孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ウクライナ  ロシアの「国民に隠された戦争」 犠牲者も増大 国民も泥沼化を懸念

2014-08-30 22:55:23 | ロシア

(8月24日 ドネツク ウクライナ政府軍捕虜に“敗戦パレード”を強いる親ロシア派女性兵士 戦いは人間の理性を失わせます “flickr”より By John https://www.flickr.com/photos/25437334@N02/14854945260/in/photolist-oCFtFS-oFmvN7-oXzC3a-oCF7br-oXzCV2-oXmWXz-oVLwYc-oCM3WC-oXFVZ1-oFebcY-oFDKwo-oFDKsL-oDNttX-oDNNEy-oWgEPq-oDNNeJ-oFmhjc-oDuLNJ-oXRaKc-oCCjPh-oV5NjJ-oEMpzP-oEjMQe-oU52jU-oEPDsq-oBNyMz-oY6CYx-oW4JGJ-oXQ85a-oFAktk-oW4pxm-oY6gqH-oFABj9-oY6bng-oFAFNP-oFANs1-oY6edr-oFAvBr-oW4spJ-oY6iCD-oW6ZrE-oE7xgk-oXb3D3-oBgi42-oUDiaw-oFomiu-oY8QuV-oFCYMV-cS9YAG-oAKfT8)

【「ロシアは最も強力な核保有国の1つ」】
ウクライナへのロシアの事実上の介入行動で事態が緊迫しています。

ロシア・プーチン大統領は「ロシアは最も強力な核保有国の1つ」と、核兵器を誇示する形で欧米側を牽制するような発言も行っています。

****プーチン氏、核能力誇り軍事対決の断念を促す 欧米けん制か****
ロシアのプーチン大統領は29日、同国は大規模な紛争を望まず、自ら攻め入る意図も持たないとしながらも、核抑止力と軍事力の効率化と近代化を進めていると述べた。

同国のタス通信によると、若者との会合で表明した。「ロシアは最も強力な核保有国の1つ。これは現実だ」ともし、「ロシアに対する侵略行為を撃退する準備を常時進めなければならない。(敵性国家は)軍事衝突でロシアに立ち向かわない方が良いことに気付くべきだ」と強調した。

これら挑戦的な調子の発言は、ウクライナ東部情勢へのロシアの介入に反発を強める欧米諸国のけん制を狙ったものともみられる。

同大統領はまた、ロシア大統領府を通じた声明で、親ロシア派武装勢力は東部で一般住民を危険にさらし犠牲者も出していたウクライナ軍の作戦を阻止したと主張し、親ロシア派への支持を公然と打ち出した。

ウクライナ東部情勢に関しては、英政府筋が29日、CNNの取材にロシア軍要員4000~5000人がウクライナに入ったことを明らかにした。

これら要員は部隊として編成され、東部のルガンスク、ドネツク両州で戦闘に参加しているとし、軍事侵攻を拡大していると指摘。さらに、国境周辺に兵士約2万人が集結し、増員の可能性もあるとした。

4000~5000人との数字は、米政府当局者が先に明らかにしていた約1000人から大幅な増加となっている。

英政府筋は、これら要員の主要任務は親ロシア派武装勢力の支援などで、ウクライナ政府への圧力を維持することと推測。

ただ、ウクライナとの国境付近からロシアが併合したクリミア半島へ達する地上の回廊構築を目指す野心的な意図も否定出来ないと分析した。

ロシアによるウクライナへの軍事介入については、北大西洋条約機構(NATO)が先に同国内に侵入したとするロシア軍部隊の衛星写真を証拠として公表していた。

これに対し、ロシアのラブロフ外相はコンピューターゲームから借りた画像と切り捨て、侵入の事実を否定していた。

米ホワイトハウスのアーネスト報道官は、ロシア大統領府の発言が何であれロシア軍部隊がウクライナに侵入し、同国軍の拠点を攻撃したのは事実と主張している。【8月30日 CNN】
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昨日ブログでも触れたように、けんか腰になっている者を相手に話を穏便におさめるのは至難の業です。

こうした挑発的ともとれるような強気の姿勢は、次第に抜き差しならない、後戻りできないところに自分を追い込むおそれがあり、非常に危険でもあります。

****ロシアは介入停止を=ゴルバチョフ氏****
ノーベル平和賞受賞者のゴルバチョフ元ソ連大統領は30日、ウクライナ東部へのロシアの軍事介入は「全世界に飛び火する恐れがある」として、介入をやめるようプーチン政権に強く求めた。ロシアのラジオ局に語った。

ゴルバチョフ氏は、故ライサ夫人がウクライナ系。ロシア人とウクライナ人は「一つの民族だ」と述べ、直ちに殺し合いをやめるため手を尽くさねばならないと訴えた。

その上で「国家間の紛争となり、規模が拡大し、総動員となれば、欧州を舞台としたおぞましい激戦に突入する恐れがある」と警告した。【8月30日 時事】 
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今さらゴルバチョフ元ソ連大統領が何を言おうが、政治的な影響は全くありませんが、彼が懸念しているところは至極もっともな不安です。

【「国民に隠された戦争」で増加する犠牲者
強気なプーチン大統領ですが、その一方で、公にされない「国民に隠された戦争」でロシア側の兵士の犠牲も膨らんでおり、ロシア国内でも問題となる可能性があります。

****露越境 内外から“証拠” 「隠された戦争」アフガン想起*****
ウクライナ東部の戦闘にロシア軍の正規部隊が投入されている可能性が高まり、4月からの紛争は新たな段階に入った。

プーチン露政権は軍の投入はおろか親露派への武器供与すら否定してきたため、国際的な信用失墜は決定的だ。

戦闘で多数のロシア軍兵士が死亡しているとの情報も出ており、「国民に隠された戦争」が将来的に国内の反発を招くことも考えられる。

露有力紙の独立新聞は29日、大統領付属人権委員会に兵士の親族から問い合わせが殺到しており、消息を絶った者は数百人にのぼると報じた。

同委員会メンバーによれば、消息不明者の多くが露南部ロストフ州での演習に参加することになっていたという。

同委員会は著名な人権活動家らで構成され、プーチン政権とは複雑な関係にある。

兵士や親族の聞き取り調査を行った同委員会メンバーは、2008年のグルジア紛争と同様の手法で兵士が投入されている可能性を指摘。

当時、兵士らは国境付近の演習に参加する旨を口頭で伝えられ、身元を示す書類などは全て取り上げられていたという。

ロイター通信も28日、同委員会メンバーの話として、ウクライナ東部ドネツク州で弾薬を運搬していたロシア軍部隊が攻撃を受け、100人以上が死亡、約300人が負傷したと報じた。

ウクライナの親露派組織幹部も先に、ロシア軍兵士らは「休暇」を取得してウクライナ政府軍との戦闘に加わっていることを明らかにしていた。

ロシアではウクライナ政権や米欧を批判する「愛国ムード」が高まっており、プーチン政権が親露派を見捨てれば弱腰批判にさらされる。

ここにきて親露派への武器供与だけでは戦況を好転させられなくなり、ひそかな形で部隊を派遣したとの見方が出ている。

3月のクリミア併合に先立ち、プーチン大統領は「現地に軍は送っていない」と強調しながら、後に派兵の事実を認めた。

ウクライナ東部へのロシア軍投入が確実になった場合、プーチン政権に対する国際的反発が強まるのは必至だ。

影響力のある主要テレビ局は政権の統制下にあり、プーチン大統領の支持率は8割超の水準にある。国内で政権批判が急速に広がる可能性は高くない。

ただ、自国兵士を秘密裏に戦場へ送り込む手法は、旧ソ連による1979年のアフガニスタン侵攻を想起させるとも指摘され始めている。【8月30日 産経】
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「国民に隠された戦争」の犠牲者を公にするような行為は、当局によって圧力がかかります。

****ロシア兵士母は「スパイ」=ウクライナでの戦死告発****
ロシア法務省は29日、ウクライナ東部でロシア兵多数が戦死した疑惑を告発した人権団体「ロシア兵士の母の会」サンクトペテルブルク支部を「外国エージェント(スパイ)」として登録した。インタファクス通信が伝えた。

軍事介入の一端を暴かれたプーチン政権の圧力との見方が強い。

外国エージェント登録制度は、反プーチン政権デモを主導したNGOつぶしのため、欧米などから資金援助を受ける団体の活動を規制するためにつくられた。

母の会サンクトペテルブルク支部長で大統領人権諮問委員でもあるポリャコワ氏は「侮辱に等しい」と猛反発し、今回の登録に不服を申し立てる方針だ。【8月30日 時事】 
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国民の間でも厭戦気分?】
当局側のプロパガンダ・情報操作もあって、ロシア国民はウクライナ紛争で愛国心を鼓舞されている・・・と一般的には報じられていますが、国民一般の間でも、ながびくウクライナの紛争には厭戦気分が強まっているという世論調査もあります。

今後、犠牲者が増えるような事態となると、紛争への国民支持は更に低下することも考えられます。
今のところは、紛争への支持低下にかかわらず、プーチン支持率は非常な高止まりのようです。

****ロシア:ウクライナえん戦 軍事紛争「支持しない」43%****
ウクライナ東部で政府軍と親ロシア派武装勢力の戦闘が長期化するなか、ロシア国内で「えん戦機運」が広がっている。

ロシアの独立系世論調査機関レバダセンターが29日発表した調査によると、ロシアとウクライナの軍事紛争が始まった場合、政府を「支持する」のは41%で、ウクライナ南部クリミアを強行編入した3月時点の74%から激減。「支持しない」は3月の13%から43%と3倍以上に増え、初めて支持を上回った。

ロシアがクリミアをほぼ「無血」で軍事制圧したのと異なり、ウクライナ東部は戦闘で多数の犠牲者が発生し、80万人以上とされるウクライナ難民がロシアに流入している。

ロシア軍のウクライナ侵入で両国の本格的な軍事衝突に発展する可能性が指摘されるなか、ロシア国民の間で戦闘の泥沼化への懸念が強まっているようだ。

またウクライナ東部のドネツク州、ルガンスク州のロシア編入を支持する人は、4月の35%から21%に落ち込んだ。

一方、プーチン大統領の最新支持率は84%で、前回(8月上旬)の87%より若干下がったが、依然として高い数字を維持している。【8月30日 毎日】
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上記世論調査がどれだけロシア国民一般の意向をあらわしているのかわかりませんので、軽々にはものは言えませんが、もしこのような厭戦気分がロシア国内に広まれば、プーチン大統領の威勢を和らげる一番の薬になりそうです。

自身の高支持率を傷つけない形でウクライナ東部からの名誉ある撤退が可能なら、国内世論を無視してまで、民間航空機を撃墜するようないかがわしい集団にこれ以上つきあって国際批判を浴びる必要もないと、プーチン大統領も考えるのではないでしょうか。
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