孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アルゼンチン  外資導入でシェールオイル生産拡大へ  27日の議会選挙情勢

2013-10-08 21:29:14 | ラテンアメリカ

(9月27日 支持者の歓迎を受けるフェルナンデス大統領(写真左の女性) お元気そうですが・・・ “flickr”より By Fotografía Comunicación... http://www.flickr.com/photos/76032217@N02/9971974413/in/photolist-gcbYzk-gce4Qh-gcbo74-gcbEe5-gcbeQy-gcbhEc-gcbN5H-gcbKa6-gcbT2s-gcc7BA-gc5Kwm-gc5tW1-gcbE44-gcc1p5-fN91Zt-fNqABj-fN92ii-g63PEa-gpywwW-fNtHF1-fNc98n-fNc99g-fNdLTK-fNtJEs-fNtJUU-fNc8bT-fM5T7w-fYmwTD-fYm4DE-fYm3eM-fYm1QW-fYkYLy-fYm3F7-fYmvvi-fKDhXp-fKVTs1-gcbzhm-fLT2tc-fM78MS-fLKwzM-fLMsJ4-gnZM7h-gsadrd-gn9mHq-gneU7i-gn9LLs-gneVGH-gn9jxd-gn9YUx-fP9uVj-fYhP21)

シェール革命
水圧破砕技術で頁岩(シェール)層から石油・天然ガスを取り出すシェールガス、シェールオイルによって、世界の資源・エネルギー事情が大きく変わりつつあるという“シェール革命”とも呼ばれる現象については、これまでも何回か取り上げてきました。

シェールガス・オイルの生産を拡大するアメリカは、石油・天然ガスの生産量で今年のうちにも世界最大の生産国になる見込みです。

****米、石油・天然ガス生産量で世界一に 2013年見通し****
米エネルギー省エネルギー情報局(EIA)は4日、米国は今年、石油・天然ガスの生産量でロシアとサウジアラビアを抜き、世界最大の生産国になる可能性があるとの見通しを明らかにした。

米国は石油・天然ガスを合わせた生産量でロシアに匹敵していた一方、原油生産量では長期にわたって世界一の座を維持しているサウジアラビアには後れを取ってきた。

しかし、水圧破砕(ハイドロリック・フラクチャリング、フラッキングとも)技術で頁岩(けつがん、シェール)層からの生産量が急増。2013年には原油生産量でサウジアラビアも上回り、天然ガスと原油両方の生産量で世界最大になる可能性があるという。サウジアラビアの天然ガス生産量は比較的少ない。

EIAによると、米国の石油生産量は過去5年間で大幅に増えた。これは、さまざまな議論も呼んできた水初破砕法による採掘が、テキサス州とノースダコタ州で急増したためだ。

一方、同じ技術によって、ペンシルベニア州をはじめとする米東部で天然ガスの生産量が大きく増加している。【10月5日 AFP】
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アメリカにおける“シェール革命”は、アメリカの原油における中東依存度を減らすことになり、これまで中東の安定を重視してきた世界戦略にも影響することになります。

原発稼働停止で天然ガスへの依存が高まっている日本にとっても、安価な天然ガス調達は大きな影響があります。
アメリカやカナダからの直接的なシェールガス輸入の話も動き始めています。
また、アメリカにおける“シェール革命”によって競合する石炭価格が低下し、欧州でロシア産天然ガス需要が減少、危機感を強めるロシアが日本市場への関心を高めている・・・等々の話もあります。

夢物語ではなく既に実現へ向けて歩みを進めている
今日はそうした“シェール革命”のひとつ、南米アルゼンチンの話です。
全く知りませんでしたが、アルゼンチンは世界第3位のシェールオイル生産国だそうです。
また、シェールガス埋蔵量でも中国に次いで世界第2位とか。

****アルゼンチン、シェールオイルでエネルギー自給自足と輸入依存脱却へ****
アルゼンチンは非在来型資源のシェールオイルへの大型投資によりエネルギーの自給自足を実現し、毎年多額の経済的負担を強いられている輸入への依存から脱却することを目指している。

アルゼンチンはシェールオイル開発のパイオニア。米国の統計によればアルゼンチンのシェールオイル生産量は中国と米国に次ぐ世界3位。

アルゼンチンの国営石油会社YPFは2年前、パタゴニアのロマララタ鉱区で生産を開始した。ロマララタは豊かなシェール層が存在するバカムエルタ(Vaca Muerta、「死んだ雌牛」の意)鉱区の一部。

シェールオイルの商業生産には、シェールガスと同様、特殊な掘削技術である水圧破砕法(フラッキング)や水平掘削法が必要となる。

YPFはシェールオイル関連のノウハウを生かしてロマララタ鉱区とバカムエルタ鉱区で年間200前後の抗井を稼働させている。同社は今後10年で150億ドル(約1兆4600億円)を投じ、抗井の数を1500~2000に増やす計画だ。

YPFの非在来型石油部門の責任者、パブロ・ユリアーノ氏は「2000坑の鉱区が2か所あれば国内の石油需要を100%賄うことができ、残りを輸出に回すこともできる」と話した。

アルゼンチンの11年の石油輸入額は110億ドル(約1兆1000億円)を超える。13年は130億ドル(約1兆3000億円)に増える見込みだ。
アルゼンチンにとってバカムエルタの資源開発はエネルギー部門の立て直しと貿易黒字達成のための大きな希望で、単なる夢物語ではなく既に実現へ向けて歩みを進めている。

YPFの7月の非在来型石油の生産は日量8000バレル前後だった。今年末までに日量1万7000バレル、14年は同3万8000バレル、15年は6万バレルに拡大する計画だ。【10月6日 AFP】
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アルゼンチンはかつてデフォルトを経験し、海外からの資金調達ができずにインフラ更新が進まない・・・など、いまだにその後遺症が残っています。

“アルゼンチンは2001年に約千億ドルの史上最大規模の国債の債務不履行(デフォルト)を宣言。その際、債務再編に応じなかった米ヘッジファンドなど一部債権者といまだに裁判で争っている。仮にアルゼンチンが敗訴すれば、再編済みの債務約240億ドルが再びデフォルトとなる可能性がある。”【8月16日 朝日】

最近の経済情勢については、2012年12月12日ブログ「アルゼンチン 景気悪化とインフレーション インフレ率操作の疑惑も」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20121212)で、景気の失速とインフレの進行を取り上げました。

しかし、景気の方は、2012年第2四半期を底にして、回復傾向にあります。
特に、2013年第2四半期の実質GDP成長率は前年比で8.3%を達成し、前期の3.0%から回復を加速しています。
インフレの方は収まっておらず、公式発表では10%程度とされていますが、民間調査では25%ほどとも言われています。

経済政策的には保護主義的傾向がかねてより指摘されていましたが、前出のシェールオイル開発を進めるうえで、外資導入を進める姿勢転換がみられるそうです。

****焦点:アルゼンチン、シェールガス・オイル開発めぐり保護主義を転換****
アルゼンチンはここ数年、愛国主義的かつ保護主義的な傾向を見せているが、国内のエネルギー分野を活性化し、減少する生産を引き上げるため、自国のバカムエルタ・シェールオイル・ガス田をめぐり海外からの投資を求めている。

国内最大手のエネルギー企業YPFを国有化してから1年後。アルゼンチン政府は規制を緩和し、米石油大手シェブロンと12億4000万ドルの生産契約を締結した。

2002年のデフォルト(債務不履行)以降、国際資本市場への復帰を果たせておらず、YPF国有化に伴うスペイン石油大手レプソルへの補償も済んでいないアルゼンチンにとって、今回の契約はエネルギー確保の面で重要で、投資呼び込みに向けた転換点になるとみられている。

一方で、10月にフェルナンデス大統領の行方を占う国政選挙を控え、政府の路線転換は政治的リスクもはらんでいる。反対勢力は大統領が米石油大手に利権を与え過ぎだとして、姿勢の振れを非難している。

国内の石油コンサルタントは自由に話すために匿名を希望し、「アルゼンチンはシェールガス開発を進めなくてはならない。不幸なことに、国の信用がないため、多くの利権を与える必要があった」と解説する。

シェブロンは今月16日、西半球で最大級のエネルギー埋蔵量を持つとみられているバカムエルタの開発をめぐり、国有化されたYPF(国営石油会社)と契約を結んだ。

アルゼンチン政府は契約に当たり、外為規制を緩和。フェルナンデス大統領は自国経済における国家の役割を拡大すると約束し、2011年に再選された経緯があるものの、政府はシェブロンとの契約が発表される直前になって、5年間にわたり少なくとも10億ドルを投資している石油企業に対し、アルゼンチン内で生産した天然ガスなどの最大20%を無税で輸出することを認める布告を出した。

また、バカムエルタを開発し、そこから輸出する企業に対し、利益をアルゼンチン国外に外貨として保持することも認められる。その他の合弁には認められていない利点だ。(後略)【7月24日 ロイター】
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“アルゼンチンの貿易赤字はエネルギー分野だけで過去12カ月間で45億ドルとなっており、消費する天然ガスの約4分の1を現在輸入に頼っている”【同上】という状況で、従来の“愛国主義的かつ保護主義的”な政策を転換しても、外資導入によってシェールオイル開発を進めたい意向のようです。

予備選挙 首都圏で批判票
上記記事にもるように、アルゼンチンでは10月27日に、上院の三分の一、下院の半分を改選する国会議員選挙がおこなわれます。

本選挙に先立ち、8月11日に予備選挙が行われました。
政党あるいは政党連合はそれぞれの候補のリストを発表し、予備選挙で選挙区の有効投票の1.5%以上を獲得しなければ、本選挙に立候補することはできない仕組みになっています。

8月の予備選挙では、フェルナンデス大統領の与党「勝利のための戦線」が、上院、下院ともに26~27%を獲得して第1勢力となっています。
ただ、最大選挙区の首都圏ブエノスアイレス州では、野党候補に後れを取っており、フェルナンデス大統領の政権運営にたいする批判票とも論評されています。【「ラテンアメリカの政治経済」8月12日 http://ameblo.jp/guevaristajapones/entry-11592313378.htmlより】

****反大統領派が首都で大規模デモ=「経済失策」と100万人―アルゼンチン****
南米アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで18日、フェルナンデス大統領の経済政策やメディア改革に抗議する大規模デモが行われた。野党政治家も加わり、主催者によると参加者は100万人規模に上ったという。

世界有数のインフレに悩まされるアルゼンチンでは、年率約25%の物価上昇が国民生活を圧迫しており、参加者はフェルナンデス大統領の経済政策への対応が「傲慢(ごうまん)だ」と批判した。【4月19日 時事】
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硬膜下血腫
そのフェルナンデス大統領ですが、思わぬ健康上の問題が表面化しています。

****アルゼンチン大統領、脳内出血で1カ月休養へ****
アルゼンチンのフェルナンデス大統領(60)が5日、ブエノスアイレスの病院で硬膜下血腫と診断され、1カ月間の休養を言い渡された。

フェルナンデス大統領の報道官は同日、大統領が一切の活動を休止すると発表した。今月27日の議会選を前に、選挙戦の支援活動からも退くことになる。
同国の憲法は大統領不在の場合に副大統領が任務を代行すると定めているが、今回これが適用されるかどうかは明らかでない。

硬膜下血腫は高齢者が頭部に外傷を負った後などに、脳の表面に血液がたまって起きる。フェルナンデス大統領は今年8月に頭を打つけがをした。直後の検査では異常なしとの結果が出ていた。

大統領は昨年1月に甲状腺がんと診断されて切除手術を受けたが、直後にがんでなかったことが判明し、診断は取り消された。【10月7日 CNN】
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どういう事情で内出血を起こすほど頭を打ったのか・・・そのあたりは知りませんが、今日8日にも手術が行われると発表されています。

“治安悪化に加え、景気低迷や高インフレといった経済失政で与党の支持率は低迷。野党側はフェルナンデス氏の健康不安説で揺さぶるなど、攻勢を強めている。”【10月8日 時事】
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