孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ナイジェリア  依然続く「ボコ・ハラム」の襲撃・拉致  政府軍側の犯罪行為も

2014-08-17 22:38:44 | アフリカ

(下着1枚で横たわる男性にナイフを振り下ろす兵士 「ボコ・ハラム」容疑者の“処刑”でしょうか “flickr”より By Women Support https://www.flickr.com/photos/126545894@N07/14698404670/in/photolist-ooRwSJ-oF5oL4-oF5kHk-oFkXMZ-oF8kVm-ooRqxF-oFkT2M-oF8pFN-ooRryt-ooRqHa-oH6Ra4-ooRBaG-ooRaCb-ooRUi8-ooRkU2-oFkU1v-ooRdC9-ooRAcE-oF8qoj-ooRa69-ooRxpf-oF5jUM-oF8qNs-oH6M8X-oDj9oq-oF5kCF-ooRepu-ooRwBo-ooRfg9-ooRTDT-oF5jYp-oF8mAE-ooRUdD-ooRAUw-oFjfau-oH6LFV-ooR9ZN-oFkXjz-oH6Qte-ooRdVU-oF5qb8-oF8qAo-oFkTS4-ooRTF6-ooRUUP-ooRArs-oF8mH3-ooRpWF-ooRdNQ-oH6QU4)

これまで毎週約100人のペースでナイジェリア人(キリスト教徒とイスラム教徒)を殺害してきた
4月中旬に女子生徒200人以上を連れ去り、奴隷として売り飛ばす・・・・などのメッセージで世界中の非難を集めているナイジェリアのイスラム過激派「ボコ・ハラム」(“西洋の教育は罪”の意味)に関しては、7月15日ブログ“ナイジェリア 「ボコ・ハラム」よる女子生徒連れ去り事件から3か月 分断されるナイジェリア”(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20140715)でも取り上げたように、連れ去られた女子生徒の大部分は未だ行方が知れず、「ボコ・ハラム」による村落襲撃・殺害・連れ去りはその後も頻繁に発生しています。

****ボコ・ハラムが村襲撃 約100人誘拐 28人殺害****
イスラム武装勢力「ボコ・ハラム」が今週、ナイジェリア北東部ボルノ州の複数の村を襲撃し、少なくとも97人の男性と少年を誘拐し、28人を殺害した。

地元の指導者や住民が15日に明らかにした。情報筋によると、この襲撃でさらに25人が負傷し、多くの家が焼かれたという。

武装集団は、ボルノ州都マイドゥグリの北約177キロに位置するチャド湖畔のドロン・バガ村など、複数の村を襲った。

襲撃が行われたのは11日だが、以前のボコ・ハラムの攻撃で携帯電話の中継塔が破壊されるなど、通信手段がなかったため、発覚が遅れた。

ボコ・ハラムは2009年から武装集団として活動を開始し、これまで毎週約100人のペースでナイジェリア人(キリスト教徒とイスラム教徒)を殺害してきた。

4月にはボルノ州チボクの学校を襲撃し、推定276人の少女を誘拐。そのうち数十人が脱出に成功したが、依然200人以上が行方不明となっている。【8月16日 CNN】
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もちろん事件自体もありえないような凶行ですが、“97人の男性と少年を誘拐し、28人を殺害した”という事件が、“通信手段がなかったため、発覚が遅れた”ことで数日して明らかにされるというあたりに、日本や欧米の常識とは全く異なるナイジェリアの現実が窺えます。

大量に殺害されたり、連れ去られたり・・・といったことに関しても、日本や欧米の人間が感じるものとは別な認識・捉え方も現地にはあるのだろうか・・・とも。

もちろん、誰しも殺されたくないですし、拉致された女子生徒の家族の心痛・嘆き・解決しないことへの怒りは当然にあります。

“娘を拉致されたアハルナさん(43)は、親のうち「7人が(ショックを受け)その後亡くなった」と明かした。
”【7月24日 毎日】

“「爆弾で人を平気で殺す悪魔のような連中だ。イスラム教? とんでもない。イスラム教は殺人を許さない宗教だ。住民は誰も支持していない。」(イスラム教男性)”【7月26日 毎日】

カメルーンにも拡散
最近の「ボコ・ハラム」の勢力が拡大しているのか、あるいは政府軍の掃討作戦や住民側の抵抗などで追い詰められているのか・・・そのあたりは判然としませんが、前述のように事件は頻発しており、その活動範囲も隣国カメルーンに及んでいます。

****カメルーン:副首相の妻が拉致 ボコ・ハラムの犯行か****
アフリカ中部カメルーンで27日、副首相の自宅が武装集団に襲撃され、副首相の妻が拉致された。ロイター通信が伝えた。隣国ナイジェリアのイスラム過激派ボコ・ハラムの犯行が疑われている。

襲撃されたアマドゥ・アリ副首相の自宅は、ナイジェリア国境に近い北部コロファタにある。同日午前5時ごろ、約200人の武装集団により副首相と地元指導者の自宅がほぼ同時に襲われた。

ロイター通信によると、少なくとも3人が死亡した。副首相自身はラマダンを祝うため、自宅にいたが、逃れて無事だという。犯行声明は出されていない。

ボコ・ハラムはカメルーンにも勢力を拡大しており、最近ではカメルーン軍と交戦したこともある。襲撃後、カメルーンはナイジェリアとの国境付近に精鋭部隊を派遣、コロファタを奪還したという。

最近、ボコ・ハラムはカメルーン北部への襲撃を強めているが、カメルーンで捕らえられたボコ・ハラム戦闘員が10〜20年間の懲役刑を受けたこととの関連を指摘する見方もある。【7月28日 毎日】
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“カメルーンは、ボコ・ハラム掃討のためナイジェリアに派兵しており、その報復の可能性もある”【7月27日 読売】との指摘も。

「ボコ・ハラム」が活動範囲をカメルーンに広げていることについては、ナイジェリア政府の掃討作戦で次第にナイジェリア奥地に追いやられ、カメルーンに越境するようになった・・・という可能性もありえます。

【「国の利益は一部の金持ちに行くだけだ。政府への期待は何もない」】
経済格差が大きく、腐敗・汚職が蔓延する国が富んでも貧困者はなくならない・・・・「ボコ・ハラム」は当初、そうしたナイジェリアの現状への批判から活動が生まれたとはよく指摘されるところです。

****拉致されたサヘル:ナイジェリア北部報告/下 格差や汚職、過激化助長****
・・・・ナイジェリアはアフリカ一の産油国だが、これまでに約4000億ドル(約40兆円)が国庫に入らず消えたと指摘されるほど汚職は深刻だ。

一方で1日1ドル未満で暮らす貧困層は、約1億7000万人の人口の6割に達する。中でも貧しいのが北部だ。

2002年に結成されたボコ・ハラムは元々、汚職や格差を批判し、イスラム教を基に社会改革を目指す組織だったという。

北部カノのバエロ大のファッゲ教授(57)は、ボコ・ハラムのテロ激化について「政府にも一定の責任がある」と指摘する。

過激化し始めたボコ・ハラムに対し、治安部隊は09年、当時の最高指導者を逮捕。拘束中に逃亡を図ったとして殺害した。教授は、政府がボコ・ハラムとの間で「誠実な交渉」を持とうとしなかったことを一例に挙げた。

ナイジェリアでは00年代半ば、南部の油田地帯で反政府武装組織が勢力を拡大した時期があった。ヤラドゥア政権(当時)は、武装解除した者に恩赦を与える条件で交渉を進め、事態をほぼ収束させた。

ファッゲ教授は「すべての紛争は交渉でしか解決できない。『テロリストとは交渉しない』という西洋的な考え方ではなく強い指導力で交渉に臨むことも必要だ」と言う。

ファストフード店で普通のハンバーガーのセットメニューが約900円もする首都アブジャの富裕層地区。

そこから少し車を走らせると、ぬかるみだらけの市場に出た。そこで服を売るウマルさん(35)は、月に約3000円の稼ぎしかない。

「国の利益は一部の金持ちに行くだけだ。政府への期待は何もない」。その瞳に希望の輝きは見いだせなかった。【7月27日 毎日】
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「国の利益は一部の金持ちに行くだけだ。政府への期待は何もない」・・・こうした現状への不満が、過激な「ボコ・ハラム」の温床にもなっています。

交渉を拒否して掃討作戦を続ける政府軍の対応が「ボコ・ハラム」を過激化させたとの指摘もあります。

ただ、今の「ボコ・ハラム」が交渉に応じる余地があるのかわかりませんし、欧米諸国の「テロリストとは交渉しない」という姿勢や「ボコ・ハラム」への嫌悪感が、ナイジェリア政府に交渉を断念させている側面もあるでしょう。(もっとも、それほど政府側が「ボコ・ハラム」に強硬な姿勢をとっているにもかかわらず、事件が頻発し、現場での軍・警察の及び腰の対応などが伝えられるがなぜかはよくわかりません。)

政府軍側の「戦争犯罪」も
人命を尊重しないことに関しては、「ボコ・ハラム」だけでなく、政府軍にも同様な問題が指摘されています。
反政府派、政府軍の双方の暴力が住民に恐れられているというのは、コンゴなどの混乱地域でも見られることです。

****ナイジェリア>ボコ・ハラム疑い処刑 アムネスティが批判****
イスラム過激派ボコ・ハラムのテロ攻撃が活発化する西アフリカ・ナイジェリア情勢を巡り、国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル」(本部・ロンドン)は5日、ナイジェリア政府軍や政府系民兵組織が、ボコ・ハラム戦闘員と疑って拘束した者らを処刑するなどし、「戦争犯罪」に当たると批判した。

アムネスティは、ボコ・ハラムのテロ活動と当局による掃討作戦が激化する同国北東部でビデオ映像や証言などを集めた。

今年3月にボルノ州で撮影されたとされるビデオ映像の中には、政府軍とみられる制服姿の兵士らが、若者らを刃物で殺害する場面が映っていたという。

アムネスティは、ボコ・ハラムの攻撃と当局側の作戦により、今年だけですでに4000人以上が死亡したと推計している。(中略)

政府は同州を含む北東部3州に非常事態宣言を発令し、治安当局の掃討・鎮圧作戦も激化、当局側による人権侵害も指摘されてきた。【8月6日 毎日】
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洗脳して自爆犯へ?】
連れ去られた女子生徒などがどうなったのか・・・チャドなどの反政府勢力に売り飛ばされたのか、政府に拘束されている戦闘員との交換を狙っているのか・・・そのあたりはよくわかりませんが、一部には洗脳して自爆犯に仕立てあげているとの話もあるようです。

****ナイジェリアで拉致の女生徒、洗脳で自爆犯に****
ナイジェリア有力紙バンガードは3日、同国東北部を拠点とするイスラム過激派組織「ボコ・ハラム」が、これまでに拉致した女子生徒を自爆テロの要員としている可能性があると報じた。

ただ、同紙によると、ナイジェリア政府は、女子生徒が自爆テロに関わった事実はないと否定しているという。

同紙は「情報筋」の話として報道。ナイジェリア東北部ボルノ州チボックで4月に拉致された200人以上の女子生徒が洗脳され、テロ行為に関わっている可能性を指摘した。

ロイター通信によると、ナイジェリアでは北部カノの大学で7月30日、6人が死亡した自爆テロなど1週間に起きた4件の実行犯が女だった。

隣のカツィナ州では同日、胸部に爆発物を巻いた女児(10)が保護され、一緒にいた男女が逮捕されている。【8月3日 読売】
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珍しく解放された例も
なんとも暗澹たる気分になる話ばかりですが、冒頭で報じられている“ボルノ州の複数の村を襲撃し、少なくとも97人の男性と少年を誘拐し、28人を殺害した”という事件に関しては、珍しく拉致された者が解放されたとのことです。
たまには、こういうこともあるようです。

****チャド軍、ボコ・ハラム拉致の85人救出****
ナイジェリアなどに拠点を築くイスラム過激派「ボコ・ハラム」が先週、同国北部ボルノ州で2カ所の村落を襲い、若者の男性と少年、複数の女性計97人を拉致した事件で、チャド軍部隊が17日までに、男性ら85人の救出に成功した。(中略)

ナイジェリアの治安当局筋によると、チャドの治安当局が同村で拉致されたとみられる85人を乗せたバスの車列をチャド湖のチャド側での通常の監視行動で見付け、走行を阻止。車列はボコ・ハラムの武装兵6人に率いられ、バスの乗客の多さで不審を抱いたという。

ナイジェリアの国家人権委員会の当局者によると、乗客は男性63人に女性22人だった。

拉致の残り被害者30人以上はモーターボートに乗せられていた。チャド軍兵士が車列を調べ始めた際、ボコ・ハラムは逃げ去ったという。(後略)【8月17日 CNN】
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