(6月2日 アフガニスタン南部、カンダハル州 8歳の少女と言うと、写真中央の子供ぐらいでしょうか。 イラク戦争でも子どもの死体に爆弾をしかけるといったことが行われたようですが(観ていませんが、映画「ハート・ロッカー」でもそんな場面があるとか)、生きた少女に爆弾をしかけるというのは・・・ 戦争と言うのはそういうものだと言ってしまえばそれまでですが “flickr”より By Canadian Army http://www.flickr.com/photos/canadianarmy/5828668329/ )
【病院を対象にしたテロ、8歳の少女を使った自爆テロ】
オバマ米大統領は2012年9月までにアフガニスタン駐留米軍3万3千人の撤退計画を表明しましたが、そのアフガニスタンでは、テロが頻発しており、治安改善の兆しは見えません。
撤退計画発表との関連は不明ですが、病院を対象にしたテロ、8歳の少女を使った自爆テロなど、これまでにない残忍な手法も気になるところです。
もっとも、いずれもタリバンは、そのようなことはしないと関与を否定しているようです。
ただ、もしそうなら、タリバン以外にこうした過激テロを行う組織が存在することになり、それはそれでアフガニスタンの今後の治安改善にとって問題となります。
****アフガニスタン:病院に自爆テロ…35人死亡****
アフガニスタン東部ロガル州のパキスタン国境に近いアズラ地区で25日、病院に乗り付けた四輪駆動車が自爆した。同州政府によると、患者や医師、見舞いに来た住民ら35人が死亡、約40人が負傷した。犠牲者の多くは女性や子供という。
武装勢力による自爆テロとみられるが、ロイター通信によると、旧支配勢力タリバンのムジャヒド報道官は「タリバンは病院を攻撃しない」と語り、犯行を否定した。カルザイ大統領は「(実行犯は)野蛮で無知なアフガニスタンの敵だ」と非難した。
オバマ米大統領は22日、アフガン駐留米軍3万3000人を来月から来年夏までに撤収させると発表したばかり。国内にはタリバン以外にもパキスタンや中央アジアなどから来た武装勢力が多数潜伏しているとみられ、治安回復は困難な情勢だ。【6月26日 毎日】
*******************************
****8歳少女利用し爆弾テロ アフガン かばんに忍ばせ爆破*****
アフガニスタン南部ウルズガン州で26日、8歳の少女が頼まれたかばんを警察に運んでいたところ、かばんが爆発し、少女は死亡した。アフガン内務省が同日、明らかにした。爆弾が仕掛けられたかばんは武装勢力によって渡され、少女が警察車両に近づいた際、遠隔装置で爆発したという。少女以外の死傷者はなかった。
女性の自爆テロや、頭から足元までを覆う女性の衣類ブルカを着た男性による自爆テロはたまにあるが、少女を使った自爆テロは極めて異例。アフガンでは5月、パキスタンから自爆テロ要員として勧誘された13歳以下の少年4人が確認されたばかり。
イスラム原理主義勢力タリバンは自爆テロに子供を使わないと主張しているが、実態は不明だ。
パキスタンでも8歳の少女が自爆テロの実行役として利用されかけたとして、同国治安当局が20日、少女を伴い会見した。この少女は警察に保護されたが、少女の主張を検証する方法がないことから、当局のやらせとの指摘も出ている。
一方、パキスタン北西部カイバル・パクトゥンクワ州デライスマイルカーン地区の警察署が25日、武装勢力に襲撃され警官12人が死亡したが、自爆テロを実行したのは夫婦だったことが明らかになった。パキスタンで女性の自爆テロ要員は珍しい。
ロイター通信によると、イスラム武装勢力「パキスタンのタリバン運動(TTP)」は「これまでとは違う戦法で攻撃を続ける」と語っている。【6月28日 産経】
****************************
【「アフガンはおぞましい内戦状態に陥る危険性に直面するだろう」】
一方、オバマ大統領の撤退計画発表については、次期大統領選挙を睨んで、現地の戦略より国内政治を優先させたものとの見方が強いことは、6月23日ブログ「アフガニスタン オバマ米大統領、来夏までに計3万3千人を撤収させる計画を発表」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20110623)で、また、米軍撤退後のアフガニスタン情勢の不安については、6月24日ブログ「イラク 圧殺される自由、改善しない電力、横行するわいろ アフガニスタンの今後は?」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20110624)でも取り上げたところです。
イギリス・デーリー・テレグラフ紙はこの撤退計画について、ベトナム戦争後の南ベトナムとの比較で、「アフガニスタンから逃げ出す欧米は世界を不安定化させる」とのピーター・オボーン氏の主張を紹介しています。
****孤立主義に回帰する恐れ*****
英保守系紙デーリー・テレグラフの政治解説者、ピーター・オボーン氏は「アフガニスタンから逃げ出す欧米は世界を不安定化させる」と題した24日付コラムで、米国が撤退により「世界の警察官」の役割を果たせなくなり、伝統的な孤立主義に回帰する恐れがあることに強い懸念を示した。
オボーン氏は、ニクソン大統領時代のベトナム化政策と、オバマ大統領のアフガン撤退計画を比較する。ベトナム化政策とは、南ベトナム軍を強化して米軍を南ベトナムから撤退させる計画で、オバマ大統領の撤退計画と確かに似ている。
ベトナム戦争では米兵6万人が命を落とし、イラクとアフガンでは計6千人が亡くなった。ベトナム戦争時、米国の財政赤字は現在の貨幣価値で270億ドル、政府債務残高は1・8兆ドルだったのに対し、オバマ政権は今、60倍超の財政赤字(1兆6600億ドル)と8倍近い政府債務残高(14兆ドル)に苛(さいな)まれている。
オボーン氏はその上で、アフガンから米軍が撤退すればタリバンが勢いを増し、「カルザイ大統領は国外逃亡に追い込まれ、アフガンはおぞましい内戦状態に陥る危険性に直面するだろう」と、ベトナム同様の一層の混乱を予測する。
ただ、オボーン氏は「ベトナム撤退で米国の世紀は終わるといわれた。しかし米国は逆に地球規模の成功を収めた」と解説。ソ連を牽制するとともにベトナム戦争を終結に向かわせた電撃的な「ニクソン訪中」にも言及する。
オバマ大統領にそのような秘策は見当たらないが、オボーン氏は「われわれは新しい不確実な世界に向かっている。オバマ大統領は(孤立主義に回帰するのではなく)米国が世界で果たす役割を再定義する必要がある」と結んでいる。【6月27日 産経】
*****************************
【「状況は危機に向かっている」】
アフガニスタンの今後にとってアメリカの戦略が決定的に重要なのは言うまでもないことですが、それ以上に重要で、かつ、不安視されているのが現地カルザイ政権の統治能力です。
****下院62人 当選者入れ替え カルザイ氏設置の特別法廷****
アフガニスタンが、昨年9月に行われた下院選の結果をめぐり、再び混乱に陥っている。カルザイ大統領が昨年末、選挙の不正審査のため最高裁に設置した特別法廷が23日、下院249議席の約4分の1にあたる62人の当選を無効とし、新たな当選者を発表したため。
議会は大統領だけでなく司法との対立をも強めており、7月の米軍撤退開始を前に、国内の混乱は「危機的状況に発展しつつある」(政治アナリスト)との声も出ている。
特別法廷は、南部ザブル州や西部バドギス州で全当選者の入れ替えを決定し、他の州で一部議員の当選を無効とした。全当選者が少数派ハザラ人で、カルザイ氏が最も不満としていたとされる南東部ガズニ州は、複数のパシュトゥン人の当選が新たに決まった。
この判断について特別法廷は「票の再審査の結果」としているが、選挙管理委員会(IEC)がすでに不正と認定した票も含まれていたとされ、再審査の過程は不透明だ。選管は26日に声明を出し、「IEC以外の機関が選挙運営に関わることは憲法違反」とし、特別法廷の判断は認められないとの立場を鮮明にした。
昨年の下院選をめぐっては、多くの不正投票などが指摘され、IECは投票総数のほぼ4分の1にあたる約130万票を無効とし24人の当選を取り消した。12月に全議席が確定したが、カルザイ氏は特別法廷を設置して、不正票の再審査を指示。議会は「議会の反カルザイ勢力の拡大につながる選挙結果を覆そうとしている」と強く反発した。
議会は1月に開会したが、特別法廷の判断を受け、議会とカルザイ氏側の対立は再燃。議会はカルザイ氏に特別法廷の設置を助言したとして最高裁判事5人に不信任を突きつけ、カルザイ氏寄りの検事総長にも強く反発している。
新たに当選者になった候補者が政府に早期入れ替えを迫る一方、落選議員は決定を受け入れず居座る覚悟だ。抗議デモなども想定され、議会機能がまひする可能性がある。
政治アナリストのワヒド・ムジダ氏は、「状況は危機に向かっている」と述べ、事態の展開に危機感を示した。【6月28日 産経】
****************************
“投票総数のほぼ4分の1にあたる約130万票が無効”という選挙自体も想像を絶するものがありますが、その結果を更に特別法廷で大幅に修正しようというカルザイ大統領のやり様も理解に苦しむものがあります。
汚職が蔓延していると言われるカルザイ政権ですが、選挙結果をめぐる政争で議会が機能まひに陥るようでは、米軍撤退後に崩壊した南べトナム政権を彷彿とさせます。