転延長取りやめ決定 順次廃炉へ****
台湾の馬英九政権は稼働中の原発6基について、老朽化による危険性を回避するため、運転期間を延長せず18~25年に順次廃炉とする方針を決めた。台湾電力は、78年に運転開始した第1原発について、これまで運転開始から40年間とされていた運転期間を60年間に延長するよう申請していた。
また来年末の運転開始を目指していた建設中の第4原発については、安全性を再確認することになり、運転開始は更に先送りされる見込みとなった。
馬政権は今後、新たな原発は建設せず、稼働中の原発の安全確保を優先する。現在は総発電量の約2割を占める原発への依存度を低くし、クリーンエネルギーの開発を強化する方針だ。【5月23日 毎日】
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当の日本はと言えば、震災や「フクシマ」そっちのけで、内閣不信任案で騒動しています。
別に菅首相を信頼している訳でもありませんが、未曾有の災害にあって完璧な対応を求めるのは無理があります。
今はそんな足の引っ張り合いをしている時期ではないのに・・・というのが大方の国民の気持ちではないでしょうか。日替わりランチのように首相の首をすげ替えて一体どうしようと言うのでしょうか?
批判するばかりの政治しか持てないことが、日本の最大の不幸です。
【自然の生命力で野生動物が憩う「聖地」へ】
「フクシマ」が今後どうなるのかは、いまだ事態が収束していない現状ではよくわかりませんが、25年が経過したチェルノブイリについて、全く異なるふたつの記事を目にしました。
ひとつは、人間の活動が停止した事故地が野生動物の聖地「自然の王国」のようになっているという記事です。
確かに、広島や長崎も、予測をはるかに超えて復活しました。
****チェルノブイリが生んだ楽園****
かつて「死の灰」が降り注ぎ、住民が去ってゴーストタウンと化したあの場所が、多くの野生動物が憩う「聖地」に生まれ変わったという話を信じられるだろうか。
ソ連(現ウクライナ)のチェルノブイリ原子力発電所で「史上最悪の原発事故」が起きたのは86年4月26日。あれから25年、原発から半径30キロ圏内は今も居住禁止区域と定められ、そこは時が止まってしまったかのように当時の日常の痕跡を生々しく残す。
一方で、この一帯は驚くべき変化を遂げてきた。人間と共に自動車や産業が消え、農薬や殺虫剤を便わなくなったせいか、30キロ圏内には「自然の王国」とも言うべき美しい風景が見られるようになった。緑が生い茂り、多様な野生動物が伸び伸び暮らす。多くの家畜が甲状腺に異常を来して亡くなった当時、こうした自然の生命力を誰が想像できただろうか。
30キロ圏から数メートル外側に位置するキエフ貯水池の周辺には、富裕層がよみがえった自然を求めて押し掛ける。「チェルノブイリのリビエラ」と呼ばれるこの場所には別荘が立ち並び、狩りと釣りを楽しむ人々に愛されている。かつてこの貯水池に大量の放射性物質が降り注いだ記憶は、水に流されてしまったのかもしれない。【6月1日号 Newsweek日本版】
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【「人体への影響がいつまで続くかもわからないのがつらい」】
逆に、チェルノブイリから遠く離れたイギリス・ウェールズでは未だに羊の出荷制限が続いているそうです。
****チェルノブイリ25年 英の羊、今も出荷規制*****
1986年のチェルノブイリ原発事故でまき散らされた放射能に今も苦しむ人々が、2千キロ離れた英国ウェールズ地方にいる。羊の放射能検査を義務づけられながら、「世界一安全なラム(子羊肉)を目指す」と踏ん張る牧羊農家を訪ねた。
18万頭対象セシウム検査
「イエップ!」 グリン・ロバーツさん(55)が餌のバケツを手に大声を上げると、新緑の牧場に散った羊がはじかれるように集まった。春生まれの子羊は秋□に出荷月齢になる。だがロバーツさんは羊を自由に市場に出すことができない。
一帯の土壌や牧草が、放射性セシウムに汚染されているためだ。
まず羊を山間部から下ろす許可を地方政府から得る。3週間ほどふもとの牧場で育て、放射能検査を受ける。検査した羊の1キログラム当たりの放射性セシウムが1千ベクレムを下回れば、出荷にゴーサインが出る。
事故後の雨影響
原因は、季節外れの土砂降りに見舞われた86年5月2日にさかのぼる。6日前に爆発したチェルノブイリ原発から吹き上げられた放射性物質が冷たい雨と共に降り注いだ。翌月、全国9800の牧場の羊400万頭の出荷禁止が決まった。
それから25年。北ウェールズ山岳部を中心に今なお330の牧場で羊約18万頭の出荷規制が続く。一帯にはセシウムが牧草に取り込まれやすい泥炭地が多い。
ロバーツさんの牧場では今も10頭に1頭の割合で規制値を超える。基準を超えた羊の耳に標識をつけ、規制値を下回るまでふもとで育てなければならない。手間がかかるが、1頭1ポンド30ペンス(170円)の補償金が支払われるだけだ。
英畜産業はBSE(牛海綿状脳症)や□蹄疫に苦しんできた。だが「放射能は原因をなくす手立てがわからない。人体への影響がいつまで続くかもわからないのがつらい」とロバーツさん。廃業も考えたが、「汚染された牧場の買い手はいない。父祖から継いだ牧場とウェールズ固有の文化を捨てがたかった」という。
農家「品質守る」
英食品基準庁は「英国人の平均消費量(年8キロ)の10倍の肉を食べても健康に問題ないが、基準値を下回るまで規制は続ける」。ロバーツさんたち農家も早期の規制解除はもはや望んでいない。ウェールズ産ラムは高品質で知られる。「(拙速な解除で)ブランドと消費者の健康を傷つけたくはない。むしろ厳しい検査で『世界一安全なラム』をアピールしていく」【6月1日 朝日】
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