孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国・雲南省地震  「泥水ラーメン」報道に対する市民反応 殺到するボランティア

2014-08-07 22:58:50 | 中国

(写真はhttp://news.ifeng.com/a/20140804/41436870_0.shtmlより
写真説明には「地下水や水道水は地震のため濁っており、限られたきれいな水は負傷者に優先的に使用し、解放軍・消防士など救援隊は濁った水で麺をゆで、ご飯を炊いている」とあります。)

死者589人
3日に中国・雲南省を襲った地震の犠牲者は昨日の段階で589人と報じられていますが、おそらくまだ増加するものと思われます。
全壊・半壊した家屋は8万棟を超えているとも言われています。

****雲南省の地震、死者589人に 土砂ダム、19カ所確認****
中国雲南省の昭通市魯甸(ルーティエン)県で3日に発生したマグニチュード(M)6・5の地震は6日も救出作業が続き、国営新華社通信によると死者は589人、負傷者は2401人に増えた。

また、土砂崩れにより河川がせき止められた土砂ダムが19カ所で確認された。

中国メディアは5日、救援隊の話として、60人前後が土砂に埋まったままの村があると伝えた。5日時点で村人約70人のうち10人しか生存が確認されていないといい、死者が今後さらに増える可能性がある。

最大の土砂ダムができた牛欄江では、5日夜の時点でダム湖内に約5千万立方メートルの水がたまり、さらに水位が上昇。下流の住民840人が避難している。

地震の規模からみて死者が比較的多かった理由として、新華社通信は中国地震局の分析を紹介。
①現地は貧困県に指定されており、土壁やれんが、木材による古い民家は耐震性が低かった
②人口密度が、同省平均の2倍の1平方キロあたり256人と高かった
③震源の深さが約12キロで比較的浅かった、の3点を挙げている。【8月6日 朝日】
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中国の地震被害としては、2008年の四川大地震が思いだれますが、その教訓が十分に生かされたとは言い難いようです。

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中国紙によると、雲南省政府は2008年の四川大地震後に、約100億元(約1600億円)をかけて地震が多い地域で耐震工事を施した。

だが、複数の被災者は「耐震化をしろと地元政府も口では言うが、補助金などもらったことはない。貧しい地域では自力でできない」と訴える。【8月6日 毎日】
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【「泥水ラーメン」・・・頭に問題があるのではないか
そうした本筋の話とは別に、非常に興味深く読んだ記事がありました。

****中国で驚きの声・・・雲南地震で「泥水で麺ゆでて食べる救援隊****
中国では、雲南省昭通市魯甸県付で3日に発生した地震で、現場入りした救助/救援隊が、泥水で麺(めん)をゆでて食べている写真が発表され、全国的に議論になった。中国新聞社などが報じた。

インターネットに掲載された写真では、制服を来た軍人とみられる男性数人が、カップ麺に湯気の出る泥水を入れたりしている。現地では水源施設が破壊され泥水しか手に入らず、けが人の傷口を洗浄するのも困難な状態になったという。

救援指揮部関係者は、「地震発生後、救援隊を極めて迅速に現地入りさせることができたが、考えが至らなかった面があった。浄水器が足りなかった」、「一部の救援隊員が泥水を簡単に濾(こ)しただけで、後は沸かして使用している」と、救援隊員の衛生に問題が発生していることを認めた。

被災地は山間部が多く、道路が寸断されたために車両が通行できない個所も多い。そのため、必要な物資は空から投下しているが、けが人の手当てのためにも浄水装置がとりわけ必要という。

救援指揮部関係者は、救援隊員について、迅速な現地入りは極めて困難だったとして「体力も大いに消耗しているので、泥水を飲んで発病する可能性も高い。彼ら自身の健康も損ねてしまうし、その後の救援活動にも影響するだろう」と心配した。

それ以外に、被災現場に真っ先に到着した救助隊が携行していた医薬品が、すぐになくなってしまうという問題も発生したという。

これまで、ボランティアとして地震被災地の救援活動に参加したという女性は、救援隊に対する補給が軽視される場合があると指摘。「2日間にわたり、何口か水をすすって、わずかなパンを食べるだけでした」と述べた。

同女性は、救援者に対して衛生状態は確保せねばならないと主張。彼女が属するボランティア組織は、救援活動に際しては必要な量の水を持参することにした。清潔な水の確保は「最低限の条件」だからだ。

一方、2008年に発生した四川大地震で救助作業に加わった消防士という男性は「救助作業の際は、きわめて切羽詰まった状況だ。泥水でも直接飲まねばならないこともある」と説明。救援隊は浄水装置を持参すべきとの考え方に対しては「そんな余裕はない」と主張した。

簡易投稿サイトの微博(ウェイボー、中国版ツイッター)では、「(救援対策側の)頭に問題があるのではないか」、「中国の軍人の命は本当に安い」、「後方勤務にも時間がかかる」、「自殺式救援」、「これが戦争だったらどうなる? 戦いを進められるのか?」など、さまざまな書き込みが寄せられた。

被災地では5日昼ごろには、住民を含めて即席麺、ミネラルウオーター、パンなどの配布が始まり、食料や水の問題は基本的に解決されたという。一部では軍部隊が「炊き出し所」を設け、米飯や粥、炒め料理の供給も始めた。【8月6日 Searchina】
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“中国で驚きの声・・・雲南地震で「泥水で麺ゆでて食べる救援隊」”という見出しを見て、極めて困難な状況で使命を果たす救援隊に感動する中国国民・・・そういった類の記事かと思いました。
「雷峰に学べ」的な革命精神鼓舞(そんなものが残っていればの話ですが)の記事かとも。
(最初に報じられたニュース自体は、そうしたプロパガンダ的なもののようですが)

しかし、記事を読んでみるとそうではないようです。
一言で言えば「必要な水や浄水装置も持たずに救助に入ってどうするの?泥水でゆでるなんて自殺行為じゃないか 段取り悪過ぎ」という批判的な意見が多く寄せられているという話のようです。

救助活動が直面している状況・切迫度はケース・バイ・ケースでしょうから、「泥水で麺ゆでて食べる救援隊」については一概にとやかく言えないところですが、少なくとも「雷峰に学べ」的な無批判的賛美に比べれば、今回ネットに寄せられた多くの意見は極めてノーマルな反応でしょう。

日中関係は難しい状況にあり、とかく両国の反日・反中的言動が多く報じられ、相互理解も難しいようにも思えてくるのですが、上記のようなごくノーマルな反応、ごく普通の感覚があれば、話が通じるものも多々あるのでは・・・と思った次第です。

環球網「ウソだ、信じるな」・・・その後謝罪
なお、この「泥水で麺ゆでて食べる救援隊」報道については、「こんなことあるはずない。ニセ情報だ!」とする人民日報系のメディアである環球時報が謝罪に追い込まれたという話もあるようです。

****雲南省地震 被災地の「泥水ラーメン」報道に、「ウソだ、信じるな」と報じた環球網 一転して事実を認め「謝罪」=中国メディア****
3日に中国雲南省で発生した地震の救援隊が、水不足のために泥水を沸かしてカップ麺を調理している様子を撮影した動画が中国国内で注目を集めた。

しかし、この映像をめぐって中国・人民日報系のメディアである環球時報が、自国の他メディアに対して謝罪を強いられる結果となった。事態の一部始終について、当事者でもある中国広播網が6日に報じた。

中国の動画サイト・騰訊視頻に4日、震源に近い中学校で救援部隊の救援スタッフと思しき人びとがカップラーメンを持って鍋を取り囲む様子を撮影した動画が公開された。

鍋には泥水が入っており、煮沸消毒したうえでラーメンの調理に用いるという。この光景は直ちに多くの国内メディアが報じた。

しかし、環球時報のウェブ版・環球網は5日「泥水ラーメンはウソ、情報を簡単に信じて前線の士気を傷つけるな」という環球時報記者の文章を掲載。

ある軍の救援部隊責任者が「そんなことは常識的ではない」と語ったことを理由に、「泥水ラーメン」の映像を「ニセのニュース」と断定するとともに、救援部隊責任者が「別のたくらみがある画像を簡単に信じて、救助部隊の士気をそがないでほしい」とコメントしたことまで伝えた。

これに対して、中国中央ラジオ局の記者が真っ向から反発。

同局の特別報道部は6日午前、中国版ツイッター・微博(ウェイボー)上で「調査をしていないものに発言権はない」という見出しを付したうえで、「局の記者が現場に居て、確かに見たこと。そうせざるを得ない状況だった」と発言。

同局の記者アカウントも「事実だ。自分も同僚もそれを食べた」とつぶやいた。

すると、同局が発言した約3時間後に、環球網の微博アカウントが「現地にいる記者や動画撮影者による報道は事実で、誤っていたのは私だ。一切を軽々しく否定してしまった」などとする、報道部副主任の謝罪発言を掲出。

現地で組織された民間の救援部隊が混濁した水道水に消毒薬を入れ、煮沸したうえで調理に使用していたことを認めた。

謝罪声明を受けた中国中央ラジオ局はその後「あなたの謝罪を見た。しかし、こんな報道をしてはいけない」というタイトルを付け、「われわれは無知の言論に対してねちねち言うつもりはない。しかし、デマの拡散が前線の物資供給状況に対する誤解を生んだ。虚偽報道は記者にとって大きな恥であり、すべてのメディアが守るべき最低ラインだ」と改めて環球網の報道を非難した。【8月7日 Searchina】
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虚偽報道云々は、日本でも慰安婦報道で問題になっているところではありますが、早い段階で誤りを認めることはよいことです。

それにしても、先述のように、救助活動が直面している状況・切迫度はケース・バイ・ケースですから、国営メディアであれば「こんな困難な状況で“泥水ラーメン”を食べて頑張っている。素晴らしいじゃないか!」という意見があっても不思議じゃないとも思いますが、そうではなかったところが面白く感じました。

道路をふさぐボランティア
雲南省地震に関する話題をもうひとつ。

****中国・雲南省地震、死者589人に ボランティア殺到で救援に支障も****
・・・・また中国政府は6日、救援物資を運ぶ車両やボランティアを乗せた車などで長い渋滞が発生し被災地へと続く道路をふさいでいるとして、人々に被災地には入らないよう広く呼び掛けた。

また周辺道路は地滑りによる土砂で所々寸断されており、救出活動に支障が出ている。【8月6日 AFP】
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災害が起きたときボランティアが殺到し、現場が混乱することもあるというのは日本でも同じです。

日中間では衝突や事件でとかく異質性だけが強調されがちですが、「泥水ラーメン」に対する市民反応に加え、社会的に見ても日本と共通する市民行動があるようで、そうしたことも相互理解の土壌となるのでは。

日本企業も早い対応
なお、ネット検索すると、今回の地震に対していち早く日本企業が義援金などを送っている情報がいくつも見られます。

政府間の関係が機能していない状況ですから、それだけに個々の企業が自分たちの努力でなんとか・・・というところでしょう。

****安倍首相は紹介せず=各国のお見舞い―中国国営テレビ****
中国国営中央テレビは5日午後7時(日本時間同8時)のニュースで、雲南省の地震被害に対し、お見舞いなどを表明した各国を伝えた。韓国やロシア、ベトナムなど12カ国の首脳らからのメッセージが読み上げられたが、安倍晋三首相は紹介されなかった。

安倍首相は4日、習近平国家主席と李克強首相にメッセージを送り、「心よりのお見舞いと哀悼の意」を表明。支援の用意があることも伝えている。【8月5日 時事】 
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「大国」を自称する国にしては、随分と大人げない対応です。
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