(ケイコ・フジモリ氏の弟、ケンジ氏(31) 4月の国会議員選では、ケンジ氏がトップ当選するなど、ケイコ氏派は第2党に躍進。ケイコ氏は大統領選挙では惜敗したものの、今後も一定の影響力は保持しそうだとも見られています。 “flickr”より By Kurt van Aert http://www.flickr.com/photos/kurtvanaert/3207807862/)
【4カ月で体重が15キロ減 「人道的な見地から恩赦もあり得る」】
今月5日に行われた南米ペルーの大統領選挙(決選投票)は、予想されたように激戦になりましたが、左派系の元軍人オジャンタ・ウマラ氏(48)が、有罪が確定し服役中のアルベルト・フジモリ元大統領(72)の長女、国会議員ケイコ・フジモリ氏(36)を僅差で破り当選したことは周知のところです。
****ケイコ・フジモリ氏、大統領選敗北認める****
5日に行われたペルー大統領選決選投票で、元軍人オジャンタ・ウマラ氏(48)と戦った国会議員ケイコ・フジモリ氏(36)は6日、首都リマ市内で記者会見し、「ペルー国民の意思とウマラ氏の勝利を認める」と述べ、敗北を認めた。
6日夜発表の選管集計(開票率93%)によると、ウマラ氏が得票率51・6%、ケイコ氏が同48・4%となっている。
ケイコ氏は会見で、「最大の勝者は1000万人の貧しい人々であるべきだ」と語り、ウマラ氏が公約通り貧困対策に尽力するよう注文をつけた。【6月7日 読売】
****************************
ケイコ・フジモリ氏の敗北で、いろいろな憶測がなされていたアルベルト・フジモリ元大統領の恩赦、あるいは裁判やり直しの可能性も消えたと思われました。
****ペルー・フジモリ元大統領の釈放遠のく****
ペルー大統領選決選投票でのケイコ・フジモリ氏(36)の敗戦で、昨年1月に禁錮25年の有罪判決が確定して服役中の父、アルベルト・フジモリ元大統領(72)(在任1990~2000年)が釈放される可能性は低くなった。
ケイコ氏は選挙戦で、フジモリ政権下での汚職や人権侵害などを非難する「反フジモリ」勢力に配慮し、「当選しても父を恩赦しない」と明言してきた。だが、地元メディアによると、ケイコ氏は自身の当選後、憲法裁判所が「体制」の意を酌み、元大統領を裁いた最高裁特別刑事法廷に裁判やり直しを命じ、その上で無罪を勝ち取るシナリオを描いていたとみられている。ケイコ氏敗北で「計画」は頓挫した形だ。【6月8日 読売】
***************************
しかし、ここにきて、フジモリ元大統領の容態が悪化しているようで、「人道的な見地から恩赦」の可能性、日本への移送も言及されています。
****フジモリ元大統領、抑うつ症体重15キロ減 恩赦の観測****
南米ペルーで、軍警察の特別施設に収監中のフジモリ元大統領(72)の担当医が14日、記者会見し、フジモリ氏が抑うつ症で、最近4カ月で体重が15キロ減ったと語った。一方、大統領選に当選したウマラ氏は地元メディアに、「人道的な見地から恩赦もあり得る」と語り、ペラレス検事総長も13日、「不治の病の場合は恩赦もありえる」と発言、恩赦が現実味を帯びてきた。
フジモリ氏は、軍による民間人殺害事件で25年の禁錮刑を受けているが、9日、舌の腫瘍(しゅよう)再発に伴う出血で入院。腫瘍のがん性が判明したものの、末期症状ではなく手術はしないという。
一部地元メディアは、政府や司法レベルで、恩赦が具体的に話し合われているとし、治療のため、フジモリ氏を日本に送ることも検討されている、と伝えている。【6月15日 朝日】
****************************
フジモリ元大統領の処遇については、激戦となった大統領選挙を反映して、反フジモリ勢力からは厳しい見方がされていました。
***ペルー次期政権、フジモリ元大統領の処遇めぐり議論****
南米ペルーで収監されているフジモリ元大統領の処遇をめぐり議論が起きている。軍警察施設で「特別待遇」を受けていることを批判、通常の刑務所に移すべきだとの声も。5日に決選投票があった大統領選が激戦だったこともあり、政治的なしこりも反映されているようだ。
「犯した罪相応の通常の刑務所に入れるべきだ」。決選投票でフジモリ元大統領の長女ケイコ氏を破ったウマラ氏の陣営幹部で副大統領就任が予定されているチェアデ氏は地元メディアにそう発言した。
フジモリ氏の処遇については、政治的な立場から、これまでもさまざまな議論があった。「フジモリ氏は毎日大勢の訪問客がいて、バラを栽培している。金色の刑務所だ」。そう批判するのはフジモリ元大統領に1990年の大統領選で敗れたノーベル文学賞作家のバルガスリョサ氏。【6月9日 朝日】
******************************
フジモリ元大統領の体調はかなり前から悪化していたようですが、今月5日の大統領選決選投票への影響を懸念し、拒んでいたとも報じられています。
****娘が敗北…服役中のフジモリ元大統領、緊急入院****
ペルーのアルベルト・フジモリ元大統領(72)は9日、舌部の腫瘍の治療のため、リマ市内の病院に緊急入院した。
元大統領は昨年1月、禁錮25年の有罪判決が確定して服役中。
地元メディアによると、元大統領は3週間前から入院を勧められていたが、5日の大統領選決選投票への影響を懸念し、拒んでいたという。決選投票では、長女で国会議員のケイコ・フジモリ氏(36)が、元軍人のオジャンタ・ウマラ氏(48)に惜敗した。
フジモリ派の国会議員で医師のアレハンドロ・アギナガ氏は10日、地元ラジオに「元大統領は以前より15キロやせてしまった」と述べた。7日に元大統領と面会した複数の支持者も、本紙の電話取材に「弱々しく、疲れ果てているように見えた。声はとても小さく、途切れがちだった」と語った。【6月11日 読売】
****************************
次期大統領のウマラ氏側としても、元大統領が服役中に死亡することでフジモリ支持派の感情をことさらに刺激することは望まないところでしょう。
フジモリ派と反フジモリ派で激しく争われた選挙戦のしこりを除き、国民和解を実現するためにも、配慮がなされることも考えられます。
【「日本人、日系人の人権や尊厳に対する深刻な侵害があったことを謝罪する」】
フジモリ氏の話題とは全く関係ありませんが、同じ日系人関連として、ペルーが第2次大戦中に日本人移民数千人を逮捕してアメリカの強制収容所に送り込んだことに関する、ガルシア大統領の公式謝罪が報じらています。
****ペルー大統領、第2次大戦中の日系人「収容所送り」を謝罪****
ペルーのアラン・ガルシア大統領は14日、第2次大戦中に日本人移民数千人を無作為に逮捕して米国の強制収容所に送り込んだ事実について、正式に謝罪した。
大統領は会見で、「1941年に子どもを含めた日系人数千人が、いわれもなく逮捕され、不法に拘束された。無法者たちはあなたがたの家や会社を略奪し、財産をわが物にした。本日、ペルーの大統領として、日系人の人権と尊厳を踏みにじったゆゆしき事実について謝罪する」と述べた。
日本人移民は、1941年12月の真珠湾攻撃の直後から、当時の親米政権により次々と逮捕され、米国の強制収容所に送られた。この問題についての著作があるジャーナリストのアレハンドロ・サクダ氏によると、中南米から米国の強制収容所に送り込まれた日系人の大半が、ペルーの出身だったという。
生存者の多くは、米政府が1988年に公式謝罪した際に支払った賠償金と同額の賠償金を、ペルー政府に求めている。【6月15日 AFP】
***************************
上記記事にもあるように、アメリカ政府は1998年、連行した日系人への謝罪と補償を行っていますが、ペルー政府はこれまで責任を認めていませんでした。
****ペルー大統領、大戦中の日系人排斥を初めて謝罪****
南米ペルーのガルシア大統領は14日、首都リマで、第2次世界大戦中に日系人を排斥し、米国に連行したことについて、大統領として初めて謝罪した。
大統領はペルー日系人協会が運営する病院の増築工事完工式に出席し、「日本人、日系人の人権や尊厳に対する深刻な侵害があったことを謝罪する。当時のペルー政府や国民の一部は深刻な罪を犯した」と述べた。
「日系人は事業所や養鶏場を破壊され、職を失い、学校を閉鎖させられ、米国の収容所に送られた」と人権侵害の具体的な内容にも言及した。
1941年12月の日米開戦時、中南米諸国からは2200人以上の日系人が米国に連行された。その8割約1800人は、約2万6000人の日系人が暮らしていたペルーからだった。米政府が日本に残った自国民と交換する「捕虜」にするため、日本人の引き渡しを求めたためだ。米政府は1998年、連行した日系人への謝罪と補償を行ったものの、ペルー政府は責任を認めてこなかった。【6月15日 読売】
*****************************
【研修と銘打ち、実は安価な労働力を大量に引き入れているだけの制度】
改めて、海外で生活する日系人の存在に思いをはせるものがありますが、逆に日本国内で生活する外国人に関する話題も。
****外国人研修生制度は「日本の恥」、名目だけの国際貢献は即刻廃止せよ―華字紙*****
2011年6月13日、華字紙・日本新華僑報は、国際貢献を名目とした外国人研修生制度は「日本の恥」だと論じた。入国管理局の統計によると、日本には現在約10万人の研修生がいるという。以下はその内容。
いわゆる「外国人研修生制度」は先進国の中でも日本特有の制度だろう。表面上は発展途上国の人々が日本に来て先進技術を学ぶという名目を掲げているが、実際の目的は肉体労働者不足を補うことだ。
徳島県では外国人研修生を受け入れている企業の9割に違法行為が存在した。地元の労働基準監督署が64社を対象に調査を実施、うち57社で労働基準法違反が発覚したものだ。だが、こうした傾向は増加傾向にある。このままでは違法企業が100%に達するのも時間の問題だろう。
これがもし、少数の企業によるものであれば、社会の監視や行政の介入で是正してもらえば良い。だが、ほぼすべての企業が違反していたとなると、制度自体の廃止を日本政府は考えるべきではないか。研修と銘打ち、実は安価な労働力を大量に引き入れているだけの制度は即刻止めるべきだ。
日本にとって、研修生制度は「パブリック・ディプロマシー(広報外交)」の一種で、日本への理解を通じ、日本の国際イメージを向上させることが目的だった。ところが、実際は受け入れ企業は制度創設の趣旨に反し、研修生を安価な労働力としか見なさず、長時間労働、パスポートの取り上げ、強制貯金などが横行。こうした現状は研修生の権利を侵害しているだけでなく、日本に対するイメージも失墜させている。
さんざん虐げられた彼らは受け入れ企業への憎しみを抱き、日本という国の理不尽さを恨むだろう。こうして、日本の外国人研修制度は自ずと「日本の恥」へと変わっていく。入国管理局の統計によると、現在約10万人の外国人研修生がいるというが、彼らを「反日派」にせず、国際イメージを向上させる使者にしたければ、今すぐ外国人研修生制度を廃止するのが最良の方法だ。これ以上、「日本の恥」を増やさないためにも。【6月14日 Record China】
************************
外国人研修生制度については、以前から上記のような指摘があります。
もちろん、現場では様々な言い分もあろうかとは思いますが、悪用例が後を絶たないのも事実です。
なぜ改善の対策がとられないのか不思議です。