孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

パレスチナ  停戦期限は日本時間19日午前6時 すでに生活破綻状態のガザ住民を更に戦闘に巻き込むのか?

2014-08-18 23:06:24 | パレスチナ

(自宅があった場所でしょうか? 家族に犠牲者が出ているのでしょうか? “flickr”より By activestills https://www.flickr.com/photos/activestills/14727429070/in/photolist-orpVyS-orbcNx-oKGAjD-ottZRh-oKWuKW-oHWumL-oKWyqS-ottVH7-oHWwLq-ottLhf-ottF37-ottM7v-otu1x7-oKGEzc-oKWCKd-ottZCw-oKWtx5-ottQ9U-ottQMs-oKWvKS-oKYjQK-otueJ6-ottKMY-oHWDWh-oKWDgJ-otufPc-ottTg3-oKGFFF-oKGH6V-oKYwMa-otu4aG-oKWFb5-oKYmAP-oKGBfX-otHoXb-oJdCx3--otugWx-ottMJd-oKWyEE-oKYtaF-ottFiX-oKGAFa-oKYuca-orbetX-opWiS8-opW1ib-oEoyGG-oJVR6X-oMwJLk )

期限切れを控え先行きは不透明
パレスチナ・ガザ地区で続くハマスとイスラエルの戦いは、イスラエルが地上戦に突入にした7月17日から1か月以上が経過しました。

11日午前0時から始まった72時間の停戦は5日間延長されましたが、その期限も19日午前0時(日本時間同6時)に迫っています。

これまでのハマス及びイスラエルの住民の命を無視した対応については、7月30日ブログ“パレスチナ 住民を「人間の盾」として使うハマス、その「人間の盾」に構わず攻撃を続けるイスラエル”(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20140730)にも書いたとおりです。

停戦期間に行われている恒久的な停戦に向けての交渉については、ガザの経済封鎖解除を目指すハマスと、ガザの非武装化を目指すイスラエルの両者の間には深い溝が存在しており、先行きは不透明です。

****本格停戦へ交渉大詰め=期限切れ迫る―ガザ****
パレスチナ自治区ガザでの停戦は19日午前0時(日本時間同6時)、5日間の期限切れを迎える。ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスなどパレスチナ諸勢力とイスラエルは、本格停戦に向けた大詰めの交渉を進めるが、先行きは不透明だ。

双方は17日、カイロで交渉を再開。仲介国エジプトが提示した停戦案を軸に協議している。

イスラエルのネタニヤフ首相は17日の閣議で、「イスラエルの安全保障上の要求に応えられる場合に限り、停戦の枠組みを受け入れる」と指摘。

安全確保が合意の条件だとの姿勢を表明するとともに、ハマスによるロケット弾攻撃には、毅然(きぜん)として反撃すると強調した。【8月18日 時事】
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たたき台となっているエジプト提案は、穏健派ファタハがエジプト側検問所を管理する形でガザ封鎖を緩和するなどの短期目標と、ガザ非武装化などの長期目標の2段構えになっています。

****ガザ戦闘:停戦協議、2段階で エジプト提示 封鎖緩和を入り口に****
・・・・イスラエル紙イディオト・アハロノトによると、エジプトが双方に示した合意案は2段構えで、まず短期的目標を達成したうえで包括合意を目指す。

短期的には人と物の出入りを規制するイスラエルやエジプトの封鎖緩和が柱で、▽パレスチナ自治政府を主導する穏健派ファタハがエジプト側検問所を管理し、原則開放▽イスラエルとの境界の検問所規制や物流の緩和▽漁業区域の拡大−−などで合意を図る。

その後、ハマスの求めるガザの港湾や空港の再建・開放、イスラエルが要求するガザの非武装化などについて長期的な合意を目指す。
また、イスラエルが拘束するハマス服役囚の釈放と引き換えに、ハマスが確保するイスラエル兵の遺体の返還などについても話し合うという。

同紙によると、ハマスはイスラエルが長期的合意に大筋で賛同するのであれば短期的な合意から始めることも可能との考えを示しているという。イスラエル交渉団は週末にかけて閣僚会議などで協議する。【8月15日 毎日】
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イスラエルに周囲を囲まれたガザにとっては、エジプト側に開くラファの検問所が唯一敵対国イスラエルを経ずに外界と通じる道になります。物価もイスラエルに比べエジプト側が安く、ガザ住民はラファ検問所の解放を望んでいます。

これまではガザ封鎖と言いつつも、地下トンネルを利用した物資の移動が市民生活を支えてきましたが、今回の戦闘でイスラエルがこの地下トンネルの多くを破壊したため、今まで以上に検問所の規制緩和がガザ住民からは求められています。

“「トンネルがなくなり、我々は身動きがとれない。このまま死ねということなのか」(ガザ住民)”【8月15日 朝日】

漁業区域の拡大もガザ経済に大きな影響があります。

「海からのイスラエルへの侵入や、ガザへの武器流入を防ぐため」としてイスラエルが行っている海上規制により、現在ガザで可能な漁業区域は海岸から3カイリ(約5.5キロ)までに制約されており、ガザの基幹産業であった漁業は立ち行かない状況になっています。

“事実上の海上封鎖はガザの基幹産業である漁業に大きなダメージを与えている。封鎖前の漁師の平均月収は8万円前後だったが、最近は1万円余りにまで減少。00年に1万人いた漁師は3700人にまで減った。それでも漁具販売など関連業者は4万人いて、「漁業区域が拡大されれば失業率は改善される」(アハマドさん)との期待が大きい。”【8月17日 毎日】

ハマスにとっては、ライバルであるファタハに管理をゆだねる形であってもラファ検問所の開放され、漁業区域が拡大されれば、長期目標の港湾や空港の再建と併せて“闘いに勝った!”とアピールすることも可能でしょう。

ただ、ハマスが長期的にせよ武装解除を受け入れることは考えにくく、イスラエルにとっては何らかの保証が必要でしょう。また、短期目標のラファ検問所開放についても武器流入を防ぐような仕組みを求めるでしょう。

ほぼ全市民が食糧支援を必要としている状態
もし、交渉がまとまらなければ、再びガザ市民の頭上に爆弾が降ることになります。

すでにガザ住民は1980人に上る死者、1万人を超える負傷者を出し、また、これまでの戦闘でガザ住民の生活が非常に困難な状況に追い込まれていることは各メディアが報じるところです。

当然ながら、物価は高騰しています。
ただ、イスラエルから持ち込まれる果物などの値段は変わっていないとか。これを“良心的”と評すべきか・・・。

****物資不足のガザ地区、食料品など高騰****
イスラエルの空爆によって街のあちこちががれきと化したパレスチナ自治区ガザ地区で、主要な食料品の価格が高騰し始めており、すでに壊滅的なダメージを負っている同地区経済の状況がさらに悪化している。

先週末、ガザ市にあるシャティ難民キャンプ内の市場は多くの人でごった返していた。しかしその多くは経済的苦境に立たされており、全体的な消費活動は控えめだった。

イスラエルによるガザ地区への攻撃によって、地区内の農産物生産地域には大きな被害が出ており、これが価格高騰に大きな影響を与えている。

イスラエルが空爆を開始した7月8日以降、卵はこれまでの10シケル(約300円)から20シケル(約600円)に値上がった。また、地元産のピーマンやトウガラシ、タマネギ、トマト、ジャガイモなども大幅に値上がりしている。

価格の高騰は、空爆を恐れる生産者らが収穫・出荷作業に後ろ向きになっていることに加え、農産物を市内の市場へと運ぶ輸送業者らが、危険な地域の通行に慎重になっていることも関係しているようだ。

ただ、イスラエル側から持ち込まれる果物の値段は変わっていない。ある店主は、「これがイスラエルのやり方だ。われわれを攻撃しておいて、彼らの農産物を運び入れるために検問所を開ける」と苦々しげに語る。

■50か所の工場が爆撃により崩壊
ガザ地区商工会議所のマヒル・アルタバ所長によると、経済および産業関連施設や居住用の建物が破壊されたことにより生じた直接的な損害は、およそ30億ドル(約3000億円)に上るという。

しかし衝突によって、地域経済には「巨大で長期的な間接的損害」も生じていることを明らかにした。

イスラエル側から持ち込まれ、政府がその値段を管理する石油の値段も変わっていない。しかし、野菜や肉などの食料品や他のさまざまな品物の値段は著しく高騰しているため、住民らにとっては「大きな負担」になっている。

さらに同地区内では、大規模な戦略的工業施設50以上を含む産業施設350か所が破壊されており、今後は失業率の上昇も予想される。

同氏は、「衝突が終わった後の失業率はおよそ50%になるだろう。約20万人が職にあぶれることになる。以前の失業率は41%だった」と説明した。【8月11日 AFP】
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唯一の発電施設が攻撃で故障し、停電が続いていることもガザ住民を苦しめています。
ゴミ処理は停滞し、医療面でも支障をきたしています。

****<ガザ>ゴミ処理場稼働不能、あふれるゴミ…発電所爆撃で****
イスラエルとパレスチナ自治区ガザ地区を拠点とするイスラム原理主義組織ハマスによる戦闘で、ガザ唯一の発電所が爆撃され、市民生活に大きな影響を与えている。

発電所の完全修復には1年以上かかる見通しで、ゴミ処理場が稼働できずガザ市内にはゴミが散乱。異臭を放ち衛生状態の悪化に拍車をかけている。(中略)

配電停止により病院では医療機器の使用や消毒作業が困難になり、感染症の拡大などが懸念されている。電気を使ったポンプ配水の水道は使えなくなり上下水道の処理にも支障が出ている。

ガザ市中心部のゴミ集積所には行き場のないゴミ1万5000トンが猛烈な異臭を放っている。通常ここには600トン余りが一時保管され、東部にある処理場に随時搬出されている。だが配電の停止で処理場が稼働不能となったという。

ガザ市役所清掃部のアヒト・アルハトウ部長によると、ガザ市の人口は60万人余りだが戦闘の激しい北部や東部から約40万人が避難し現在100万人近くが居住する。

通常1日400トン前後だったゴミ排出量は700トンと倍近くにまで膨れ上がっている。

またゴミ搬送車も攻撃で一部破壊され、市はロバや馬200頭を1カ月400ドルで借り上げてゴミ収集に投入しているが、アルハトウ部長は「このままではガザ市内が廃棄物だらけになる」と危機感を強めている。【8月12日 毎日】
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より直接的には、食糧の確保が困難となっており、ほぼ全市民が食糧支援を必要としている状態になっています。

****ガザ:19日午前6時で停戦終了 飢える市民180万人****
イスラエルとの戦闘が長期化したパレスチナ自治区ガザ地区で、国連の食糧支援を受ける市民が増え続けている。

攻撃再開を懸念し今も避難所で暮らす人々に加え、知人らの家に身を寄せる市民も収入が途絶えるなどして生活の再建が困難になっている。

イスラエルとイスラム原理主義組織ハマスとの一時停戦は19日午前0時(日本時間同6時)に5日間の期限を迎えるが、交渉は難航している模様で、市民は不安を募らせている。

17日、ガザ市内にある国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の施設を訪ねると、市民ら数百人が食糧支援を求めて長い列をなしていた。配給用の小麦粉の袋には「日の丸」が描かれ、英語で「パレスチナ避難民への日本人からの無料配布」と記されている。

妻と7人の子供を養うタハ・サマラさん(52)は自宅が砲撃を受けて一部損壊し、親戚の家に身を寄せた。勤務先からの給与はすでに半年近く未払いで、さらに今回の戦闘で家財が破壊され出費がかさみ、食料は近所の店からツケで購入している。

「日本の支援にはとても感謝している。今日の配給で1週間は食料の心配をしなくてすむ」というが、「その後どうすればいいのか」と疲れ切った表情で語った。

ガザ地区では隣接するイスラエルとエジプトの封鎖政策を受け、失業率は4割を超える。UNRWAは世界食糧計画(WFP)と連携し人口約180万人の半数近い約83万人に食糧支援をしてきた。

今回の戦闘ではUNRWA運営の避難所で暮らす計25万人にも食糧を支給。1週間前からは、自宅が壊され親戚の家などに暮らす人々約35万人にも特別支援を始めた。

市民の8割近い140万人以上に支援を提供した計算になるが、約40万人がさらに援助を求めており、ほぼ全市民が食糧支援を必要としている状態だという。

ガザ市内で記者会見したUNRWAのクレヘンビュール総務長官は「(イスラエルとの)戦闘で避難を強いられた人は過去最多規模だ」と語り国際社会に緊急支援を求めた。【8月18日 毎日】
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更なる戦闘を選択するのか?】
こうしたガザ住民の困窮はあげればきりがないところですが、この上更に戦闘再開ということになれば理不尽としか言い様がありません。

束の間の穏やかな日々があっただけに、再開される戦闘は住民の心に大きな絶望感を与えるのかも。

これまではハマスにとって、犠牲者が増えれば、住民のイスラエル憎悪からハマスの求心力が強まり、国際的にもイスラエル批判が強まることで交渉に有利に働く・・という側面がありましたが、これ以上の犠牲を住民に強いることは、住民の支持が揺らぐことになりかねないのではないでしょうか。

また、殆ど実害の出ていないハマスからのロケット弾攻撃への報復として、圧倒的な軍事力でガザを空爆・砲撃するイスラエルに対する国際的批判は更に厳しいものとなるでしょう。

戦闘再開は両者にとっても賢明な選択とは思えませんが、どうでしょうか・・・日本時間19日午前6時がリミットです。
このブログがアップされて数時間後には何らかの結論(交渉延長を含め)がでているはずです。
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