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(5月26日 アビエイ地区でのPKO 装甲車はザンビア部隊 “”より By United Nations Photo http://www.flickr.com/photos/un_photo/5805263974/ )
【アビエイは炎に包まれ、北部の武装兵士が家や店への略奪】
今年1月に実施された住民投票で7月に南部が独立することが決定したスーダンでは、北部政府軍が5月21日、石油資源が豊富で南北間の係争地であるアビエイ地区に進攻し、南部のスーダン人民解放軍(SPLA)との激しい戦闘の末、同地を掌握しました。南部の自治政府は「侵略だ」と強く反発、国連安全保障理事会も22日、北部政府軍の即時撤退を求める声明を出していました。
****スーダンに再び内戦の危機****
独立を勝ち取ったはずのスーダン南部に、石油資源が豊富なアビエイの領有権を狙う北軍が攻め込んだ
2月に独立が決まったばかりの南スーダンが、内戦に逆戻りする危機に瀕している。南北スーダンが領有権を争っている油田地帯の町アビエイに先週、北部政府軍が侵攻。これを南スーダンが「戦争行為」だと非難しているからだ。国連職員によれば、アビエイは炎に包まれ、北部の武装兵士が家や店への略奪を行っているという。バシル大統領が送り込んだ戦車や部隊から逃れるため、住民2万人のほとんどは避難している。(中略)
200万人の死者を出した22年間の内戦が05年の南北和平合意で終わった後も、スーダンでは暴力行為が続いてきた。スーダン政府軍による今回の侵攻はその最新の事例に過ぎない。
専門家や活動家たちは、アビエイがスーダン内戦の火ダネになると警告してきた。映画俳優でスーダン問題の活動家であるジョージ・クルーニーと共に、軍の動きを監視する「衛星見張り番プロジェクト」を立ち上げた人道支援NGO「イナフ・プロジェクト」の共同設立者ジョン・プレンダーガストは「衛星と地上の情報から南北の双方の部隊が増強され、北部政府軍が戦車や空の軍備を集めていることは知っていた」と言う。「戦争に向けたすべての準備が整っていた」
「違法な武装勢力を掃討中」
アメリカやほかの国々はバシルと北部政府に「事の重大さについて警告すべき」時だと、ブレンダーガストは言う。彼によれば、最近のスーダンは「(西部の)ダルフールの状況は悪化し、アビエイは交戦地域になり、南スーダンの一部地域でも北部が支援する武装勢力による戦闘が起きている」状態だ。
1月の南部独立を問う住民投票以降、南北は小競り合いを繰り返してきた。まず今月初め、治安維持活動に当たっていた国連職員4人がアベイエ近郊で何者かに襲われ銃殺された。そして先週、北部政府軍の兵士200人を先導していた国連の車列が南部の武装勢力によって攻撃された。国連は「犯罪行為」だとして非難。バシルはその後のアビエイ占領は奇襲攻撃に対する報復だと主張している。スーダン政府の大統領府長官アミン・ハッサン・オマルは「スーダン政府軍はアビエイで違法な武装勢力を掃討している」と述べた。
一方、南部は事態の悪化の責任は自分たちにはない、という立場だ。スーダン人民解放軍(SPLA)のスポークスマン、フィリップ・アギュイアー大佐は「宣戦布告したのはわれわれでなく、(北部政府の与党)国民会議と政府軍だ」と主張。南部自治政府のバルナバ・マリアル・ベンジャミン情報相は、今回の占領は何千人もの命を危険にさらす「違法な占領」だと語っている。
南部と北部を両天秤にかけるアメリカ
05年の和平合意に重要な役割を果たしたアメリカとイギリスも北部によるアビエイ占領を非難し、部隊の撤退するよう求めた。
アビエイは南部の主流民族であるディンカの多く暮らす地域だが、北部を支持するアラブ系遊牧部族ミッセリアも居住している。ミッセリアの選挙権問題で北部と南部が決裂し、アビエイの帰属を決めるはずの住民投票は行われなかった。
アメリカ政府は先週起こった南部による国連の車列への攻撃を「遺憾に思う」と同時に、北部による「不相応で無責任」な「侵攻作戦を非難」した。潘基文(バン・キムン)国連事務総長は戦闘終結を求めたが、北部はアビエイを占領し続けると主張。国連の要求を今のところ聞き入れていない。
プレンダーガストによれば、一連の侵攻と奇襲攻撃を一緒くたにするアメリカの反応は「平等の拡大解釈」だ
「北部政府の過剰な軍事力行使に警告すべき時だ」と、彼は言う。「リビアやイラン、シリアでは許されない虐殺行為が、スーダンではなぜ問題にされないのか」【5月25日 トリスタン・マコネル Newsweek】
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【「非常に重要な最初のステップだ」】
このアビエイ地区への北部政府軍侵攻は、南アフリカのムベキ元大統領を中心とするアフリカ連合(AU)の仲介により、エチオピア軍の平和維持活動(PKO)部隊を受け入れて非武装化することで、一応の打開は図られたようです。
****スーダン:境界油田を非武装化 PKO受け入れ…南北合意****
南アフリカのムベキ元大統領は20日、スーダンの南北政府担当者が、双方の境界に位置する油田地帯のアビエイ地区を非武装地帯化し、エチオピア軍の平和維持活動(PKO)部隊を受け入れることで正式に合意、文書に署名したと記者団に明らかにした。AP通信が伝えた。スーダンは来月9日にも南部が分離独立する予定で、油田の利権をめぐり双方の衝突が続いていた。
同地区は北部中央政府軍が5月後半に武力侵攻し、制圧。多数の避難民が出た。仲介にあたるアフリカ連合(AU)は今月13日、北部のバシル大統領と南部自治政府のキール大統領が同地区の非武装化で原則合意したと伝えたが、その後も一部で戦闘が続いていた。
AP通信によると、今回の合意に基づき、国連の承認を得てエチオピア軍約4000人が、同地区に展開する見通し。
ライス米国連大使は20日、南北の合意に歓迎の意を表明。近く国連安全保障理事会に同地区へのPKO部隊派遣に関する決議案を配布する考えを明らかにした。また、米国務省のヌーランド報道官も同日、「非常に重要な最初のステップだ」と述べ、合意が速やかに実行に移され、同地区の安全や人権を巡る状況が改善に向かうよう期待した。
アビエイ地区は05年まで20年以上続いた南北内戦の激戦地の一つ。今年1月、南部の分離独立を決めた住民投票と同時に、同地区が南北どちらに帰属するかを問う住民投票を実施予定だったが、有権者の範囲が決まらず延期されたままになっている。【6月21日 毎日】
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今回合意で、アビエイを占拠している北部政府軍は近く撤退することになります。
とりあえずの収拾は図られましたが、アビエイ地区の帰属をどうするかという問題自体は何も進展していません。
これからも南北間の“火薬庫”であることには変わりありません。
合意は13日になされましたが、14日には北部政府軍が南部との境界、南コルドファン州での空爆を強化しているとの報道がありました。同地域では、北部政府軍部隊と南部のSPLA部隊の衝突が伝えられています。
****スーダン、北部政府軍が南部空爆を激化****
国連が発表したところによると、スーダンの北部中央政府は14日、南部との境にある南コルドファン州での空爆を激化させた。一般市民が甚大な被害を受けたほか、緊急人道支援を行う人々も危険にさらされている。
国連スーダン派遣団の報道官はAFP通信に対し、「空爆作戦を非常に懸念している」と話した。同報道官によると、スーダン政府軍による激しい空爆はここ1週間続いており、14日は午前10時半に11個もの爆弾が投下された。恐らく飛行場を狙ったものだという。
スーダンのオマル・ハッサン・アハメド・バシル大統領と、南部自治政府のサルバ・キール大統領は13日、南北間の係争地アビエイ(Abyei)から北部軍を撤退させることで暫定合意したばかり。スーダン南部は来月に分離独立することになっている。【6月15日 AFP】
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【南スーダンPKO、日本政府関係者は「かなり難しい」】
緊張が続くなかで、7月9日の南部独立及びその後の安定化を目指して、国連は現在の国連スーダン派遣団(UNMIS)を国連南スーダン派遣団(UNMISS)に改編して対応する予定ですが、このPKO参加について日本にも打診があったようです。
****陸自部隊の派遣打診 南部スーダンPKO、国連****
スーダン南部が7月に分離独立し新国家を樹立するのを受け、再編成される国連平和維持活動(PKO)部隊に関して、国連が日本政府に対し、陸上自衛隊施設部隊の派遣ができないか非公式に打診していることが18日、分かった。国連外交筋が明らかにした。
しかし、東日本大震災の復旧・復興への対応や、派遣先のスーダン南部の治安状況が十分確保されていないことなどから、日本政府関係者は「かなり難しい」と否定的な考えを示している。
スーダン南部の独立に伴い、現在の国連スーダン派遣団(UNMIS)は、国連南スーダン派遣団(UNMISS)に改編。潘基文事務総長の提案では、市民保護を担う部隊やインフラ整備のための施設部隊など約7千人に、警察約900人を加えた8千人規模。
1月の住民投票で南部の分離独立が決まって以降、国連PKO局が日本など広範囲の加盟国にUNMISSへの貢献ができないか打診してきた。【6月19日 共同】
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日本政府は去年、国連から、スーダンにヘリコプター部隊を派遣してほしいという要請を受けたものの、自衛隊側の運用上の支援態勢が十分に整わないなどとして、派遣を見送っています。
“東日本大震災の復旧・復興への対応”はわかりますが、“スーダン南部の治安状況”云々はどうでしょうか。
もちろん懸念の主旨は理解できますが、治安状況に問題があるからこそPKOが求められている訳で、そこにこだわる限り何もできません。
日本政府は18日、国連安全保障理事国入りを目指して、ドイツ、インド、ブラジルと組んだ「G4」(4カ国グループ)の枠組みで準備してきた安保理改革案の国連総会提出を断念する方向で最終調整に入ったことが報じられています。
いささか乱暴な言い方ではありますが、PKOにも参加できない国が安保理理事国としてどういう活動をしようというのだろうか?・・・という疑念を感じます。