孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

サウジアラビア  女性の自動車運転解禁を求める動き クリントン米国務長官も支援

2011-06-22 21:27:42 | 世相

(前月にサウジアラビア東部州で車を運転したとして逮捕されたマナル・シャリフさん(32) “flickr”より By sousapinto  http://www.flickr.com/photos/31566015@N07/5752697856/ )

女性による車の運転や近親者による付き添いなしでの外出は禁止
イスラム教の聖地メッカも存在するサウジアラビアは、イスラム教ワッハーブ派が国教とされています。
ワッハーブ派はイスラム教スンニ派のひとつですが、その厳格さで、過激なイスラム原理主義の母体となっていることでも知られています。

そうした宗教事情から、女性の権利も大きく制約されています。
“サウディアラビアはイスラーム教の中でももっとも厳格なワッハーブ派のシャリーアを国法としている。そのため女性は公的な場面から完全に排除されている。女性による車の運転や近親者による付き添いなしでの外出は禁止されている。また外出時には必ずヒジャーブを身に着けねばならない。遺産相続も男性の半分であり、公的な権限を行使するためには父親、夫、兄弟などの男性の代理人を介さねばならない。一夫多妻制が認められており、安易な離婚や家庭内暴力も問題となっている。”【ウィキペディア】

もっとも、ときおりメディアで話題になる宗教指導者の見解と民衆の生活には乖離もうまれているとの指摘もあります。
“近年では宗教指導者たちが示す宗教的見解と民衆の生活の乖離が進み、国民が宗教的な指導に従わなくなってきており、宗教指導者がハラーム(禁忌)であるとファトワー(宗教見解)を出した物の多くを民衆が利用していることが珍しくなくなった。代表的な物としてポケモン、バレンタインデー、クリスマスなどがある。
民衆が宗教指導者の言うことを聞かなくなった結果、宗教指導者が今まで以上に原理主義的で過激な発言を繰り返したり、宗教警察である勧善懲悪委員会による取り締まりを過激化させる傾向にある。これによってとんでもない理由での刑罰や死刑が科されることがある。
このような過激な発言がニュースで配信されたりしてネット上で話題になることがあるが、発言と実情がかけ離れていることが多い。
2008年には過激派宗教指導者二人が国王によって解任されるなど、過激派宗教指導者はサウジアラビアでも排除され始めている。”【ウィキペディア】

ただ、女性の自動車運転は依然として禁止されています。
“サウジアラビアは世界で唯一、女性が自動車を運転することを法律で禁止している国である。
元々は社会通念上は運転しないという程度の物で都市部では交通警察ではなく勧善懲悪委員会が取り締まっているだけで地方へ行けば女性の運転は珍しいことではなかったが、1990年代から都市部などで運転する女性が急増したことから禁止法が制定された。
この禁止法に対して女性団体が国王に直訴したが、国王からは我慢するようにとの返答がだされ法改正には至らなかった。(サウジアラビアは絶対君主制であるため国王が法律を変えるとの勅令を出せば法律が変わる。)” 【ウィキペディア】

【「女性が運転して何が悪いの?」】
こうした状況に対し、インターネットを通じて女性による「集団運転」を呼び掛ける運動が広がっています。

****サウジアラビア:「女性よ、運転を」ネット通じ運動広がる****
厳格なイスラム社会のサウジアラビアで、女性の車の運転が禁止されていることに対し、女性による「集団運転」を呼び掛ける運動がインターネットの交流サイト「フェイスブック」などで広がっている。
「女性が運転して何が悪いの?」。会社員のマナル・シャリフさん(32)はこう訴える。シャリフさんの動画はネット上で延べ10万人以上が閲覧した。

サウジでは「見知らぬ男性との出会いが増え、家庭崩壊につながる」との保守層の意見から女性の運転が禁じられているが、解禁を求める声は多い。
米国で運転免許を取得したシャリフさんは「運転手を雇えば、収入の3分の2が消える」と主張し、集団運転実現に向けたPRのため20日にハンドルを握ったが、直後に宗教警察に逮捕された。ネット上には釈放を求めるサイトが開設され、波紋が広がっており、当局は警戒を強めている。【5月31日 毎日】
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【「運転する女性はひもで叩こう」】
一方、女性の抗議行動に反発する動きもあって、「運転する女性はひもで叩こう」といういささか刺激的な呼びかけもなされているとか。

****運転する女性はひもで叩こう」、フェイスブックの呼び掛けが物議 サウジ****
イスラム教の中でも超保守的とされるサウジアラビアで、女性の自動車運転を禁止する法律に抗議するデモが6月に計画されているが、フェイスブック上では前週、このデモで車を運転しようとしている女性たちに制裁を加えるよう男性たちに呼び掛けるページが立ち上がり、物議を醸している。

同国では先ごろ、首都リヤド北東のアルラスで車を運転したとして、マナル・シャリフさん(37)が逮捕される事件があった。デモはこれに抗議するもので、6月17日に計画されている。活動家らはシャリフさんの即時釈放を求めている。

そんな中、フェイスブックには「イカール・キャンペーン: 6月17日は女性に自動車運転をさせない日」と銘打ったページが登場した。イカールとは、湾岸諸国の男性たちが頭にかぶる布を留める縄状の輪のこと。ページは車を運転した女性をイカールで叩こうと呼びかけ、これまでに6000人を超える読者から「いいね!」が寄せられている。
ある男性は、若者たちにイカールを配って「賛同」させることを提案。別の男性は「男たちがイカールを手に入れようと殺到しているので値段が上がっている」と冗談めいた書き込みをしている。

このイカール・キャンペーンをめぐって、サウジ国内各紙で激しい議論が巻き起こっている。有名作家のアブド・カル氏は地元紙オカズに、女性の自動車運転を禁止する法律を非難するコメントを発表した。キャンペーンについては「笑い飛ばせばいいのやら、悲しめばいいのやら」と当惑した反応だった。

一方で、同じくフェイスブックには「私たちはみんな マナル・シャリフ: サウジ女性の権利のために連帯しよう」というページも出現し、こちらも人気がうなぎ上りで、1日あたりの「いいね!」は1万9000件を超えるまでになっている。
また、湾岸諸国の知識人たちはシャリフさんの釈放を請願する署名を始めており、これまでに300人筆以上が集まっている。【5月26日 AFP】
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【「女性の運転を認める国王令が出されるまで、抗議行動を続ける」】
自動車運転で逮捕されたマナル・シャリフさんを支持する抗議行動は、6月17日に行われました。
****女性の運転認めて」、サウジアラビアで抗議行動*****
サウジアラビアで17日、女性の自動車運転を禁止するファトワ(宗教令)への抗議行動が行われた。
抗議行動は、前月に東部州で車を運転したとして活動家のマナル・シャリフさん(32)が逮捕される事件が発端となり、フェイスブックやツイッター上で参加が広く呼び掛けられたもので、多数の女性たちが参加を表明した。
同国ではデモ行進が禁止されていることから、運転免許証を持っている女性が車を運転するという、個人レベルの抗議行動が呼び掛けられた。

ツイッターには同日、コラムニストのTawfiq Alsaif氏が次のような書き込みを行った。「妻が運転する車で、今、スーパーマーケットから戻ってきたところだよ」
別の女性は、真夜中に車もまばらなメインストリートを運転し、スーパーマーケットの駐車場に停めるまでの様子を撮影した動画を投稿した。「われわれ女性が求めているのは、運転手に頼らなくても自分たちで用を足せるようになること。社会がわれわれを受け入れてくれることと信じています」と、女性は語っている。
 
抗議行動を呼びかけるフェイスブックのページ「Women2Drive」は、「女性の運転を認める国王令が出されるまで、抗議行動を続ける」と宣言している。
同国には女性の運転を禁止する法律はないが、内務省は、ファトワに基づき、女性の運転を禁止する規則を設けている。【6月20日 AFP】
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【「勇敢な行動で権利を要求したことに心を動かされた」】
ここにきて、運転許可を求める女性たちにとっては心強い援軍が現れました。
クリントン米国務長官が、この問題でサウジアラビア外相と協議したそうです。

****米国務長官:サウジ女性への支持を表明 運転禁止問題で****
クリントン米国務長官は21日、国務省で記者会見し、サウジアラビアの複数の女性が17日に女性の運転禁止解除を訴えて運転を強行したことについて「勇敢な行動で権利を要求したことに心を動かされた。彼女らを支持する」と表明した。
クリントン長官は、この問題について「サウジ政府の最高レベルで提起した」と述べ、サウジ外相と協議したことを明らかにした。さらに運転の自由は「雇用機会にもつながる」と強調し、禁止解除を求めた。【6月22日 毎日】
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クリントン米国務長官による後押しの結果が注目されますが、サウジアラビア側としてはアメリカの外圧に屈したイメージは避けたいところかも。
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