(世界の気象に関する研究機関が発表している気温の推移 GISSはGoddard Institute for Space Studies 、HADCRUTは英国気象庁、NOAAはアメリカ海洋大気圏局など。
こうした統計資料の解釈は、その処理方法や前提条件に関する理解が必要になりますので、私のような素人はなんとも言い難いところですが、一見したところ、この100年間で0.7~0.8℃程度、世界の気温が上昇しているようにも見えます。そうした見方が正しいのかどうかはわかりません。 “flickr”より By ClimateHawk http://www.flickr.com/photos/60934725@N08/5718900979/ )
【止まらないCO2排出増加、進まない温暖化防止交渉】
ひところに比べ地球温暖化に関する議論はあまり目にしなくなりましたが、もちろん現状が改善している訳ではありません。
****CO2排出レベルが過去最高に、気温上昇「2度」超える恐れ 英紙****
30日付けの英紙ガーディアンが掲載した最新データで、CO2排出レベルが過去最高の水準にあることが明らかになった。このままでは気候変動で危険な影響が出るとされる2度の気温上昇を上回る恐れがあるという。
ガーディアンに掲載された国際エネルギー機関(IEA)の推計データによると、世界経済が回復基調に戻ったことに伴い、2010年のCO2排出量は1.6ギガトン増加した。これまでで最も高い増加幅だ。
IEAの主席エコノミスト、ファティ・ビロル氏は同紙に「(CO2)排出に関する最悪のニュースだ」と語った。「気温上昇を2度以下に抑えることは非常に困難になってきた。この数値は、見通しが厳しくなったことを示している」
科学者の間では、気温上昇幅が2度を超えると、気候変動は危険な領域に突入すると考えられている。このため、IEAでは2020年までにエネルギー関連の排出ガス量を32ギガトン未満に抑える必要があると警告しているが、最新のデータでは、2010年のCO2排出量は30.6ギガトンに達したと推計されている。【5月30日 AFP】
*******************************
COPにおける交渉は、先進国と新興国・途上国の利害対立から、このところ停滞しています。
今年末に南アフリカで開催される国連気候変動枠組み条約第17回締約国会議(COP17)に向けた交渉も進展がみられていません。
****温暖化交渉:進展乏しく作業部会閉幕 COP17不透明に*****
タイのバンコクでの国連気候変動枠組み条約の特別作業部会は8日、交渉を終え閉幕した。京都議定書に定めのない13年以降の温暖化対策をめぐり、今年末に南アフリカで開催される同条約第17回締約国会議(COP17)に向け議論の具体化を目指したが、大きな進展はなく各国の主張の隔たりは埋まらなかった。今後の議論の道筋を示す議題設定は最終日になんとか合意にこぎ着けたが、実質的な交渉の開始には至らなかった。
6月にドイツのボンで次回会合を開くが、昨年メキシコのカンクンで開催されたCOP16での合意を土台に、COP17でより踏み込んだ合意を取り付けられるか見通しは不透明な状況だ。
COP16では、途上国への資金援助や新興国を含む排出削減の検証の仕組みなどの要素を盛り込んだ「カンクン合意」を採択。今回の会合で、先進国はこの合意に沿って議論を進めるよう主張したが、先進国により大きな負担を求める途上国や中国が反対し、今後の議論の道筋を示す議題設定が難航した。最終的にカンクンで合意できなかった内容も議題に含むことで決着した。
13年以降の国際的な削減義務がない「空白期間」を避けるため、議定書に基づく先進国の削減義務の強化と、削減義務を負わない米国や中国が参加する新枠組みの「2本立て方式」を目指す流れが強まる中、日本は温室効果ガス主要排出国の米中を含む一つの枠組みを求める従来の立場を変えていない。【4月9日 毎日】
******************************
最近積極的な取り組みを表明した国としては、イギリスがあります。
****英政府が温室ガス削減目標「25年までに50%減」*****
英国のヒューン・エネルギー気候変動相は17日、温室効果ガスを2025年までに90年比で50%削減する方針を表明した。
英国は労働党政権だった08年、50年までに80%削減する目標を設定。昨年、産業界の支持を受ける保守党のキャメロン政権に交代して対応が注目されていた。環境重視の立場をとる連立相手の自由民主党の主張を受け入れて、先進国の中でも高い目標を維持することを容認した。
景気後退に懸念を募らせる産業界に配慮して、14年の時点で他の欧州連合(EU)加盟国が削減目標に達していない場合は見直す方針も盛り込んだ。日本政府は20年までに90年比で25%削減するとの目標を掲げている。【5月18日 朝日】
****************************
【「原発復旧の先行きにめどがついていない状態では目標の達成は困難だ」】
日本は、2020年までに温室効果ガスを1990年比で25%削減するという目標を、鳩山首相時代に表明していますが、フクシマにともなう原発見直しの流れもあって、目標達成は非常に苦しい状況です。
****揺らぐ25%削減目標 温室効果ガス、原発頼れず達成困難*****
産業界反発、削除案も
東京電力福島第1原子力発電所事故を受け、2020年までに温室効果ガスを1990年比で25%削減するという日本の目標達成が困難となっている。温室効果ガス削減の切り札だった原発に頼れなくなったためだ。
与野党は25%削減目標の取り下げを含む見直し案を協議し始めており、鳩山由紀夫前首相が国際的に公約した目標は根本的な修正を迫られつつある。
「原発復旧の先行きにめどがついていない状態では目標の達成は困難だ」。日本経団連の米倉弘昌会長は6日の会見で、25%削減目標への懸念をあらわにした。
25%削減目標は09年9月に鳩山前首相が表明したものだ。菅直人首相も1日の参議院本会議で、この目標について「従来と変わりない」と語ったが、経済界の懸念と歩調を合わせるように目標の見直しが大きな政策課題となりつつある。
与野党は今国会で審議中の地球温暖化対策基本法案の見直し協議に着手。この中で、同法案に盛り込まれた25%削減を取り下げて新たな目標を法律成立後に定める案や、25%の数値を残しつつも将来の見直しを規定する案などを検討。温暖化対策税を導入する時期の明記をやめたり、排出量取引の導入を見合わせる案なども議論されている。
目標修正の直接的な原因は原発事故だ。政府が昨年6月にまとめたエネルギー基本計画は、30年までに14基以上の原発を増やし、電源に占める原発の割合を05年度実績の約30%から53%に引き上げるとしていた。
だが、原発事故でこうした計画の実現は事実上、不可能に近くなった。原発を増やせない分を火力で補った場合、30年の温室効果ガス排出量はエネルギー基本計画での想定に比べて1億6600万トン増える。25%削減の基準年である1990年と比べると、約13%も上積みされる計算だ。
それでも25%削減を目指すなら、火力ではなく再生可能エネルギーの拡大が不可欠となるが、太陽光発電などはコストが高く、国からよほど巨額の補助がないかぎり、経済界の負担はあまりにも大きくなる。
実際、産業界からは「このままでは日本での操業はカントリーリスクになる」(鉄鋼業界幹部)、「3~5年で日本から出ることになるだろう」(別の製造業幹部)などと反発する声が続出し、25%削減の目標自体を大幅に見直さざるを得ない状況となりつつある。
21世紀政策研究所の澤昭裕研究主幹も「原発と再生可能エネルギーの比率は地に足のついた現実的な議論が必要だ」とした上で、25%目標は「棚上げにすべきだ」と指摘している。
もっとも、11月末に南アフリカで開かれる国連気候変動枠組み条約第17回締約国会議(COP17)に向けた準備が始まっている国際交渉で、政府は日本など一部の先進国にのみ温室効果ガス排出量削減を義務づけた京都議定書の単純延長に反対の立場を崩していない。
そんな中で25%削減目標も引き下げれば、「日本として地球温暖化問題にどのように対処するのか示すことができなくなる」(与党幹部)との懸念もある。【6月7日 産経】
********************************
地球温暖化対策基本法案の見直し協議については、下記のように報じられています。
****温室ガス25%減修正も 衆院環境委員長が基本法3試案*****
政府の地球温暖化対策基本法案をめぐり、前環境相の小沢鋭仁・衆院環境委員長(民主)が、三つの修正試案をまとめていたことが7日、わかった。法案の目玉だった温室効果ガス削減の「25%目標」を削除する案もある。地球温暖化対策の国際交渉を乗り切るためには、目標修正に踏み込んででも同法の早期成立が不可欠だとして与野党に呼びかける。しかし、新たな政権の枠組みが模索されるなか、着地点は見えない。
温暖化対策の基本法案は、政府のほかにも自民、公明の両党も国会に提出している。2020年までに減らす温室効果ガスの目標について、政府案は1990年比25%減と明記。自民案は05年比15%減(90年比8%減)、公明案は90年比25%減だ。
小沢氏は各党と非公式に協議し、目標について修正試案をまとめた。(1)目標は残すが必要に応じて見直す(2)目標を削除し、基本計画の中で改めて設定する(3)基本法の前文に温暖化に関する科学的な知見をふまえる必要性を書き込んだ上で基本計画で目標を設定する、という3案を示した。【6月8日 朝日】
******************************
フクシマを処理しきれていない現状では原発の今後の方針も目処がたたず、温室効果ガス削減目標も後退せざるを得ない・・・というのが実態ですが、日本の省エネ技術などを生かせる場でもある温暖化の議論においても、日本の国際的存在感が更に薄くなることにもなり、残念なことです。