孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国との関係  日本の場合、台湾の場合

2014-08-03 22:54:21 | 東アジア

(台湾前途 自己決定・・・・6月末、中国の台湾担当閣僚級高官として初めて訪台した中国国務院台湾事務弁公室の張志軍主任は、敢えて政治的話題は避け、住民との交流など親しみやすさをアピールする演出を行いましたが、車にペンキを投げつけられるなどの抗議行動によって日程変更を迫られるなど、根強い反中感情の洗礼も受けました。 “flickr”より By 葉 信菉 https://www.flickr.com/photos/122494993@N04/14525663883/in/photolist-o8zPNK-o6NM18-o8zQwZ-o4LkAC-o6vkQZ-eRV9qa-fui6dq-fu3LpF-eRVaxD-eRV6Jk-ohDnGv-nZuSpf-nSpXMM-nK3ZEu-o7LMAo-nNokVo-oatF8Z-o9gypG-o8SubH-nPjcz7-nPj9Am)

東南アジア諸国でも強い中国への配慮
歴史認識や沖縄県・尖閣諸島などの問題で日中間の関係が、首脳会談もままならない険悪な状況が続いているのは今さら言うまでもないところで、中国の影響力拡大を阻止するのが最近の日本外交の基本姿勢ともなっています。

その主戦場ともなるのが東南アジア・南シナ海ですが、パラセル(西沙)諸島近海で中国と対峙したベトナムへ巡視船に転用できる中古船6隻を供与するなどで、中国を牽制しています。

****防衛協力、中国を牽制 日本、ベトナムに巡視船****
岸田文雄外相は1日、ベトナム・ハノイでファム・ビン・ミン外相と会談し、巡視船に転用できる中古船6隻を供与すると表明した。

南シナ海を巡って中国と対立するベトナムの海上防衛を支援し、中国を牽制(けんせい)する狙いだ。安倍政権は「積極的平和主義」のもと、東南アジア諸国との防衛協力を加速させる。

岸田氏は会談で「法の支配が海洋の平和と安定に不可欠」と強調。ミン氏も「情勢を複雑化させる行動は慎むべきだ」と応じ、暗に中国を批判した。

中国は5月、100隻以上の船団を引き連れてパラセル(西沙)諸島近海で石油掘削に着手したが、ベトナムは約30隻の老朽化した公船での対応を迫られた。

船数でも装備でも中国との差を見せつけられ、船舶の増強が喫緊の課題となっていた。新造船では時間がかかるため、中古船を日本に要望していた。

日本の途上国援助(ODA)は軍事目的には使えないため、ベトナムは海上警察を軍から切り分ける組織改編を済ませた。日本側は早ければ年内にも引き渡す意向だ。

安倍政権は現在、外国の軍隊も直接支援できるようにODA大綱の見直し議論を進めている。【8月2日 朝日】
*******************

ODAについては、災害救助など非軍事分野なら、これまで禁じていた外国軍への支援が出来るようにして、外国軍に対するより広範な援助ができるようにする方向での見直し作業が進んでいます。

ただ、中国と激しく対立したベトナムを含めて、東南アジア諸国は経済的に中国と強い関係があり、日本の思惑どおりに事が進むものでもないようです。

****対中国、日本と温度差****
・・・・もっとも、東南アジアが対中国で日本と一枚岩になれているわけではない。

ベトナムは6月、日本の陸上自衛隊も参加している南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に、初めて軍事連絡要員2人を送った。
日本は現地宿営地での受け入れなどの支援を申し出ていたが、実現しなかった。
理由は不明だが、関係者の間では「自衛隊との緊密化を嫌う中国への配慮があったのでは」との見方が強い。

シンガポールで5月末から開かれたアジア安全保障会議でも、安倍首相がスピーチで名指しを避けながらも中国を強く批判したのに対し、ベトナムのフン・クアン・タイン国防相は中国批判を抑えた。
小野寺五典防衛相との会談では、経済依存を理由に中国に強い態度をとれない窮状を示唆する場面もあった。

中国に勤務経験のある元ベトナム外交官は「国民感情は現在『反中国』が支配的だが、政治的には『共産党同士』の深いつながりがある。ベトナムは簡単に中国を切れない」と指摘する。

PKO活動で自衛隊から支援を受けているカンボジアだが、中国の影はより濃い。岸田文雄外相は6月末、カンボジアを訪れてホー・ナムホン副首相兼外相と会談し、副首相はその場で積極的平和主義について支持を表明したが、後日「『集団的自衛権』や『自衛隊』という言葉は使っていない」との異例の声明を出した。

「国際法に則して地域紛争の解決を目指す考えに賛同しただけで、集団的自衛権の行使容認を支持したわけではない」という趣旨だ。

多額の投資や支援を受けている中国に配慮し、「日本寄り」と受け止められる報道を打ち消す必要があったとみられている。【8月2日 朝日】
*********************

南米での“オセロゲーム”】
一方、“遠交近攻”という訳でもないでしょうが、日中から遠く離れた南米でも両国の“オセロゲーム”が繰り広げられています。

****首相歴訪 日中“オセロゲーム” 米の裏庭・中南米で「味方」争奪戦****
中南米の伝統的な親日国を歴訪中の安倍晋三首相は、経済協力を深めて成長市場を取り込み、各国との連携を通じて中南米地域や国際社会での日本の影響力拡大も狙う。

ただ、中南米では中国も進出に積極的だ。米国の「裏庭」で繰り広げる日中の勢力争いは“オセロゲーム”のように激しさを増している。

「アジアを含む一部の国では、力や抑圧による一方的な現状変更の試みがある。法の支配の考え方を国際社会に浸透させたい」
首相は7月28日の日カリブ共同体(カリコム)首脳会合で、中国の海洋進出を念頭にくぎを刺した。

首相は最後の訪問国のブラジルをはじめ各国で、中国が東シナ海や南シナ海で「力」によって問題を引き起こしていることを念頭に、国際法の順守や「積極的平和主義」を打ち出す日本への賛同を求めた。

同時に、国連安全保障理事会改革への支持固めにも奔走、国際社会での日本への協力を狙った。

「日本の対中南米政策は、歴史的な友好協力関係に基づく独自の絆を共にしている」
首相は31日の日チリ首脳会談でこうも訴えた。

歴史的な結び付きを強調し、日本の最先端技術を基に積極的に日本の売り込みを展開。同行筋は「首相の外遊全てが中国を意識しているわけではないが、対中という意味で今回の歴訪の手応えは十分だ」と話す。

ただ、首相に先んじて中南米を歴訪したのは中国の習近平国家主席だ。習主席は7月に大型インフラ投資などの巨額の経済支援を手土産にブラジル、ベネズエラなどを歴訪。

新興5カ国によるBRICS首脳会合では「いかなる勢力も侵略の歴史を覆そうとすることを許してはならない」とわざわざ歴史問題を持ち出し、日本を牽制した。

すでに中国と中南米諸国との貿易総額は昨年、日本の約3・6倍まで拡大。外務省幹部は「中南米で中国は着実に浸透と台頭を図っている」と警戒する。

中国が着々と自陣を固める中、日本は伝統的な親日国以外の国を味方に取り込むための「次の一手」も必要になる。【8月2日 産経】
*********************

“すでに中国と中南米諸国との貿易総額は昨年、日本の約3・6倍まで拡大”・・・・中国政治・経済を揺るがすような変動が起きない限りは、この差はますます拡大するでしょう。

すでにピークをうった感がある日本が、人口13億を抱え伸びしろがまだ大きい中国と力まかせの“オセロゲーム”を続けても難しいものがあるように思えます。

現時点ではともかくも、将来的には中国の力を利用するような方向への発想の転換も必要なのではないでしょうか。

【「一つの中国」のもと、政治的立場が微妙な台湾
中国と国家承認をめぐる“オセロゲーム”を展開してきた台湾ですが、台湾を国家と承認している国は現在22か国のみに減少しており、その勝敗は明らかです。中国がその気になればもっと減るのでしょうが。

両国の影響力を考えれば当然の結果でもあり、日本も台湾を切って中国を選択した国のひとつです。

台湾の国家的地位というのは微妙なところがあり、日本でも最近問題となりました。

****台湾総統夫人、故宮展ポスターめぐり延期の来日を確定****
東京国立博物館で開催中の台北・故宮博物院(National Palace Museum)展のポスターをめぐって延期されていた台湾の馬英九総統夫人の周美青氏の来日が確定した。故宮博物院が28日、明らかにした。

周氏は当初、先月末に開幕した台北・故宮博物院展の開幕式に出席する予定だった。
だが開幕まで1週間を切った時点で、同展のポスターやチケットに記載された故宮博物院の表記に「国立」の文字が入っていなかったことを問題視した博物院側が同展の中止をほのめかし、周氏の来日延期が発表された。

東京国立博物館側がポスターなどに「国立」の文字を入れなおしたことで問題は開催直前に回避されていた。(中略)

1949年の中華人民共和国成立によって大陸から分断した台湾を国家と承認している国は22か国のみで、その呼称や政治的立場は、台湾にとって微妙な問題となっている。【7月29日 AFP】
*********************

その台湾も近年は中国との経済関係強化によって台湾経済を牽引しようという流れになっており、不倶戴天の敵同士として対峙していた頃からすれば隔世の感があります。

中国は今も「一つの中国」の立場から最終的には台湾を政治的にも吸収することを目指しており、昨今の経済関係強化はその手段にすぎません。

ただ、あまり台湾を刺激するのも得策でないので、ジワジワと・・・というところでしょう。
もっとも、ときに本音が噴出したりもします。

****台湾記載のページは破り捨てろ!」 欧州の学会で中国代表、冊子の台湾団体の紹介欄に難癖****
欧州で今月下旬に開かれた中国研究の学会で、中国政府高官が冊子に掲載された台湾の協賛団体の紹介ページを破るよう要求し、実際に破棄されていたことが28日、分かった。

台湾の有力紙、自由時報が同日付で報じた。中国側が海外での学術交流にまで政治問題を持ち込んだ形で、中台関係にも影を落としそうだ。

問題となったのは、ポルトガルの大学2カ所を会場に22~26日に開催された欧州中国学会の2年に1度の総会。同学会には欧州の中国研究者を中心に約700人が登録している。

自由時報によると、23日の開会式で、中国政府傘下の「孔子学院」トップ、許琳氏が、冊子に台湾の元総統の名を冠した「蒋経国国際学術交流基金会」の紹介文があることを問題視。

自身も協賛団体であることを理由に、該当ページを破らなければ配布を認めないと訴えた。このため、冊子はページを破って配布されたという。同学会憲章は「いかなる政治活動にも関与しない」と定めている。(後略)【7月28日 msn産経】
*****************

【“現状維持”とは言うものの・・・
一方の台湾は、中国を呑み込むことはもはやできませんが、“独立”を声高に唱えて中国を刺激するのも怖い・・・というところで、中国の思惑を警戒しつつも経済関係は続ける“現状維持”を願っています。

****中台閣僚級会談を6割が評価 台湾世論調査****
台湾で対中政策を主管する行政院大陸委員会は17日、中国の主管官庁トップ(閣僚級)の6月末の初訪台後、初めての世論調査結果を発表、約6割が中台の主管官庁トップの会談を評価した。

一方、86.7%が中台の「現状維持」を希望。台湾側が会談で「台湾の未来は台湾の2300万人が決める」と述べたことに対しては、88.6%が支持した。【7月17日 産経】
*****************

党綱領に“独立”を掲げる野党・民主進歩党も、“独立”論議は棚上げしてします。

****台湾最大野党が党大会 「独立」で対立深まる****
台湾の最大野党、民主進歩党は20日、台北市内で党大会を開いた。大会では、党員から「独立」を掲げる党綱領を一部凍結する案と、2016年の次期総統選候補者に「独立」行程表の策定を求める案がそれぞれ提出された。

両案は「討論する時間がない」(蔡英文主席)として議決されず、中央執行委員会に付託されたが、中国との距離感をめぐり党内の路線対立が深まりつつあることを印象付けた。

独立綱領の「凍結」は、1月に発表した対中政策の見直し過程でも議論になった。
12年の総統選で候補者だった蔡氏は、財界などから対中政策を不安視され敗北した経緯がある。

このため、5月末に発足した蔡氏の執行部が、中国との交流強化を目指す上で、独立綱領の「凍結」にどう向き合うかが注目されていた。

だが蔡氏は、「台湾はすでに民主独立国家」だとして「独立」を事実上棚上げした1999年の「台湾前途決議文」が「党内と台湾の総意だ」と強調。

その一方で、19日には「独立は若い世代にとって『天然成分』であり、凍結できない」とも指摘した。

蔡氏がバランスに苦慮するのは、政治大選挙研究センターが9日に発表した世論調査で、独立支持が23.8%と92年の調査開始以降で最高となるなど、強固な支持基盤である独立派の発言力を無視できないためだ。

11月末の統一地方選を前に、党の結束の乱れが表面化するのを避けたい思惑もありそうだ。【7月21日 産経】
*******************

大きな引力を有する中国のそばで“現状維持”というのは、極めて微妙なかじ取りが要求されます。
中国との関係で苦慮するのは日本と同じではありますが、「一つの中国」をどうするのか・・・台湾は、日本よりはるかに難しい国家の存立にかかわる問題を抱えています。

日本が中国との間で抱える課題は難しいとは言っても、台湾に比べたら政治的決断でなんとかできる範囲の問題でしょう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする