孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ・中国  Gメール攻撃問題、南シナ海問題で“力比べ”

2011-06-04 21:46:42 | 国際情勢

(写真は単なる兵士の通常教育の様子でしょう。米中は昨年それぞれ“サイバー司令部”を立ち上げ、ネット空間防衛に乗り出しています。 “flickr”より By cyberabwehrzentrum http://www.flickr.com/photos/cyberabwehrzentrum/5613967648/

【「国防上の問題で、サイバー戦争としてとらえる」】
昨年1月、米インターネットサービス最大手グーグルが中国を発信源とする大規模なサイバー攻撃を受けたとして、アメリカが調査を中国に強く要求、中国は関与を否定、米中間の軋轢が大きくなりました。

この事件では、米政府の情報部門・国家安全保障局(NSA)の専門家らが発信元の解析を急いだ結果、理工系の名門・上海交通大と山東省の山東藍翔高級技工学校が発信元と判明したとも報じられています。
“山東藍翔高級技工学校は、軍の支援で設立。軍のコンピューター技術者も養成しているとされる。ネットワークの運用は、中国のネット検索最大手「百度(バイドゥ)」に近い企業が担当。米軍事企業へのサイバー攻撃では、同校でウクライナ人教授が受け持つ特定のクラスとの関連を疑わせる証拠も見つかったという。” 【10年2月20日 朝日】ということで、中国側の軍が関与しているのではとの憶測もなされました。

今月、再びグーグルに対する中国を発信源とするサイバー攻撃が問題化しています。
****米グーグル:中国からサイバー攻撃 米韓政府関係者ら被害*****
インターネット検索サービス最大手の米グーグルは1日、同社の電子メールサービス「Gメール」を利用する数百人が、中国を発信源とするサイバー攻撃を受け、「フィッシング」と似た手口でパスワードを盗まれるなどの被害を受けたと明らかにした。被害者の中には米国や韓国などアジア数カ国の政府関係者も含まれており、被害を受けた政府当局にも報告したという。日本政府関係者が含まれていたかは不明。
09年末の中国を発信源とするサイバー攻撃を機に起きた米中摩擦が再燃する可能性がある。

同社の公式ブログなどによると、米国のほか、韓国の政府当局者が主に狙われたという。攻撃対象者には中国の活動家やジャーナリストも含まれている。発信源は中国山東省西部の済南市で、標的にした政府高官らのパスワードを盗み、メール内容の監視や転送先の設定変更を図ったとみられる。
手口について同社は、不正プログラムを通じて個人情報を収集する「フィッシングのような手口」としているが、詳細は明らかにしていない。過去には、グーグルのニセホームページからパスワードが盗まれたケースがあり、今回も同様の手口の可能性もある。
同社はすでに被害者に通知して対策を講じており、「Gメールの運用システムの安全性に問題はない」と強調している。

ロイター通信によると、米連邦捜査局(FBI)報道官は「グーグルと協力して、この件で調査をしている」と述べた。
09年末に発覚したグーグルなど30社以上の米企業を狙ったサイバー攻撃をめぐっては、米国務省が翌年1月に「組織的攻撃」と非難声明を発表。米中関係が悪化した。AP通信は、この時の攻撃の発信源の一つにも山東省済南市が含まれており、同市内にはコンピューター関連の職業訓練学校があると報じている。【6月2日 毎日】
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今回も中国側は関与を否定しています。
****Gメール攻撃:中国当局が反論****
インターネット検索サービス最大手の米グーグルの「Gメール」が中国からサイバー攻撃を受けたと発表した問題について、中国外務省の洪磊(こう・らい)副報道局長は2日、定例会見で「中国側を責めることは受け入れられない。法に基づいてインターネットを管理しており、むしろ中国はハッカー攻撃の被害者だ」と反論した。【6月2日 毎日】
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3日、アメリカ国務省のトナー副報道官は、アメリカが中国政府に対し攻撃への「懸念」を伝え、調査を要請したことを明らかにしました。
また、ゲーツ米国防長官は、こうしたサイバー攻撃について「国防上の問題で、サイバー戦争としてとらえる」と発言しています。

****米国防長官:サイバー攻撃「戦争としてとらえる」と言明****
ゲーツ米国防長官は4日、シンガポールで開催中の「アジア安全保障会議」で講演し、米国がサイバー攻撃を受けた場合、「国防上の問題で、サイバー戦争としてとらえる」と話した。中国からのサイバー攻撃を念頭に置いた発言と見られる。長官は「どこの国から攻撃が行われているか、明確にするのが困難だが、対処していく」と述べた。【6月4日 毎日】
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【「ベトナムは、中国と米国の間に張られたロープの上をつま先で歩かなければいけない」】
もうひとつの米中摩擦の火種は、昨日も取り上げた“南シナ海”問題です。
南シナ海での中国の影響力拡大を牽制するアメリカに対し、中国は同地域へのアメリカの関与を拒否しています。
シンガポールでの「アジア安全保障会議」において、梁光烈国防相とゲーツ国防長官の間で“力比べ”が行われたようです。

****中国、南シナ海「米国の関与」拒絶か…安保会議*****
アジア太平洋諸国の国防相や軍事専門家が参加する「アジア安全保障会議」(英国際戦略研究所主催)が3日、当地で始まった。
中国からは過去最高ランクとなる梁光烈国防相が出席、米国のゲーツ国防長官と会談した。梁氏は、中国と周辺諸国の摩擦が激化する南シナ海の領土、領海問題で最大焦点となっている「米国の関与」を拒絶する姿勢を示したとみられる。
今回で10回目となる同会議に、中国はこれまで人民解放軍副総参謀長を派遣してきた。胡錦濤・党中央軍事委員会主席以下、中国軍トップである同委のメンバーである梁氏は、軍首脳の一人。梁氏出席に、会議を極めて重視する中国の政治判断があったのは確実だ。【6月3日 読売】
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アメリカは、中国との摩擦が報じられているベトナム、フィリピンへの軍事支援を強めています。
****米国:ベトナムを対中防波堤に…オバマ政権が位置付け*****
南シナ海の実効支配を強めようと軍事力増強を図る中国の同海域への進出を食い止めるため、中国の隣国で「海域の玄関口」にあたるベトナムに対し、「(オバマ米政権が)軍事面などで大きな役割を担う意思がある」とする報告書を米議会調査局がまとめていたことが分かった。米国は、ベトナムと同様に中国と南シナ海の領有権を争うフィリピンにも軍事支援を進めており、ベトナムなどを“対中防波堤”に位置付けているとみられる。海域を巡る軍拡競争がエスカレートする恐れがある。

◇議会調査局報告「軍事面で役割」
(中略)毎日新聞が入手した報告書(今年2月作成)によると、オバマ米政権は中国に対する「戦略上の懸念」から、ベトナムとの関係を「次のレベル」に発展させるため関係強化を進めている。

ベトナム戦争の影響から、95年まで国交がなかった両国は、中国の南シナ海への進出に対抗して関係を深め、07年には、それまで禁じられていたベトナムへの武器売却を一部解禁。さらに、米国の外国政府への主要な軍事援助の枠組みのひとつである対外軍事融資を09年にスタート。融資額は、09年の50万ドルから10年には135万ドルに急増した。

軍事交流も活発化させ、昨年8月には、両国軍の次官級ハイレベル協議を初開催。また、ベトナム戦争以降初めて、同国中部ダナン沖に米第7艦隊の原子力空母や、イージス駆逐艦が停泊し、軍関係者による交流も行われたという。

報告書はまた、米の積極的な姿勢に対するベトナム側の反応についても記載。米国と一層の関係強化を求めているとする一方、「ベトナムは、これまで関係の深かった中国と米国の間に張られたロープの上をつま先で歩かなければいけない」と話すベトナム指導者の発言を引用し、ベトナムの外交政策の現状を分析している。
 
◇比とも戦略的関係強化
米国はフィリピンに対し、中国寄りの姿勢を取っていた前大統領から昨年、政権交代したアキノ政権に積極的な軍事支援を開始している。米政府によると、米国の対外軍事融資額も09年2800万ドルから10年に2900万ドルへ増額した。
今年1月にフィリピンを訪問した米国のキャンベル国務次官補は、中国を念頭に、フィリピンとの間で、安全保障分野で戦略的に関係を強化することを表明。さらに5月には、南シナ海の警戒用に、米国沿岸警備隊を退役した大型巡視船をフィリピンに売却した。
一方、フィリピン国軍も、南シナ海の領海警備のため海軍力を増強する方針を打ち出し、潜水艦の購入も計画している。

軍事力の増強を進める中国は国産空母を建造中とされ、「空母キラー」と呼ばれる対艦弾道ミサイル「東風21D」の配備を始めている。同時に豊富な石油資源を埋蔵しているとされる南シナ海で、石油探査活動を活発化。7月にも、中国で最大のオイルリグ(石油掘削装置)を南シナ海に展開し、掘削を始めるとしており、地域の緊張が高まっている。

アジア安全保障会議を主催する英国際戦略研究所は会議を前に「アジアの軍拡競争の抑制」と題する論文を発表。その中で「中国は台湾問題だけでなく、南シナ海を念頭に置いている。東南アジア各国は、米国の戦略的役割が将来、低下することへの懸念から、中国の冒険主義を防ぐため、軍の近代化を進めている」と分析した。【6月4日 毎日】
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ゲーツ米国防長官は4日に、アジア安全保障会議で演説、東南アジア諸国などに対し、米国防予算の削減によってアジア・太平洋地域における米軍のプレゼンスが低減することはない、との姿勢を示しています。

****米、シンガポールに最新鋭戦闘艦 中国軍牽制する狙い****
ゲーツ米国防長官は4日、シンガポールで開催中の「アジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)」(英国際戦略研究所主催、朝日新聞社など後援)で演説、海軍が導入中の最新鋭の沿岸海域戦闘艦(LCS)のシンガポールへの配備を柱とするアジアでの米軍強化策を明らかにした。

LCSは、潜水艦や機雷などで米艦船の接近を拒む軍事作戦に対抗して設計された、小型のハイテク水上戦闘艦。中国とベトナムなどの対立が激化する南シナ海近海に展開させることで、「接近拒否」の能力を高めている中国軍を牽制(けんせい)する狙いがあるとみられる。(後略)【6月4日 朝日】
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また、ゲーツ国防長官は近年、アジア各国が米国と軍事的関係の強化を望む意向が強くなっているとして「域内の各国と協力して、(南シナ海など)国際水域に各国が平等かつ、自由にアクセスできることを保証しなければいけない」と指摘し、多国間の枠組みで中国包囲網の構築を進めるとしています。【6月4日 毎日より】
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