(パリのシェイクスピア・アンド・カンパニー書店。“本の販売だけでなく、1万冊の蔵書を持つ英語文学専門の図書室も併設している(閲覧のみ)。この書店はまた無一文の若い書き手に宿を貸すことで知られており、「タンブル・ウィード」の愛称で呼ばれるこれらの若者は毎日数時間、店の手伝いをすることで食い扶持を得ている。”【ウィキペディア】
写真は“flickr”より By Ed Hagelstein http://www.flickr.com/photos/17890903@N03/5058238186/in/photolist-8GYMZd-9W53bg-8rtGu3-cxwpud-cxwmUC-cxwkRs-cxwjZm-cxws3L-cxwo8h-cxwqH5-8GPhb4-8ThCT6-8iqRZj-fbzZWA-9ieXeo-czji8E-8GYPyG-fM92Bc-8QwqyD-9UPUF3-8b1VX8-8b1VRt-9uE1bf-f3c5F4-9rNDfr-akAqgg-dWg6Pp-fNSQSU-eHZthT-aCBbbr-a8RNch-a8NWAP-c5L5bo-azuCwJ-8FkmrW-dUdZGz-bU4TGt-g1c1n4-cEhckf-g1bX9k-cEhcgs-g1bELc-g1bMQd-g1bHkm-g1bJYm-g1bC6T-g1bw3j-g1bZFe-8xLR2L-adhgxk-cyjFZQ )
【「少なくとも週に1日は家族と一緒に過ごせるということは非常に重要だ」】
ヨーロッパの多くの国ではキリスト教の安息日の伝統もあって、日曜日は勤務・営業を法律で規制している国が多いようです。
宗教的な理由だけでなく、労働者の権利保護、家庭生活優先、あるいは短時間に集中して営業することでコストを減らしたい営業サイドの思惑なども絡んでいます。
フランスもそうした日曜営業が禁止されている国のひとつですが、最近では見直しの声も上がっているようです。
****日曜はダメ?日曜営業解禁に割れる仏世論****
フランスを訪れる外国人が頭をかしげることの一つが、法律で小売業などの日曜営業が禁じられているため、日曜日に買い物ができないことだ。この法律に今、当のフランス国民も疑問を投げ掛け始めている。
フランスの法律では、企業は従業員に午後9時から翌朝午前6時まで勤務するよう依頼することはできるが、厳しい条件を満たす必要があり、あくまで例外的な場合に限られる。
小売業者は観光地や人口密集地に立地していれば日曜日も営業することはできるが、厳しい条件がある。
日曜日に精肉店などの食料品店は午後1時までしか営業できない。
■労働者側が日曜出勤を望む時代
フランスでここ数週間、飲食店以外の店舗に深夜と日曜の営業を原則禁じる現行法を支持する判決が相次いだことから、この問題が議論を呼んでいる。
日曜にも働きたいという労働者たち、経済的に困難な状況にある今、現行法は古臭く時代に合っていないと怒っている。
緊縮財政と経済成長の両立を約束したフランス社会党政権は、これまでのところ、日曜を休日とする現行法を支持している一方、国営郵便局の元トップを登用して現行法の問題点を調べさせ、11月末までに提言を出すよう求めている。
中道右派の野党・国民運動連合(UMP)のパリ市長候補、ナタリー・コシウスコモリゼ氏は、現行法は世界で最も多くの人が訪れる都市パリに大きな損失をもたらしていると批判した。(中略)
日曜に買い物をするというパリ在住のエリザベス・アルマーニ(Elisabeth Armani)さんは「人に働く権利を与えないなんて、国として恥ずかしい。失業問題もあるのに」と語った。(中略)
■政治的立場を超えて日曜解禁に反対の声も
中国から米国まで、日曜営業や24時間営業は多くの国でかなり一般的だ。欧州諸国でもスペインやポルトガル、イタリアではユーロ圏金融危機の余波で規制を緩和した。
しかしフランスでは毎週日曜、または日曜に時々働く人は労働者の約30%だ。法律では、日曜労働は労働者本人の意思によるものでなければならず、また日曜に働いた場合の賃金は通常の50%増しにすることが定められている。
近代フランス文化における日曜の位置付けに関する歴史書の著作があるロベール・ベック氏によれば、カトリック色の濃いフランスのこの法律の由来は、1898~1906年に各地の大都市で続いた大規模な労働者デモにある。
この時期のデモの結果できた法律が、日曜を義務休業日と定めた。当時も「教会と労働組合は反対し、企業家は賛成していた」という。
フランスの多くの家庭は今でも、日曜日に家族そろって昼食を取ることをとても大切にしている。「カトリック・エコノミスト協会(AEC)」のジャンイブ・ノーデ会長は、規制を緩和すれば仕事が増える方向にはなるだろうが、経済成長における日曜の買い物の効果を定量化するのは難しいと述べ、個人的な考えだとした上で、子どもやバランスの取れた家族生活の方が重要で、日曜営業解禁には反対だと語った。
ノーデ氏と同じように日曜営業解禁に反対する政治家たちもいる。中道政党・民主運動のフランソワ・バイル議長は「商売が最優先にされない日が週に1度は必要だというのは、進んだ文明の考え方でもある」と言う。
政党連合・左翼党のリーダー、ジャンリュック・メランション 氏も「少なくとも週に1日は家族と一緒に過ごせるということは非常に重要だ」と述べている。【10月12日 AFP】
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日本では、コンビニなど24時間営業・365日無休の店舗の増大、正月のスーパー・大規模店舗の営業などは一般化しているように、利便性を求める声がますます強まっています。
当然、フランスでもそうした声はあります。
また、労働者の権利と言っても、安定した職・賃金を得ている者と、生活に困窮している者・職を求めている者では立場が異なります。
労働組合の主張が、一部労働者の既得権益保護になりがちなことはフランスも同様でしょう。
ただ、「商売が最優先にされない日が週に1度は必要だというのは、進んだ文明の考え方でもある」「少なくとも週に1日は家族と一緒に過ごせるということは非常に重要だ」というのも理解はできます。
多くの規制緩和の問題同様、メリット・デメリット双方がある話で、悩ましいところです。
****仏国民の7割、日曜日の商店営業を希望****
フランス人の7割が商店の日曜営業を望んでいる。
調査機関Ifopが無料紙メトロの委託で実施した世論調査で明らかになった。
フランスでは1906年に制定された法律により、個人営業の食料品店など一部の小規模事業者や観光地区を除く大半の小売店は日曜営業が禁止されている。
今回の調査では、全体の69%が商店の日曜営業に賛成と回答。72%は、そのための法改正を望むとしている。
また特別手当付きで日曜勤務を打診された場合、71%が「勤務する意思がある」と答えた。
この割合は2007年と比べると12ポイント、2008年と比べると4ポイント上昇している。
Ifopはこれについて、「債務危機による経済情勢の悪化のほか、失業率の悪化や購買力の低下により、日曜労働に対する国民の意識が変化している」と分析する。
フランスでは先週、ホームセンターチェーン「ルロワ・メルラン」と「カストラマ」に対し、日曜営業を禁止する判決が下された。違反した場合は1店舗につき1日当たり12万ユーロの罰金が科されるが、2社はこれに反発し、パリと近郊の14店舗の日曜営業を強行している。
レゼコーの委託で世論調査機関CSAが実施した別の世論調査によると、国民の8割が「政府はルロワ・メルランとカストラマに日曜営業を許可すべき」と答えている。【10月7日 NNA.EU】
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【街の本屋さんは文化遺産】
フランスにおける規制の話題がもう1件。
フランス議会の下院は10月3日、アマゾンを中心としたネット書店業者に対し、書籍を割引販売して、無料配達するというサービスを禁止する法案を全会一致で可決しています。
****米アマゾンに打撃、仏で無料配送禁止の新法 ****
フランス国民議会は、オンライン書店による顧客への無料配送を禁止する法案を可決した。市場支配力を高めるインターネット小売り最大手の米アマゾン・ドット・コムから、経営不振にあえぐフランス国内の書店を守ることが狙いだ。
この措置を提案したフィリペティ仏文化・通信相は3日、アマゾンは書籍価格を規制するフランスの法律の抜け穴をかいくぐって、無料配送を提供していると主張。「ダンピング(不当廉売)戦略」の疑いがあるとして同社を非難した。
同氏は国民議会において、「彼らがひとたび支配的な地位に就き、フランスの書店網を一掃すれば、配送料を引き上げる可能性が高い」と指摘した。
この新法は上院の承認を待つ段階。市場支配力の不当行使により、現地での優位性を増すとされる米ネット企業に対して、フランスが取った最新の措置となる。
■超党派で新法を支持
オランド大統領率いる社会党は、オンラインサービスを規制するよう欧州連合(EU)に働きかけている。さらに米グーグルや米フェイスブック、アマゾンなどのネット企業に対し、彼らの顧客がいる国々で課税することに国際的合意を得ようとしている。
米国の商品や企業の脅威からフランスの文化的資産を保護しようと、議会では超党派で取り組む。全主要政党が新法を支持しており、書籍の単一固定価格から5%までの値引きを認めた1981年の法律に追加される見通しだ。
一方で、アマゾンは新法を批判する。書籍価格を引き上げる措置は仏消費者の購買力に打撃を与え、インターネットで買い物をする消費者への冷遇になると述べている。
同社は「最も深刻な影響は、消費者に提供するサービスや品ぞろえ、そしてネットに事業を依存する小規模出版社に及ぶ」と指摘する。【10月4日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 日経より】
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個人的には普段アマゾンをよく利用しており、その結果、本屋さんに足を運ぶことはほとんどなくなりました。
無料配送もさることながら、商品の選択範囲が既存の本屋さんとは比べものになりません。
また、サイトの口コミ情報などで、本の内容が推測できるのも助かります。
****仏議会がアマゾン狙い撃ち 「割引&無料宅配」を禁じた“真の理由”****
・・・・フランスでは1981年施行の「ラング法」によって、書籍に関しては、活字文化や街の本屋さんを守る意味などから、商品供給元が販売店に対し、販売価格を指定して、それを守らせるという「再販制度」を認めるとともに、販売時の割引率も最大5%に制限しています。
ところがフランスの議会報告書によると、国内の全書籍の売り上げに占めるネット通販の割合は、2003年は3・2%だったのに、2011年には13・1%、昨年は17%と年々急増。その一方、全書籍の売り上げは昨年、対前年比で4・5%もダウンしていました。
この数字から明らかなように、街の本屋さんの売り上げがネット書店によってどんどん圧迫されているのです。しかしそれも当然でしょう。ネット書店は定価の5%引き販売は当たり前。それに加えて送料まで無料なのですから、そちらに流れる消費者を止めるのは極めて困難です。
ちなみにフランスの人口は約6500万人ですが、現在、街の本屋さんは2000店~2500店。人口約6200万人のイギリスが1000店であることを考えると、人口比で見れば他国に比べてまだまだ多い方だといいます。
(後略)
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“米国の商品や企業の脅威からフランスの文化的資産を保護しよう”ということのようですが、消費者が便利で良質なサービスを求める動きを法的に規制しようというのは無理があるように思えます。
【不人気のオランド大統領 勢いが増す国民戦線】
フランスの政治面では、オランド大統領の不人気が目につきます。
****オランド仏大統領の支持率、過去最低に****
フランスのフランソワ・オランド大統領を支持する人の割合が、4人に1人未満に低下し、過去最低を記録したことが分かった。
統計調査会社イプソスが仏誌ルポワン向けに今月行った調査によると、オランド氏の支持率はわずか24%で、同社が1996年に仏大統領支持率の月例調査を開始して以来、最低となった。
オランド政権ではこのところ、少数民族ロマ人への対応をめぐる政権内部での意見分裂や、誤った失業率の発表といった失態の露呈が相次いでいた。
一方、ロマ人を「国境の外へ戻すべき」と発言して各メディアをにぎわせたマニュエル・バルス内相は、仏政治家の中で最高の56%の支持率を獲得した。
右寄りで一貫する有権者らを見据えた立場を取っていることが、人気上昇の大きな要因になっているとみられ、バルス氏を将来の大統領候補とする呼び声も徐々に高まっている。【10月15日 AFP】
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フランスで“右寄り”と言えば、極右政党国民戦線を率いるマリーヌ・ル・ペン氏がいます。
先の大統領選挙では18%の得票率を獲得して存在感を示しましたが、その勢いは衰えておらず、社会党や国民運動連合を超える数字も出ているようです。
****仏地方補選で極右勝利****
フランス南西部ブリニョールで13日、地方議会補選の決選投票が行われ、即日開票の結果、極右・国民戦線(FN)候補が得票率53.9%で勝利を決めた。
事実上の小選挙区制で行われた選挙での勝利は、FN支持の広がりを改めて印象づけた。
補選決選投票は、FN候補と国政最大野党の右派・国民運動連合(UMP)候補との間で争われた。6日の第1回投票で敗退した左派陣営は、決選投票でUMP候補への投票を支持者に呼び掛けたが、FN候補が8ポイント近い大差をつけた。
FNのルペン党首は2012年の大統領選で、極右候補としては過去最高となる18%の得票率で3位に入った。
また、今月発売の週刊誌に掲載された世論調査では、14年5月に予定される欧州議会選の投票先として24%がFNを挙げ、UMPや国政与党の社会党を抑えて首位となっている。【10月14日 フランス ニュースダイジェスト】
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